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 前回までで紹介した森毅氏の受験数学勉強法は、基礎が出来ていないと難しいと思います。解答の筋道を分析するといっても、例えば数列、三角関数等の公式、微分積分の計算法などの知識が身についていなければ分析しようがないからです。
 
 その「基礎」という点については、森氏は
 
「基礎というのは、ごく僅かの、本当に基礎的なことが、そのかわり、本当によく理解できている、それだけでよい」と述べています。教科書みたいにぶあついもの全部でなくてもよい。あちらことらにアナボコがあったって、なんとかヤリクリするのが、技術というものだ」(『数学受験術指南』p80)
 
と、ずいぶん乱暴なことを述べています。
 
 この「なんとかヤリクリする」というのが、森氏の真骨頂なわけですが、受験生にとっては不安に感じることと思います。
 
 ただ、どれだけ完璧に勉強しても、入試本番では何が出るかわからないわけですし、また人生も常に「想定外」のことが起こるものなのですから、「なんとかヤリクリする」力をつけておいて方が良いのは確かでしょう。
 
 『数学受験術指南』には「受験数学以前」という章あります。受験数学に取り組む以前の勉強をどうするか、ということなのですが、ここではコツコツ型というか、優等生的な勉強法は述べられていません。秀才向きの勉強法ではないといえます。
 
この章を読んでいくと、
 
「目先のこと(※学校の定期試験や成績のこと)は気にするな」
「時間のことは気にするな」
「公式を覚えるな」
「授業がわからんでもメゲルな」
「ムダが大事だ」
 
 などといった小見出しがありあます。 
 
 かなりカゲキな内容ですが、本文を読めばなるほどと思うところが多いです。
 
 幼い頃から、コツコツ積み上げて勉強することに慣れた方には、ついていけないと思うかもしれません。大多数の受験生は、入試対策にならない、と切り捨てることもあるかと思います。
 
 ただ、今まで見たことのない、解き方が判らない問題を、「なんとかヤリクリして解く」、という森氏の主張は、単に受験勉強にとどまらないものだと筆者は思うのです。受験勉強を越えて、人生を生きるのに必要な勉強法が、森氏の説く勉強法なのだといえるでしょう。
 
 現在の混迷の時代に、『数学受験術指南』で述べられている勉強法は、現在の混迷きわまる時代にこそ、真価を発揮するのかもしれません。

 
次回は和田秀樹氏の数学勉強法について述べていきます。

開​設日​: ​20​11​/9​/2​6(​月)​

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