ドロップ2ヴォイシングの作り方と応用と練習方法

 

Drop2 Voicingはジャズの定番のヴォイシング方法で、まず覚えておきたいコードの弾き方です。

ヴォイシングの作り方から練習方法等のエクササイズ、実際のヴォイスリーディング例やメロディーのハーモナイズの方法等を順を追って説明していきます。

 

 

Drop2 Voicingとは?

 

Drop2 Voicingは4way close voicingの上から2番目の音を1Octove下げたVoicingです。2番目の音を下げるからDrop2と言う事になっています。つまりクローズボイシングをオープンにするヴォイシングのテクニックがDrop2と言います。

 

Drop2の何が良いのか?

 

ジャズのハーモニーの世界を表現するのにDrop2は非常に優れています。

  • 弾きやすくて、音のレンジが適当である
  • 様々なエクステンションを入れやすく変化させやすい
  • 代理和音に置き換えた時にサウンドさせやすい
  • メロディーをハーモナイズしやすい
  • ロジックを知る事で自分でコードフォームを生成出来る

 

等がDrop2の利点かなと思います。つまりシンプルでいて拡張性と汎用性に優れていると言う事ですね。

 

Drop2 Voicingの作り方

 

まず元となるVoicingを見て見ましょう。

4way Close Voicingと言ってボトムからトップまでが1octove内で構成されたコードです。そしてVoicingはひとつではなく、ひとつづつ音が繰り上がって行き全部で4つ存在します。この繰り上がって行く事を転回と言います。転回の事はInversionと言います。略してinv。

 

 

これが4way close voicingですね。ボトムの音がひとつづつ繰り上がって(転回されて)4つのVoicingが出来ました。

それでは上から2番目の音を1Octove下げます。

 

 

こうなりました。これがDrop2 Voicingですね。ひとつづつ詳しく見て行きましょう。

 

実際のポジション例

 

ここからは実際のポジション例です。

 

Cmaj7

 

これがCmaj7で弾けるDrop2 Voicingの形ですね。基本的には4種類あって、その4種類を6弦、5弦、4弦ルートがあります。

 

 

C7

 

C7です。これも6弦、5弦、4弦ルートがあります。

 

 

C-7

 

C-7です。これも6弦、5弦、4弦ルートがあります。

 

 

C-7b5

 

C7です。これも6弦、5弦、4弦ルートがあります。

 

 

Cdim7

 

Cdim77です。これも6弦、5弦、4弦ルートがあります。

 

 

Drop2 voicing

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初めてこういったVoicingを弾く方はまずコードのルートから始まらないフォームがこんなにあるのかと思うかもしれません。そして最低音がコードのルートではないので何のコード押さえてるのか良く分からないとかもあるかも。そこは「俺は3度ボトムのCmaj7を弾いているんだ」と思ってください。最低音がEでもGでも転回形を弾いてたらCmaj7です。

Drop2 Voicingはジャズギターでは代表的なそして、必須とも言えるヴォイシングです。是非覚えてみてください。

 

Voice Readingとは?

 

Drop2 Voicingに限りませんが和音の連結を上手くやる為にVoice Readingと言うモノを知る必要があります。

例えばDm7-G7-Cmaj7と言う進行だけでも1つのコードに対して4つのインバージョンがありますから4x4x4の64通りもの組み合わせがあります。全部が音楽的にスムーズと言う訳ではありません、そこでVoice Readingが必要になります。

Voice Readingとは和音と和音をスムーズに連結する事

を言います。まさにジャズギターの枠を超えて音楽の醍醐味と言っても良い位の要素で、Voice Readingは非常に重要です。

音と音とを繋ぐと言うのは、それそのものが音楽と言っても過言ではないものなので、そこにはセンスも経験もその人の音楽感が総て出てしまう位のものです。

 

ヴォイスリーディングエクササイズ

 

まず手始めにDrop2 VoicingでDaiatonic Chordを使ったVoice Readingをやってみましょう。

Voide Readingのルールは

  • 一番近い音に連結する
  • コモントーン(共通音)があればキープする

と言う二点です。

勿論実際の演奏では自分がかっこいいと思った所に音を紡いでいけば良いですが、これは練習なので声部の変化が少ないVoicingを見つける。コモントーン(共通音)が多いVoicingを見つける。と言う様な能力を鍛える練習です。そうして滑らかに音を繋げられる様になると実際の演奏にも役に経ちますよ。

 

Drop2 Daiatonic Voice Reading

 


 

Drop2 Diatonic voice reading

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クリックに合わせて弾けると良いです。推奨テンポ50位。速く弾く必要は無いので各弦の音量バランス、音色、音の長さ、タッチ等ケアして弾くと尚良いです。

こういったシンプルなものを美しく弾くのは逆に難しく、良い感じで弾ける人はとてもギターが上手いと思いますよ。

 

Drop2 4th Cycle Voice Reading

 

4th Cycleと言うのは4度進行です。5度圏を逆時計回りに回る感じ。そしてMaj7だけでVoicingしています。

では見て行きましょう。

 

 

Drop2 4th Cycle Voice Reading

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なんかかっこいいサウンドですね。他のメジャーなコードクオリティも同様にやると良いです。

練習のバリエーションとしては

  • Maj7
  • 7th
  • -7th
  • -7b5
  • dim7

と言うメジャーなコードクオリティはやってみるのがオススメ!

 

Drop2 Diatonic 4th Cycle Voice Reading

 

Diatonic 4th Cycleと言うのはDaiatonic Chordの中で4度進行と言う事です。つまりCmaj7 Fmaj7 Bm7b5 Em7 A7・・・と言う様な進行になります。

4th Cycleは3rdか7thのBottomのInversionで始める形と、Root,5thでスタートする形で出てくるVoicingが異なります。とても美しいサウンドで、整合性の高さが素晴らしい。

このワークアウトに関してはMick GoodrickのAlmanacと言う本で紹介されています。

まずやってみましょう。

 



これは3度ボトムの1st invからスタートした形です。4度進行なのでボトムが3度、7度の順で現れますね。

 



こちらはRoot invスタートです。出てくるボトムはルート、5度の順ですね。

Drop2 Diatonic 4th cycle voice reading

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両方とも美しいですねー。こういったエクササイズを弾いてる時に気に入ったVoicingとか、Voice Readingとか見つけたら覚えておくと今後自分がVoice Readingしていく時にとても良いです。

 

Drop2 Diatonic 2nd Cycle Voice Reading

 

これは2nd Cycleです。

コードは2度づつ上がって行っていますが一番近い音を選んでVoice Readingしていくと下がって行きます。

ではやってみましょう

 


2ns Cycleは上記の1周するだけで全てのInversionが出てきますね。

Drop2 Diatonic 2nd cycle voice reading

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Drop2 Diatonic 6th Cycle Voice Reading

 

こちらは6th Cycleです。これも整合性が非常に高く美しいですね。

ではやってみましょう

 


1音づつ変わって行くだけなのに、次のコードのインバージョンになっていると言う、音楽の機能美ここにありてきな美しさですね。

 

Drop2 Diatonic 6th cycle voice reading

(PDFで欲しい方はこちら)

 

Drop2は単体で弾いても余り良い響きだと思えないVoicingもあると思います。しかしこうやって良く出来たヴォイスリーディングの中に入ってると凄く良いサウンドになったりします。

逆に余り好きな響きで無いからと練習しとかないと、インプロヴァイズしていて流れ上そのVoicingが明らかに最適って瞬間があったりして、弾けなくて悶絶したりもしますね。

と言う事で万遍なくやっておくと、思わぬ所で良い感じで弾けたりするのでオススメです。

 

Two Five Oneに当てはめてみよう

 

次はもう少し実践的に実際のコード進行に当てはめて運用してみます。

Key=Cのツーファイブワンである、Dm7- G7-Cmaj7です。

それぞれRootからヴォイスリーディングして行くのから転回して4つ紹介します。

では見ていきましょう。

 

Root inv から始める場合

 

D-7をRoot invからVoice Readingするとこうなります。ボトムを見るとルート、5度、ルートって流れですね。


 

1st inv から始める場合

 

D-7を1st invからVoice Readingするとこれ。ボトムを見ると3度、7度、3度。


 

2nd inv から始める場合

 

D-7を2nd invから始めた形。ボトムを見ると5度、ルート、5度。


 

3rd inv から始める場合

 

D-7を3rd invから始めた形。ボトムは7度、3度、7度ですね。


 

Drop2 Two Five voice reading

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以上の4種類ですね。ツーファイブワンの様にコードが4度で進行していく場合ボトムの動きが規則的に現れます。どれも一番基礎的な形なので抑えておきたいですね。

練習のバリエーションとしてはこれは5弦ボトムだけのセットなので

  • 6弦ルートのセット
  • 4弦ルートのセット

上記のポジションもやっておくと良いと思います。

 

枯葉をDrop2でVoice Readingしてみよう

 

Drop2 Voicingを使って枯葉の最初の8小節のコード進行でVoice Readingをしてみましょう。

枯葉の最初の8小節はメジャーのツーファイブとマイナーのツーファイブを含んでいる進行なので練習に最適です。

ではやってみましょう。

 

Root inv から始める場合

 

まずは最初のC-7でRoot invからスタートです。その後はVoice Readingの基本ルールに従っています。

 


 

1st inv から始める場合

 

1st invの3度ボトムからです。

 


 

2nd inv から始める場合

 

2nd invから。個人的にはこれ一番好きです。実際良く弾いてますねー。-7thの5th rootってのは中々ロマンチックですよ。

 


 

3rd inv から始める場合

 

3rd inv。7度ボトムからですね。

 


 

以上の4種類です。始めるInversionが違うと全部違う形になるって事ですね。シンプルなだけに力強いサウンドと言うか、いろいろやってみたけどこれが一番カッコよかったみたいな事もありそうです。

枯葉は4度進行が中心なので流れでVoice Readingしてくとレンジが下がる一方です。ですので途中でレンジを乗り換えたりしても良いと思います。

 

途中でレンジを乗り換えてみる

 

5小節目のマイナーツーファイブの頭でレンジを変えてみます。

 


 

下がるのではく上げてみる

 

違うアイデアとしては下がる一方ではなく上がるやり方もあります。

この場合は今までVoice Readingで使ってきた

  • 一番近い音に連結する
  • コモントーン(共通音)があればキープする

と言うルールからはそれますが実際には自分がカッコいいと思う方向でOKです。

 



Autumn Leaves on Drop2 Voice Reading

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All the Things You AreをDrop2でVoice Readingしてみよう

 

では実際の曲で運用と言う事で、All the things you areのコード進行を使ってDrop2 VoicingでVoice Readingをしてみましょう。

 

基本的な形

 

まずは基本的な感じでやってみましょう。

 


 

All the Things You Are on Drop2 Voice Reading

 

美しいですね。これでも充分良い感じ。レンジは切りの良い所で乗り換えたりして弾いています。レンジを切り替えるタイミングは4小節とか8小節とか切りの良い所が一般的でキャッチーだと思います。勿論自分のセンスで良いです。

何故レンジ変えなきゃいけないのか?と言うのはバンドでベースがいる場合ですと、低音域に行き過ぎたヴォイシングはベースとバッティングする場合があります。この辺は経験してトライアンドエラーで積み重ねるしかありませんが、現場でなんかバッティングしてると思ったら音域変えてみるとか必要になるかもしれません。

 

少し発展させてみる

 

次に二分音符でやってみましょう。上がったりも併用しつつやってみます。

 




All the Things You Are on Drop2 Voice Reading2

 

より実際の演奏に近い感じになりますね。これ2分音符縛りで弾いてますが、リズミックにコンピングしたらこれで充分ええかって感じになると思われます。

こんな感じで好きな曲とかでやってみるのをオススメします。

自分がDrop Voicingを覚えた後に思った事ですが、こういったVoicingが自然とインプロヴァイズして出てくるのは意外と時間がかかります。

何故なら手で覚えるだけじゃなくて頭の中でも鳴らないといけないからで、昨日覚えました!的なVoicingをいきなり曲中で使うと前後の脈絡がなかったりして上手く行かない場合も多いと思います。自分の歌として出てくるまでには時間がかかりますので何度もやって頭の中でサウンドが鳴るまで続けるのがオススメです。