周りの連中がどっと笑った。大方予想はしていたけどな。 「はっはっは、笑わすな貴様は! 敵国の姫に惚れてしまったとはな、これは傑作だ!」 だんだんと怒りが抑えられなくなってきた。 気恥ずかしさを通り越して、こいつら全員今すぐ殴り殺した方がどんなにスッキリするだろうって。 「しかしな、そうなってくると獣人、貴様も逆賊となるのだぞ」ドールは腰に下げていた剣を抜き、俺の鼻先に突き付けてきた。 「俺を……どうする気だ?」 「どうもしないさ、捕らえて一生牢獄へぶち込んでおくまでだ。無論貴様の仲間もな」ドールがニヤリと笑みを浮かべた。気持ち悪い顔しやがる。 「なあ……オコニドと違って、リオネングは俺たち獣人に寛容じゃなかったのかよ」そうだ、さっきっから城内で俺は散々変な目で見られてきた。そしてここでも。元はと言えば俺たちのご先祖が発端とはいえ、この国はここまで俺らを差別する国だったのか⁉ もう、俺らには居場所なんてなかったのか…… だけど、せめて一発だけ、こいつを殴り飛ばして、そして俺の生きざまなりなんなりと終わりにさせたい。 このクソ野郎の下卑た笑いだけは、気に食わねえ! 俺は拳を思いきり握りしめ、ドールの顔面に溜まりにたまった怒りを叩きつけた。 ……のだが。 手ごたえが変だった。普通人間を殴り飛ばした時は、顔面の骨の硬さが拳にガン! と伝わってくるのに、こいつは全然違っていたんだ。 例えるならば、毛布を丸めた固まりのような……それが皮膚をまとっているかのような、鈍くて柔らかな衝撃。 無論、ドールの野郎は思いっきり吹っ飛ばされたさ。周りにいた騎士の連中も、あわてて団長を介抱しにいった。 残った数人は剣と槍を手に、俺を取り囲んだ。 「貴様……ドール団長をこんな目に遭わせて! 即刻処刑してやる!」 ああ、分かってるさ。結婚だとか加護だとか難しい話はもうおしまいだ。 っていうか……俺、誕生日に処刑されるんだな…… 「……おい」その時だった。ドールがよろよろと立ち上がったのは。 「だ、団長、その首は……⁉」俺の隣にいた男が目をまん丸くして驚いていた。ドールの姿を見て。 奴の首は、殴られた方向へあり得ない角度に曲がっていた。 そうだ。完全に直角に曲がっている。普通だったら首の骨は折れてる、もうとっくに死んでるぞ! 「お、これは失敬」と言ってドールは首を元の角度へとボキボキと音を立てつつ戻した。やっぱりあり得ねえ。 だけどまだおかしい、左目につけていた眼帯。それが首を戻した時に落ちて…… そこから、赤く光る眼がのぞいていた。 「だ、団長じゃないのです……か?」 周りで介抱していた奴らも、ドールの異様な姿を目の当たりにして、恐れおののいていた。 俺に向けられていた剣も、いつしかドールに向けられていた。 「ん? ああ、私はリオネング騎士団長のドールである、ぞ? お前たち、なにを、怖がっている、のだ?」 話す言葉もだんだんおかしくなっている。 見渡すと周りのそれは、もはや団長を見る目ではなく、恐れの目へと変わっていた。 その時だった。 「やれやれ……全員始末したと思ってたのに、まさか六人目がいたとはね」ふと、俺の後ろのドアから聞きなれた声がした。 「「デュノ様!」」しかしその声に驚いたのは俺だけじゃなかった。騎士団全員だ。 おまけにルースじゃない、誰だデュノって?
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八百十三
双子烏丸
双子烏丸
海音(かいね)
2019年8月1日 7時46分
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