「お前、彼女と結婚しろ」 俺の心臓が止まった。 いや、ほかの連中もその言葉で凍り付いたように固まっちまっていた。 結婚……ってなんなんだよ。 つられたようにアスティも「いいんじゃないですか、それ」って言いだす始末。 トガリは……うん、固まってる。 「まあな、結婚って言ってもあくまで偽装だ。お前もオコニドのバカ連中に一泡吹かせてえだろ? そういうこった。ガハハハ!」 ジャエスの親方は酔った勢いでこれを言ってるのか何なのかよくわからない。俺にもサッパリだし。 要は、ゲイルたちの目の前で俺とティディが結婚宣言をして、結果彼女をこっちのモンにすりゃいいってことなのかな…… 物はためしにティディに聞いてみた、結婚ってどうよ? と。 「わからないけどおもしろそう!」だってよオイ。 いやいやそうじゃない、まだ親方以外のみんなに話してねえから、ついでに一切合切を俺は説明した。 ティディはマシャンバルのお姫様だから即刻引き渡せ、さもないとここを襲撃するぞってことを。 迷ってるさ、俺も。ここまで彼女に好かれちまったら、もうどうしようもない。クソ生意気で好戦的なオコニドにも尻尾を振りたくない。やれるんだったらここで俺一人で一戦交えてもいい。 トガリも答えに戸惑っていた。そうだよな、こいつ戦いはからっきしダメだし。かといってここを出てまたどこか自慢の料理の腕を振るえる場所を探すにも酷だし。 誕生日の席が、一気に静まり返っちまった。 ……………………………………………………………………………………………………… 「ジャエス親方、もう一つ話が……」 片付けが終わり、俺は酔いから覚めたジャエス親方に例のことを話す決心をした。 ……俺の親方の、本当の死について。それを元仲間のゲイルに言われたことを。 誰にもそのことを聞かれぬよう、俺は裏庭の練習用の広場で親方と二人っきりで話した。 「ゲイルって野郎はそんなことを言ってたのか……驚いたな」 正直、自分の心の中で押しとどめることは無理だった。誰かに言っておかないと、って。 ならば、一番親交が深かったジャエス親方にだけは…… 「俺も普通に兄ィの死因は老いちまっただけだとばかり思ってた……誰かに毒を盛られただとかそんな兆候も話も聞いてねえしな。だが、リオネングを裏切ったクソ野郎の話なんてのも聞く気は毛頭ないだろ? 俺は俺でこのことをきっちり調べてやる、ひょっとしたら気を惹かせるためのウソかもしれんしな」 そういってジャエス親方は俺の背中をバン! と叩いてきた。安心しろっていういつもの親方の癖だ。 「それと、もう一つお願いが……」 恥ずかしい話だが、俺は今までリオネングの城へ一度も足を向けたことがなかった。 そう、あの生意気な騎士の奴にこのことを話さなきゃならねえんだ……が。こういうかしこまった場所はやっぱり心細い。 「おめえ、意外と小心者なんだな」
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八百十三
いけお
海音(かいね)
2019年7月30日 13時10分
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