ティディの一件以来、誰かに見られているという感じがいっさいなくなった。 正確に言えば、感覚とか、匂いとか。それが突如として消えちまったって言うのかな。チビを連れて公園へ遊びに行ってもなにしても、やっぱり外へでれるって言うのは気持ちいい。 ……ただ、気持ちいいのと引き替えに俺の仕事が、ついに、全くと言っていいほどなくなってしまったのはそれはそれで痛い。 トガリ相変わらずせっせと仕事がんばっているし、ルースは……なんかまた出て行っちまった。別の国に行ってジールと一緒に仕事してるとかなんとかって。そーいやジールぜんぜん姿見てないしな。元気かな、なんて。 ティディに関しては結局なんにも分からずじまいだった。 あの後ルースがさんざん質問したにも関わらず、すべて「わかんない」としか答えなかったし。それにルースもジャエス親方も口をそろえて「おまえに惚れてねえか?」って言う始末。 確かにティディは口を開けば「ラッシュ、好き」だし。それに対抗してか知らねえが、チビもあの女に対して妙に嫉妬してるみたいだし。俺からすれば、それはそれで見てておもしろいんだけどな。 そんなボケッとした生活が一月ほど過ぎた頃だろうか。 町の外……要は仕切ってる門から外へと出た交易ルートの辺りで、妙な集団が夜な夜な出てくるとの噂が聞こえてきた。 っていうとやっぱオコニドの人獣? なんて思ってたら、やっぱりそれは正解だった。 ここから出て、馬車で一時間くらいの昼でも暗い森があるんだが、そこで人によく似た怪物みたいな奴らが、高い木の上や影からこっちをじっと見続けているそうだ。 しかし不思議なことに手は出さない。やっぱり休戦協定が「一応」敷かれているからだろうか。まあそれだったらまだいいか。いざとなったら軍の方からまた片づけろって依頼がくるだろう。俺としてはそうしてくれた方がうれしいしな。腕がもう最近鈍っちまって。 そんな毎日が続いてたときだった。陽もそろそろ落ち掛けた頃、重そうな金属の甲冑に身を包んだ俺くらいの若い兵が「獣人の傭兵がここにいると聞いた!」と威勢よく一人で入ってきたんだ。 最初に出迎えたトガリを相手に「おまえがラッシュか、話がある」といきなり連れ出そうとして、俺は慌てて止めた。 どう見たってトガリは歴戦の戦士に見えねえだろ。こいつ目が腐ってるのか、はたまた世間知らずのお坊ちゃんなのか…… あとでジャエス親方に聞いたら「ああ、騎士団の奴だろ。腕よりカネとコネで生きてるボンボン共だ」ってさ。 案の定、トガリに変わって俺が奴の前にでたら、一気に萎縮しやがった。 「お、おまえがラッシュか……」って驚きの目に変わってたな。 「見ねえ顔だが、初対面にいきなりおまえって言うのもずいぶん度胸ある奴だな、あァ?」と、俺はにらみを利かせて相手してやったら、さらに縮こまってこいつ。「ラ、ラッシュさん、で、間違いないですよね……」って。 さてさて、なんでこんな偉そうな奴が俺んトコまでわざわざ来たのかというと…… 「恐らく町の噂でも耳にしたと思うが、ここ最近、東の森に人ならざるものが出没している……最初は盗賊かと思って我々リオネングの軍も現地へ向かったのだが、どうやら奴らの目的は物取りではなかったのだ」 「で、奴らいったいなにしに来たわけだ?」 ラッシュと話がしたい。と。
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T&T
最後の「ラッシュと話が」の続きが気になりますっ。 次話の冒頭に繋がるのかと思ったのですが、そうでもないような気がしたので。 意図が汲み取れていないだけだったらすみません!
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指摘ありがとうございます!いま修正しました。 基本iPhoneで投稿してるので、細かいところに目が行かなくて…すいませんです。
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たか☆ひ狼
2019年7月25日 23時35分
理緒
いけお
スギ
2019年7月28日 1時25分
海音(かいね)
2019年7月25日 10時30分
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