俺を待ちかまえていたのは、いつもとは全く違う世界だった。 さっきまで寝てた部屋から半ば追い出されるようにして向かった先は、壁はおろか廊下や屋根までピカピカに磨かれた石造りの広間。 そういや、俺以前ここと似た場所に行ったことあるな……なんて思ってると、一緒についてきた鎧の男が「思い出しましたか?」と。 言われてみたら……! そうだ、ここ城の中だ。以前マシャンバルの化け物と戦ったトコに似てる! っていうか、こんな場所で俺裁判を受けるのか……? 「これから王にお会いになるために、まずはそのきっっっっったねえ身体を洗ってもらいますから、覚悟してくださいラッシュ様」 うん。こいつなんかまだ俺に因縁残ってるみたいだ。 すると、奥の扉からわらわらと人間の女が入ってきた。 年齢は様々に見えるが、みんな動きやすい服を着てて、これからまるで人作業するみたいだ。 「ラッシュ様、いっさい抵抗はしないでください。ここは城内でありますがゆえに、大声もたて……」 「がああああああああああああ!!!!!」言ってるそばから俺は叫んじまった。 生まれて初めて体験した風呂。しかも俺の鼻には少々障る、香水にも似ためちゃくちゃ泡立つ石鹸で、全身くまなく洗われた。 そんな中、洗っていた女の一人がぼそっと口にしてたな。 「まるで泥の固まりを洗ってるみたい」 大きなお世話だ。つーか俺が泡の固まりになるまで何度お湯を浴びせられたことか……それほどまでに俺の身体は汚れていたに違いない。 きれいに洗われた後は、今度は毛づくろいという拷問が待っていた。 どこぞの国から取り寄せられたという油で、俺のガチガチの硬い毛はきれいに撫でつけられ、そしてつやつやに揃えられた。 ここまで俺は腰にタオル一枚。 次に控えし拷問は……服だ。 身体をきれいにされた時点で俺にはもう抵抗する余力も残されちゃいなかった。まるで寝たきりのジジイみたいに周りの女に抱えられ(奴は侍女と言ってたっけ)身だしなみを整えられていった。 金持ち連中が着てそうな、きめの細かい黒い布で作られた、大きな襟のある長い裾の服を着させられ、靴は……うん、合うサイズがなかった。っていうか靴なんて履けるか。 そうしているうちに、今までなにを聞いても愛想笑いで誤魔化していた侍女って奴の一人が言ったんだ。 「さあ、あちらで息子さんがお待ちですよ」って。 息子……? その言葉に俺は居てもたってもいられず、一目散に部屋のドアを開けた。 そこには……そう、まぎれもなくチビだ! いつもと変わらぬ……いや、俺とお揃いのパリっとしたシワ一つない服に身を包んだチビが立っていた。 よかった……チビは無事だったんだ。たまらず俺はチビをぎゅっと抱きしめた。大声は出さずに。 ルースやジールはまだどうなっているのか分からない。だけど今はチビが無事だっただけでうれしかった。 「おとうたん……」俺の胸元でチビが口を開いた。 「このお洋服……やだ」 ああ、俺もそう思ってたところだ。
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八百十三
みずのえ
いけお
一次選考通過、おめでとうございます。 m(_ _)m
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