新学習指導要領の小学校での本格実施など、2020年も教育分野の改革が目白押しだ。19年は、萩生田光一文部科学相の英語の民間試験を巡る「身の丈に合わせて頑張って」発言に端を発し、英語の民間試験導入が白紙に戻るなど大学入試の扱いで揺れた。
日本の教育政策が迷走する中、OECD(経済協力開発機構)は12月3日、世界79カ国・地域の15歳約60万人を対象に実施したPISA(学習到達度調査)の最新の結果を公表。日本は「読解力」が15位で、前回15年調査の8位から後退し、「数学的応用力」も6位と前回の5位から後退した。世界トップレベルを維持しているとはいえ、学力低下がデータとしてあらわになっている。
PISAの成人版、PIAAC(ピアック)の最新の11~12年に実施した調査が示す結果も同様だ。順位だけを見れば世界1位に位置するが、読解力で27.7%、数的思考力も36.3%がそれぞれ「習熟度レベル2以下」。グラフから数値を読み取ったり、立体図を見て分解した平面図を想像できなかったりする恐れがある。
「%」って何でしたっけ?
日本人の数的思考力に関しては、20年にさらに危機的状況に陥る可能性がある。そう訴えるのは桜美林大学教授の芳沢光雄氏(数学・数学教育)だ。19年4月に『%が分からない大学生』(光文社新書)を出版。大学や中高の多くの教員と接する芳沢氏が、実際に学生らから「%って何でしたっけ?」と問いかけられる事例を聞く機会が増えたことに、危機感を示したものだ。
まずは、次の問題を見てほしい。
A:水97gに、食塩3.0gを溶かしました。
B:水100gに、食塩3.0gを溶かしました。
食塩水の質量パーセント濃度が低いものを、A、Bの中から1つ選びなさい。
この問題は中学3年生を対象にした18年度の理科の「全国学力テスト」で出題された。正解はB。正答率は76.9%だった。
「4人に3人が正解しているのだからまあまあ」などと解釈してはいけない。この問題は「濃度」の概念さえ理解していれば、たとえ公式「質量パーセント濃度(%)=溶質の質量(g)÷[溶質の質量(g)+溶媒の質量(g)]×100」を覚えていなくても、直感的に解答できる問いだからだ。
芳沢氏は「%の導き方だけでなく、%の概念自体を根本的に理解していない生徒や学生が年々増えている」と話す。例えば今の大学生に「2億円は50億円の何%か(正解は4%)」を尋ねると、状況次第では2割が答えられないという。50(億円)を2(億円)で割っただけ、「25%」という答えも多い。
コメント28件
LIonKingdom
Scientist
理屈を理解していない大学生は確かに多いのではなかろうか?
そもそも学問というのは基本的なこと(易しいこと)から積み上げて段々と高度なことを理解できるようにすることではなかろうか?
このことを意識して学ぶ姿勢がない限り,そのときどきの「やり方
」だけを暗記してこなすだけになってしまい,ものごとの繋がりに気づけない....続きを読む速さと量をこなすことで試験を通過することは可能なので,本当の実力を測ることはできない.(速さと量をこなすことは一つの能力ではあろうが,少なくとも研究開発の主役ではあり得ない.)文科省は大学を締め付ける前に,初等教育の方法と内容について改革を急ぐべきでは?
やれやれ
実は今年の春に久米宏ラジオなんですけどと言うラジオ番組の中で件の先生のお話があり、聞いていてにわかには信じられませんでした。流石にそこまで馬鹿はいないだろうと。甘かったです。これがゆとり教育の成果なかと。%とか割合とか数学的なのにアナログ的
な思考でざっくり分かる、直感で分かる感じもありますよね。旧人類だからなのか...例えば野球の打率とか防御率の意味を理解していれば想像もできそうなものですが、違うんですかね?10打席で3本ヒット打ったら3割、30%。少ないと思うか多いと思うか人それぞれですが、何となく3割以上なら期待感が膨らみ、2割だと駄目かもとか思いがちです。日常でそのような想像をする事が少なくなったのでしょうかね?...続きを読む炭酸
そもそも教師が思考することを辞めているのが問題ですね。
もしくは思考する余裕がないのか。
正しい答えでも教科書通りじゃないとダメだとか、理不尽を平気で押し付ける。
教師にしても、裁判官にしても、思考を停止させ、額面通り、先例通りのことし
かできないならば、この職業こそAIに替えでもいいでしょうって話ですね。...続きを読むdasu
題名のつけ方に意地の悪さを感じました。こういった類の記事は以前から見ることがあり、今に始まったことではないのに『ついに登場~~』という言い方も、あえて「大学生」と限定させるところも、好きではありません。
メルマガの題名にも、この記事題名を使
っているので、目をひきたかったのかもしませんが。
...続きを読む文中にある成人版PIAAC(16~65歳の約15万7千人が対象)調査については、10/25の『日本人の3分の1は日本語が読めない!?』という記事でも触れられていました。
以下その記事の抜粋です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本人の現役世代の27.7%は「日本語読解力の習熟度がレベル2以下」で、
例えば「図書館で目録を指示通りに検索し、指定された書名の著者を検索できない可能性」が高い。
数的思考力でも36.3%が「習熟度レベル2以下」で、例えば「立体図を見ながら、
その立体を分解すればどんな平面図になるか想像できない恐れ」がある。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー抜粋終
年齢に関係なく、出来る人は出来るし、出来ない人は出来ない。%についても同様なのではと思います。
芳沢光雄氏の本については、教授という立場や経験上「大学生」に特化しているように思いますし、その教授も「%について聞かれることが”増えた”」とは言っても、「ついに登場~」とは言っていませんよね。
ただ今の若い世代の人を悪く言いたい(確りとしたデータや根拠はないけど)という記事に感じてしまい、残念です。
みかみつ
今までは大学に行けなかった層が進学しているという事もあるでしょう
子供に「昔は受験戦争という言葉もあったよ」というと、信じられない!という反応でした
国公立大学等、条件を同じにして比較すれば、それほど差はないのでは?
コメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
日経ビジネス電子版の会員登録