「フォーム通過率」はCVや業種によって、MAX値がほぼ決まっている
例えば脱毛サロンなどの「来店予約」フォームは、エリア・日時・個人情報など入力項目が多いため、MAX値は30%程度だ。20%あれば合格、10%台が平均というイメージ
この閾値を知っていると、改修に投資して良いコストがすぐ分かる
コラム 営業の知識
BLOGブログ
営業管理ツールのUPWARDブログでは、BtoB営業に役立つ情報を発信しています。
今回は、株式会社WACUL・取締役CIOで、AIアナリストの垣内さんに、お話を伺ってみました。
垣内さんといえば、Twitterで、フォーム・LP改善などデジタルマーケティングの知見を発信しておられます。
垣内勇威さん|AIアナリスト(@yuikakiuchi) / Twitter
AIアナリスト公式サイト:アクセス解析を自動で行う人工知能「AIアナリスト」- サイト分析サービス
本インタビューでは、フォームの勝ちパターンの話を切り口にして、BtoBマーケティングの勝ちパターンと本質について語っていただきました。
目次
BtoBに限らず、フォームは一番簡単にパターン化できると思います。
下記の3つに分類されます。
(1)簡単そうに見せる
(2)余計な脳を使わせない
(3)問い合わせ後の業務フローが円滑に回る項目取得
(3はフォームの通過率や、Webの指標とは直結しないのですが、BtoBでは営業・インサイドセールスが電話したいと思うかどうかが重要です)
(1)については、「項目が少なくて本当に簡単」というのと、(本当は難しかったとしても)パッと見て、「簡単そうに見せる」という2種類があります。
「簡単そうに見せる」を実現する為に意識しておきたい話として、定性的な調査になりますが、ユーザーに実際サイトを利用してもらってテストすると、結構「フォームに1回入って戻る」動きをします。
テスト終了後にユーザーインタビューをしてみると、「何となく面倒くさそうなのでやめた」という回答をされるので、「何か面倒くさそう」と思われないようになればCVR上がるということだと思います。
上記のような「なんとなく難しそうに見える」のを防ぐ為に、直感的、ファーストビューにフォームが収まっている、テキスト量が少ない等、見た目で「入れる気が起きるようにする」、「簡単そうに見せる」施策を行うことでフォームの通過率は変わります。
(2)については、簡単そうに見せるとは別の話で、余計な違和感を感じさせないという対策になります。フォーム遷移ボタンとh1の一致や、入力を迷う質問項目の排除などが該当します。
時々あるのですが、「資料請求ボタンを押したのに見出し(h1)がお問い合わせになっている」等、フォームに入るときのボタンの文言とフォームに入った後に表示される見出しの内容が違うと、一瞬ユーザーは迷って頭を使ってしまいますよね。見つけたら、すぐ修正すると良いでしょう。
(3)については、営業・インサイドセールスから、問い合わせいただく企業に対してヒアリングしたい項目を聞き、整理してフォームでも聞き取っても良いと思いますが、手っ取り早く必要なことだけヒアリングするには、すべての質問項目を削ぎ落として、下記のようにフォームを2段階に分けて「電話して良いかどうか」だけを聞き取ります。
そうすると、1の簡単そうに見せる為に「フォームの項目を減らす」ことにも繋がるので、フォームの通過率改善と「問い合わせ後の業務フローが円滑に回る項目取得≒営業・インサイドセールスが電話したくなるようにする」ことの両方を叶えることができます。
「電話したい」と思わせる、ちょっとした内部向けの気遣いがリード獲得の効果を大きく変えることがあるので、BtoBマーケターは「とにかくリードを増やす」ことを重視しつつも、「営業・インサイドセールスが電話したくなるリードかどうか」も意識しておきたいです。
↓営業・インサイドセールスに「電話したい」と思わせる2段階でデータを取るフォームのイメージ
1段階目:会社名など通常の項目をヒアリングする
2段階目:ヒアリングしたい項目取るか、下記のように「電話して良いか」だけの許可を取る
この2つ目のフォームの入力率を高める工夫として、「ありがとうございます」を強く伝え過ぎると、ユーザーに終わったと思われて離脱率が高まるので、「ありがとうございます」とは書くけど、そこから読まれないようにする工夫も必要です。
上図のように「ありがとうございます」はグレー背景を置いて、書いてあるけど読まれないようにする対策が有効です。
こちらの画面イメージに出している「電話をする許可」については、「クライアントの電話を拒否する理由」にはなるので、すごく強力な営業組織や経験豊富なインサイドセールスの担当者にとっては必要ないかもしれませんが、まだ出来たばかりの営業組織や、経験が浅い担当者にとっては有効です。
それから、この施策には営業担当の言い訳が効かないようする側面もあります(笑)
目標値は流入元によっても変わってくる(※)ので、一概には決めづらい側面もありますが、弊社の調査(B2Bサイトのフォームにおけるベストプラクティス研究)では、あくまで目安として25%としています。
※流入元の広告の種類によって、「フォームまでの到達率だけが変わる」と思いきや「フォームの通過率も変化します」
「フォーム通過率」はCVや業種によって、MAX値がほぼ決まっている
例えば脱毛サロンなどの「来店予約」フォームは、エリア・日時・個人情報など入力項目が多いため、MAX値は30%程度だ。20%あれば合格、10%台が平均というイメージ
この閾値を知っていると、改修に投資して良いコストがすぐ分かる
25%という数字については、もちろん調査の結果から算出していますが、ちゃんと調査・説明をした上でこのくらいに設定しておくと「みんな直す気が起きそう」という狙いもあって出しています(笑)
ただ、商材や企業規模によっても異なっていて、あえて複雑に質問をしているフォームや、商品が多い大企業では10%を切るケースもありますので、あまり25%という数字そのものにはこだわらない方が良いです。
その他、フォーム通過率改善は、フォーム自体の難しさに依存しないという面もあります。「フォームに来る前のユーザーの状態が影響する」ようなイメージです。
LP内での説得内容を変えたら他の数字はほとんど動かなかったのに、フォームの通過率だけが上がるようなケースもありますので、フォーム以外の要素にも気を配るとより良いと思います。
もし項目を減らせるのであれば、最初に項目を減らしてしまえばいいと思います。
減らせる項目の見つけ方・決め方のコツとして、100人に1人しか選択しないような選択肢を置いているケースがあるので、それを削るという方法があります。
BtoBだと、既存のお客様向けの導線や選択肢があることで項目が多く見えてしまうケースだったり。
どうしてもレアケースに対応したいのであれば、「そういう人は電話してください」ってしてしまうと、項目がすっきりして、CVR改善につながることがあります。
他にシステム開発の工数をかけないという意味で、短期間でできる策としては、余分なテキストを消して高さを削り、ファーストビューに全部フォームが入るように配置する策などもあると思います。
あとは、注釈だらけのフォームをたまに見ますが、フォームの項目名などを変えるだけでも解決したりします。
フォームのテキストカットの参考例
引用元:株式会社オレコンのセミナースライドより
先ほどの質問でご紹介した「ボタンと遷移後のフォームの文言一致させる」施策については、異常に文言がずれていない限りはそこまで大きく数字は変わらないです。
入力が「楽そうに見えるか」が重要なので「必須」か「任意」は関係ないと思います。
ユーザーにとっても、「任意かどうか」はパッと見てわからなかったりするので、どうせ項目を追加するなら「任意」ではなく「必須」にしてしまっても良いくらいです。
あと、細かい話なのですが「必須」って文字を赤で強調することがありますが、エラー表示のハイライトや注意書きに使うべき赤色と被って見えづらくなってしまうので、別の色を勧めています。結構よく赤色が使われているのを見かけますが、フォーム内では赤は使わないというのが鉄則です。
注:先ほどのイメージでもオレンジ色で必須を表現している。
B向けのフォームでは、1つ目の項目が電話番号やフリー入力欄など極端なことや致命的なことをしなければ大丈夫かなという印象です。
C向けの事例だと、「電話番号」「メールアドレス」の順番よりも「メールアドレス」「電話番号」の順番の方が通過率が上がった例もあります。
BtoBの話題からは離れますが、「ユーザーの行動の文脈に沿って、項目の順番を揃えると通過率が上がる」こともあります。
フォームの通過率を上げるには、フォームに入る前の気持ちを汲んだ設計にすべき。クレカの利用明細をwebで見るための申込フォームでは、最初にカード番号を聞くと通過率が上がる。逆にECサイトでは、入力の心理障壁が高いカード番号は最後に聞いた方が良い。このように文脈次第で最適解が大きく異なる
クレジットカードの利用明細を閲覧するサービスの事例では、もともとカード番号から入力させていたんですけど、カード番号を最初に入力させるとハードルが高いと思って、名前から入力させたら、通過率が半分くらいになってしまったんです。
ユーザーは当然カード番号が要るものだと思って来ているので、カード番号を最初に入力しないフォームに違和感を感じて通過率が落ちてしまったということだと思います。
原則としては、ファーストビューが良いと思います。
BtoBサイトのユーザー行動を解析すると、CVした人のうち半分くらいは他のページを見ずにフォームに直行しているんですよね。BtoBのサービスはWebサイトだけではなかなか理解できないので、「早く営業こい」と考えている人も多いということだと思います。
ファーストビューにフォームを露出するLPが鉄板になりつつある
縦長にくどくど説明するLPより2倍近くCVRが良い
ホワイトペーパーDLはもちろん、サービスの資料請求や無料トライアルくらい重いCVでも有効だ
ちなみにページ下部にフォームを露出するのはNG。露出しない場合と数字がほとんど変わらない
LPでしたら、下図のようなほぼフォームにしかいけない作りにしてしまうのも、簡単に数字が伸びたりします。
ただ、注意点があって、やりすぎると逆に離脱が増えることもあるので、上図の「その答えとは?」をクリックすれば、詳しい情報が見られるなど、「慎重な人」「詳しい情報が見て納得したい人」への導線も「さじ加減はしつつ、残しておく」ことも重要です。
基本的に不要だと思います。フォームは勝ちパターンがはっきりしていますし、あと、BtoBだとそもそもフォーム到達ユーザーの母数が少ないことも多いので、「統計的に正しい結果がわかるまで、時間がかかりすぎる」という側面もあります。
施策を考えたらもう変えてしまって、結果を検証して「下がった時だけ戻す」「横ばいでもそのまま」という感じで良いと思います。
ABテストは、説得のために使うものなので、数字の改善を早く進めたいのであれば、施策の手数の方が重要かなと考えています。5%の改善の確からしさを証明するのに半年もかけるくらいであれば、2週間・1ヶ月に1個改善を試せた方が結果は出ると思います。
フォーム改善はすぐに結果につながるのでやった方がいいのは間違いないかと思います。ただ、作法はある程度固まっているので、最低限のところまでは短時間で整えてしまえるかなと感じます。
フォームの項目名や順番について細かくPDCAを回すことはやらなくていいと思います。営業の観点も含まれますが、BtoBでは「どんなCVポイントを何種類設定しておくか」が大事になってくるので、「ユーザーの文脈に合わせたフォームの準備」に関しては、時間をかけた方が良いと思います。
必然的に時間をかけることになるとも考えていて、例えば、「資料請求」をしたい人と、「無料トライアル」したい人では、フォーム入力の手前の気持ち(文脈)が違うので、入力項目も変わってきますし、ユーザーの気持ちを突き詰めていくとフォームの種類は増えていきます。
そして、このフォームの種類を決めていく作業は法人営業経験がある人しかできないことだと私は考えています。仮に法人営業経験が無いBtoBマーケターがこの作業をしようとすると、リアルなニーズがわからないので、フォームの項目や種類を決められないと思います。法人営業の経験が無い場合は、先に営業を経験してからBtoBマーケターの仕事をした方が良いでしょう。
Q:非常に参考になるお話の数々、ありがとうございました!
今回のインタビューだけでなく、垣内さんはTwitterでもデジタルマーケティングの知見を惜しみなく発信しておられますが、貴重なノウハウを公開しても大丈夫なのでしょうか?
色々なところでよく話しているのですが、私は「不毛なABテストや車輪の再発明はやめよう」ということを伝えていきたいと考えています。Webページの勝ちパターンは決まっているので公開してしまって、無駄な仕事を減らしてもっとマーケターが本質的な仕事ができるといいなと考えて、情報発信しています。
また、Webの技術はそもそも効率化やコストカットのためにあると思っているので、答えがずっと前から出ているような施策を何度も繰り返し考えたり試したりするのは本末転倒なのかなとも感じます。
(垣内様、本日は貴重なお話ありがとうございました!)
垣内勇威さん|AIアナリスト(@yuikakiuchi) / Twitter
AIアナリスト公式サイト:アクセス解析を自動で行う人工知能「AIアナリスト」- サイト分析サービス
無料で資料をダウンロード
以下のフォームにご入力いただくと、ダウンロードURLを記載したメールをお送りします。