マンガは日本が誇る文化です。
しかし課題も多く存在します。例えば、マンガの文化を海外に輸出するための「翻訳」にかかるコストが非常に高く、1冊あたり20~30万円のコストがかかっていました。
他にも海賊版が出回るなどの課題のひとつといえるでしょう。
これらの課題を、今回紹介するプロダクト「Mantra」は解決します。
MantraはAIを使って、翻訳作業を自動化し、マンガ翻訳にかかるコストを60~70%カット。これによって多くのマンガがリアルタイムに海外展開できるようになれば
、海賊版の撲滅にもつなげられるのです。
いったいMantraとはどんなサービスなのでしょうか。Mantraの開発者である石渡祥之佑氏に話を聞いてきました。
マンガ翻訳をAIで自動化!「Mantra」
――Mantraについて教えてください。
石渡氏:私たちは2つのサービスを提供する予定です。
1つ目はマンガの翻訳技術を提供するサービスです。私たちは、マンガに特化した独自の自動翻訳技術を持っています。
この技術をベースに、将来的にはマンガを多言語配信するサービスも提供していく予定です。私たちの技術を使って日本のマンガを翻訳し、安価で即時的な海外展開をサポートすることを目指します。
――マンガに特化した独自の自動翻訳技術とは、具体的にどういったものですか?
石渡氏:Mantraは従来人手で行われていたマンガの翻訳作業を自動化しています。
人手でマンガを翻訳する場合、まずセリフの書き起こしをします。次に、吹き出しのテキスト部分の塗りつぶし、翻訳。最後に翻訳後のテキストを適切に写植する必要がありました。これらの作業を自動化するために、まず、吹き出し部分からテキスト領域をAIが認識します。マンガの文字認識は、ビジネス分野の文字認識と比べて非常に難易度が高く苦戦しました。
なぜなら、線で書かれた絵と文字が入り乱れて複雑に配置されているからです。他にも、セリフごとにフォントが違ったり、文字が変形したりしています。
これらに対応して文字認識をするために、私たちはマンガの文字認識に特化したOCRエンジンを開発しました。これを使えば、吹き出しの中の文章をかなり正確に検出・認識することができます。ノイズの多い画像からでも文字を認識できるんです。

左:元の日本語のマンガ 右:AIによって翻訳されたマンガ。かなりの精度だが、右下の吹き出し「海だ」の部分などの翻訳漏れも見られる ©︎Ken Akamatsu, Manga109のデータセットを利用
――マンガの複雑な線画の中から文字だけを抽出できる技術は非常に先進的ですね!
石渡氏:そして、その文字を認識したら翻訳していきます。翻訳の作業は文字認識よりもさらに難しい。
というのも、言いよどみがあったり、文章が途中で切れてしまったりするなどのマンガ特有の表現に対応しなければいけないんですよね。
そのため、現在はマンガ特有の表現を翻訳できるエンジンの研究開発を進めているところです。
――完全なマンガ翻訳エンジンを開発するまでには時間がかかりそうですね…。
石渡氏:はい。だからこそ、まずは人手の翻訳コストを少しでも下げていこうと思っています。
現在、自動翻訳したマンガを人手で修正したいという需要があります。この需要に応えるために、翻訳者やチェッカーの作業をサポートするツールを開発中です。
機械翻訳と人手翻訳を組み合わせることで、翻訳の作業コストを大幅に削減でき、作業時間も短縮できます。