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(八郎)抱き寄せてもええですか?
(喜美子)あかん!何で?
泣くわ!何で!
好きやから!
アハッ…。
♪~
えっ…。
♪~
(常治)おんどりゃ~!何してんじゃあ!お父ちゃん!お父ちゃん!?
あ~!(八郎)ああっ…。何すんの!
来い! 来い!お父さん? お父さん…。
お父ちゃん 放して!やかましい! …もう!
話 聞いてや!
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
もう放して! もう お父ちゃん!分かった もう分かった…。
何が分かったや! ほんまに もう!(マツ)どないしたん!?
どこの馬の骨か分からんやつとこいつは…。
お前 世が世やったらお前 切腹もんや! もう!
何があったん?どついてきたった…。
ど… どついた…?お父ちゃん 話 聞いて下さい。
はあ?きちんと 紹介させて下さい。
十代田さん いいます。十代田八郎さん いいます。
どこのハレンチさんや。八郎さんです。
ハレンチさんや!ほんで お前は あばずれさんや もう!
あ… 話 聞いたげたら?
ハレンチさんの話は受け付けまへん。
あっ お前 ほらお見合い大作戦行く言うとった午後からや 行け行け…。それは…。
ほら 参加する…!今 そんな場合や…。
お前かて言うとったやないか ええ?照ちゃんみたいに あの…孫の顔見せてくれる日が喜美子にも いつか来るんかなあ言うて。
さあ さっさと結婚してほしいわあ言うて言うとったやろ お前。
そこまでは言うてないよ。結婚 考えてます。
結婚!? そういう話が出てんの!?十代田さんと。 いつの間に?
もともと そういうお人や。おつきあいの先に結婚を考えてはる。
そういう… そういう誠実なお人や。
(マツ)そう…!
十代田さんは 丸熊陶業の社員さんでうち 陶芸教えてもろてるんです。
また… 陶芸て…え… 絵付けの次は 陶芸か お前。
ほんで 十代田さんは…陶芸家になりたいいう夢を持ってはります。
陶芸と真剣に向き合ってる。
その姿を見て うちは…うちは あの人と一緒になりたいです。
♪~
き… 喜美子。はい。
お前は… 絵付けの仕事をしてここで一生を終えなさい。
え…。ああ 結婚はせんでええ。と… 陶芸もせんでええ。結婚せえへん言うとった こいつ。
お父ちゃん。そや… そうやってお父ちゃん お父ちゃん言うて お前ずっと お前 かわいらしい娘のまんまここにおったらええねん。 なっ?
ほら 3歳の時みたいにお父たん お父たん… 何か…そういう感じで ちょっと 頼むわ ひとつ。
(マツ)また 訳 分からんことを…。
分からん でも自分でも分からへんねんもうな分かってんのはなもう嫌やいうこっちゃ! もう…。
何が あの人と一緒なりたいやもう… あか~ん! アホ!
(百合子)お姉ちゃん。
(八郎)次郎?(信作)ああ大阪から越してきた その日に…あ… ちょちょ…。次郎いうんをやっつけたんや。
次郎ってのは当時 こんな こんなでっかいやつでそいつを 平気な顔してやっつけよった9歳の喜美子や。
何で布団敷いてんの?お前 ケガしたやんけ。
布団敷くほどのことやない…。聞けぇ!
ここ座れ ここ。えっ。 ちょっと…優しく 優しく。9歳の…9歳の喜美子の話 してやってんねやんけ。はい はい。
ほんでな父親同士が仲ええのもあるけど喜美子は 会った瞬間に垣根を越えてきた。
垣根?ああ。
俺は 今でこそ こういう「見合い大作戦やるで!」言うような上向きのええ男やけどな。ええ男やけどな。
2回言わんでも。子どもの頃は 何ちゅうか…あ~ こんなんや…。
右から左に アリが行くんをじ~っと見てるような子やってん。
いじめられてたん?そや! はっきり言うな!
でも 喜美子は 喜美子ってやつはそういうの気にしよらへん。
垣根を越えてペラペラ ペラペラ話しかけてきよった。
不思議なもんでな 俺も懐いてしもて…。
そっから ずっと 腐れ縁ちゅうこっちゃ。
僕も そこにおったら話しかけてたよ。
あ… いや… 一緒にアリが行くんを見てたかもしれん。
おう お前はな。 お前は 黙って一緒にアリを見てくれる方やな。右から左に じ~っと。
そんな子どもが何で 上向きのええ男になったん。
何で 上向きのええ男になったん。2回言うてくれた~。
信作が子どもの頃の話すんの初めてやさかい。
まあ 話すほどのことでもないけどな。俺 おばあちゃん子やってん。
亡くなったんを俺が見つけたんや…それで死生観変わった。
アリ見てんのもええけど空も見上げようかいうて。
せっかく生きてんねやったら上も見たろう思たんや。
そうか…。
ええか 今から来よるからな。はっ?百合子に言うといたさけ。
いやいや 来ても上がってもらわれへんで?何で?
あかん あかん あかん!男の1人暮らしの部屋に そんなん…。
あ~ はいはい はいはい。ちょっ ちょっ ちょっ ねえ。
何で… な… 何で 寝んの?
しんどそうにしとけ。何で 寝んの!?えっ?
・(八郎)苦しい言うてる…。・(信作)苦しめ苦しめ もっと。
・(八郎)何でやねん もう ちょっと…。・(信作)ええ具合に苦しんどけ…。
・(八郎)一回外そう これ もう…ほんまに。 痛い痛い痛い…!痛い 痛い 痛い!何で たたいて…。 アホ!
・(信作)アッハッハ。・(八郎)何やねん もう…!
(ノック)うち。はいよ~。
おう 来たか。百合子から聞いた。おう 上がれや。
あかん あかん あかん あかん あかん!まだ言うとるわ。
嫁入り前や 男の1人暮らしの部屋に上げるやなんて あかん。
お前は どの口が言うてんねん!あ~あ! ああ!
お前も なに しおらしい顔してんねん。はよ入れって。
お邪魔します。ああ ああ… もう!
なに 布団と戯れてんねん アホなん。
信作がやったんやないか…。ええから寝とけ言うてるやろ。
おう 喜美子。 こいつな足 ひねってしもたみたいやねん。
えっ…。大変やったな えらい目に遭うたで。
そやから 交代な。 看病したってくれ。
俺 もう行かなあかんから。 大事なお見合い大作戦が始まってまうさけ。
ごめんな?ごめんな?
まあ 盛り上がるように祈っといてくれや。ほな。
ありがとう ごめんな。
いつからなん? ハチと。照子 知ってんのけ?
俺から 俺から言うていい?
言わんでええ。何でやねん 言わしてえや。
言わんでええ。言いたい 言いたい 言いたい!
いい いい。もう行け 行け…!言いふらしたいねん!
行け 行け もう。はい はい はい さいなら。
おう 喜美子 よかったな 俺もうれしいで。
おじさんもな さっきはいきなりで カッとなっただけや。これで2人が結婚いうことになったら お前おじさん大喜びや 結婚大歓迎やでぇ。
許さんわ。 絶対 許さんわ!
ええ話やなあ。 ヘッヘッヘッ。フゥ~!
あの…。ああ…。
あっ 痛たたた…。あ… 大丈夫ですか?
うん 大丈夫。 平気です…。
あの… うちの父が いきなり失礼なこと…すいませんでした。
いや そんな… 僕の方こそ…ああ! 痛たた…。大丈夫!?
ちょっと 見せてみぃ?ああ ああ…。
平気です。 大丈夫。
ひねったん?くじいた…。
お父ちゃんにやられた時?そのあと…。
そのあと?川原さんが お父さんに連れていかれてそのあと 立ち上がって こうやったら…。
何で こうやんの?追いかけよう思て。
お父さんに頭下げなあかん思てほんで立ち上がって追いかけようとしたらくじいてしもうた…。
それでも 追いかけようとしたら信作が行くな言うて…。
こういう時 すぐには行かん方がええって。
せやけど 改めて頭下げに行きます。
心配せんでええよ?僕からお父さんには きちんと…。
ええ ええ。 ええです。いや ええことないやろ僕は 真面目な気持ちで川原さんのこと…。いや 結婚のことはええから。
えっ?今は その…。
どういうことです?
足! 足 冷やした方がええんちゃう?何か 冷やすもん…。
え~。
これ うちの…。結婚は… 今は? 考えられへんいうこと?
これ うちの! うちの絵ぇやん。
こっちは?聞いてるんですけど。
うちも聞いてんねんけど。
深野先生が描いてくれはったんです。僕のために。
そんなん 知らん! 初耳や!
川原さん!こんなん恥ずかしい! 知らんかった!
恥ずかしい。恥ずかしいことないよ!
いい絵や!
答えて下さい。
信作はこれで2人が結婚いうことになったらお父さんは大喜びや言うてたやないですか。
川原さんは そやないのん?
もうええやん 結婚は。
運動 苦手やから?えっ。
鈍くさいの分かったからですか?何 言うてんの?
何で 結婚はええなんて言うんです!
足 冷やそ?何か 手拭いか何か ぬらすもん…。
自分でやります。
あの…帰って下さい。えっ…。
ここは丸熊陶業が借りてくれてるお部屋です。
嫁入り前の娘さんが…。また そんなこと言う!
ほんまに帰ってええのん?もう会えんかもしれへんで!
何で 会えん!?
ひょっとして…お父さん?
お父さんか。
ほんまは 何て言われたん?
帰りたくない。
帰さんといて。