話は少し前にさかのぼる。 「久しぶりだね、君と二人でここに来るのって」 ふわりとした金色の髪の毛が、木漏れ日を受けて輝く。 「……ええ」 ルースが日ごろ研究を兼ねて行き来していた城の裏庭で、かぶっていたフードを取った青年が、ルースにやさしく語りかけた。 しかし、ルースはその言葉に目を合わせようともせず、かすかに身体を震わせていた。 「あれからもう、何年くらい経つのかな……ルース」 「……じ、十年はとうに行ってるはずです」 「そうか、僕が王の座についてから、そんなに、か」 「クルー王子……いや、エイセル王、折り入ってお願いが……」 震えながら話すルースの白い肩に、青年ーエイセル王ーの手がそっと触れた。 まるでそれを恐れているかのように、ルースの身体がびくっと震えた。 「分かってるさルース、君は僕と話したいとき、決まって僕をここに呼んだしね」 ルースは黙ってこくりとうなづいた。 「私のかけがえのない友人が今、東のトゥーデルの森でオコニドの残党……いえ、マシャンバルの軍ともうすぐ接触をします……すべてに決着をつけるために」 「場内でドールたちに成りすました奴らが……か」 「ええ、私がずっと調べていた人獣兵です」 ルースは、しかし、と付け加え、さらに続けた。 「おそらく奴らはその接触にかこつけて、ここを襲撃するつもりです。ですので……」 「残された騎士団と兵を、僕にお貸し願えないでしょうか」毅然とした瞳で、ルースは王を見つめた。 先ほどとは違う、断固とした決意。 「ラッシュ……とか言ったっけ。彼の気質にそこまで惚れ込んだのかい?」 「ジール以外では初めてでした。僕のことを対等に見てくれる仲間に出会えたのは……」 「君がそこまで言うのなんて珍しい……だけど今の状況じゃ僕の一存だけでは動かせられないのは分かっているはず。それを承知で言っているのかい? ルース・ブラン=デュノ?」 「ここで唯一話せられる存在が、エイセル王……いや、クルー。君だけなんだ」 その言葉に、王は大きくため息をついた。 「彼の友情に報いるために、ルース。君は何かを差し出せるかい?」 「え……?」 王は腰に下げた剣を抜き、鋭い切っ先をルースに向けた。 「君の覚悟を聞かせて……ルース」
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八百十三
いけお
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