ストックホルム時間の12月10日夕刻(日本時間11日未明)、吉野彰・旭化成名誉フェロー(71歳)のノーベル化学賞授賞式が行われる。周知のように吉野さんの受賞理由は、スマートフォンなどに不可欠なリチウムイオン電池の開発だ。
だがいま、リチウムイオン電池が入ったスマートフォンを利用したデジタル通貨を、世界に先駆けて導入しようとしている国がある。それは中国だ。
デジタル通貨と言えば、今年6月18日にフェイスブックが、仮想通貨「リブラ」(Libra)を流通させると発表したことが、世界中で話題を呼んだ。フェイスブックは10月15日、リブラを管理運営していく21社・団体を発表した。
だが、その翌週の10月23日、フェイスブックのザッカーバーグCEOは、アメリカ連邦議会下院金融サービス委員会の公聴会に、出頭を命じられた。そして、6時間以上にわたって質問攻めに遭ったあげく、リブラの事実上の計画延期を余儀なくされてしまったのである。
その時、仮想通貨に反対する議員たちを前に、ザッカーバーグCEOが悔しさを滲ませた様子で言い放った言葉が印象的だった。
「中国は、今後数ヵ月で、われわれと同様の考えを立ち上げるために、急速に動いている。われわれは座視しているだけではダメだ。現在まで、アメリカがイノベーションなくしてリーダーであり続けることはできなかったからだ。
リブラは、主にドルに裏付けられている。私はこのことが、アメリカの金融リーダーとしての地位を拡張し、世界の民主的な価値につながると信じている。アメリカがいまイノベーションを起こさなければ、もはやアメリカの金融リーダーとしての地位は保証されなくなる」
このように、ザッカーバーグCEOは、もしもリブラを早期に導入できなければ、デジタル金融覇権を中国に奪われてしまうと、切々と訴えたのだった。
このザッカーバーグCEOの「予言」が的中するのかは不明だが、中国が早急に、デジタル通貨を導入しようとしていることは間違いない。