——仕事をしない管理職というのは、日本企業に限った話ではないのですね。しかし困ったことに、彼らは一般の社員に比べれば、かなりの高給をもらっています。
グレーバー それが皮肉なのです。実際には何もしていない人のほうが、具体的に役立つことをしている人よりも、はるかに給料がいい。仕事が社会に貢献している割合と、もらっている報酬が、逆相関になっているのです。たとえば、コンサルタントの仕事です。以前には、そもそもコンサルタントという仕事はありませんでした。また、かつては人事部には1人の社員しかいない場合も多かった。
いま、会計士の多さは異常なレベルです。現在イギリスには会計士が36万人ほどいますが、これは計算すると、全労働者の92人に1人が会計士だということです。大学施設、教育機関、健康管理部門も、昔は少数の人しかいなかったのが、非常に大きな規模になっています。
——しかし、仕事をしている当人は、その人なりにやりがいをもって働いているのではないのでしょうか。
グレーバー 自らの仕事が必要ないことを彼らがどれだけ意識しているかについて、私はとても関心がありました。とはいえ、自分のエッセイに対する読者からの反応はあまり期待しておらず、まぁ何だか面白いことがわかったし、楽しんでくれる人も少しはいるだろう、くらいの気持ちで発表したのです。
ところが、これがすごい反響を呼びました。発表してから2週間で、確か13カ国語に翻訳されました。世界中の人が私のエッセイについてブログを書いたり、新聞に投稿したりして、物議を醸しました。