………………… ………… …… 「あ……」意識が飛んだと思ったら、今度は急激に引き戻された感覚が俺を襲った。 溺れそうになったとき、手をぐんと引っ張ってくれた……そんな強引な感じが。 「ラッシュ! よかった……!」ぼんやりとした視界の隅にジールとアスティが。しかしなんでジール泣いてるんだ? ああ、なんだ。俺倒れてたのか。でも、なんでだ? 「ラッシュー! 生きてた!」今度はティディだ。起き上がろうとすると、背中が、身体じゅうがズキズキと痛む。 「ラッシュ、吹っ飛んでたんだよ」 「そう、すごい爆発音がしたからすぐさまここに来たんです、そうしたら彼女がずっとラッシュさんを抱いたまま泣きじゃくってたんで……」 そうか。ゲイルにまとめてザックを投げつけたんだっけ……ようやく思い出せた。 爆発が目の前だったからか、まだアスティたちの声が遠くから聞こえるように小さい。まあじきに治るか。 ……いやそうじゃない、ゲイルは、人獣の援軍も来ていたんだ! どのくらい俺は倒れてたかってみんなに聞いてみた。おおよその時間は分からないけど、爆発のときからそれほど経ってはいないようだ。 ならば……間に合うか⁉ 俺はみんなに人獣の援軍が街に向かっていることを説明した。 ……だが、ジールも、アスティも無傷じゃなかった。二人ともケガの状態、そして体力からして、もう限界に近いだろう。 二人とも口じゃ大丈夫とは言っているが、これ以上引っ張りまわらせたくはない。 あとは俺と、まだまだ絶好調のティディだけだ。 「でも……うん。ラッシュってホント不思議」消耗しきってぺたんと座り込んだジールが、俺の姿を見て困惑の言葉を投げかけた。 ティディが倒れている俺を見つけたとき、すでに心臓の鼓動が止まっていたらしい。 だから、ジールもティディも泣いてたのか……って、俺死んでた⁉ 「爆弾目の前でやっちゃったのもそうだけど、背中からすごい血が出てたのよ。普通の人間だったらとっくに死んでてもおかしくないくらいの量をね」 でも、まだまだ傷は癒えてはいないが、俺は生きている。 「やっぱり……狼聖母様の加護なんでしょうかね。それとも持ち前の頑強さか」煤にまみれた顔でアスティは笑っていた。 そうだ、俺はディナレの加護を受けている、やらなければいけないことがあるって彼女に言われたんだっけか。 つまり、オコニドの連中を片付けること……これも俺に課せられた使命。 いやいやそうじゃねえ! 街にはトガリが! ジャエス親方……は、恐らくどうやっても死ななそうだからいいとして、そしてチビと町の連中だ! 「馬、探してくれ……俺は町に戻る」俺とティディは口笛で馬を呼んだ。 いくら爆弾で片づけたとはいえ、まだまだ相当な数の人獣と、そして俺以上に強くなったゲイルが向かっているはずだ、町を襲撃するために。 そして……奴に勝って聞きださなくちゃいけねえ。親方の本当の死の原因を。 いよいよ煙がひどくなってきた。ここはもう離れないと危険だ。 「ラッシュ、先に行ってて、あたしとアスティは絶対に追いつくから」 「ごめんなさいラッシュさん……僕も、みなさんみたいに強かったら」 二頭の馬で燃える森から脱出し、俺とティディは先に奴らを負うことにした。一人でも多く倒さないと、と思って。 俺の背中にしがみついているティディに、俺は最後の言葉をかけた。 「怖くねえか?」 ティディは何も言わず首を左右に振った。ほんといいやつだ。
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理緒
八百十三
いけお
海音(かいね)
2019年8月9日 9時24分
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