乗用車保有の考え崩す「完全自動運転」後の世界

土地利用や自動車保険のあり方も変えうる

技術的な側面にばかり目を奪われていてはいけません(写真:metamorworks/PIXTA)
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する――。野口悠紀雄氏による連載第3回は、「あなたは自動運転が何を変えるか知ってますか」(2019年11月24日配信)に続いて、完全自動運転が実現した先の社会の変化を大胆に予測する。

自動運転の時代になれば、自動車をめぐる環境は一変します。自動車は主に保有するものから利用するものに変わると私は見ています。そうなれば、生産量が激減する可能性があります。地価にも大きな影響があるでしょう。このとおりになるわけではありませんが、現時点でさまざまな条件を加味して、私の考えも交えて未来を予想します。

自動車が所有するものでなく、利用するものに

タクシー、トラック、バスなどの自動運転や自動配送ロボットは、どれも大きな変化です。しかし、自動運転で引き起こされる変化の一部でしかありません。さらに大きな変化は、乗用車について生じます。

つぎの3つの可能性が考えられます。

(1)今は、自動車を「所有する」ことによって利用していますが、完全自動運転になってもこれが継続するシナリオ

2)カーシェアリングが進むシナリオ。これは、すでに進展しつつあります。大手自動車メーカーが展開しているサービスでは、好きな車を時間単位で借りられ、どこでも乗り捨て可能です。

(3)運転手のいない自動運転のタクシーが登場し、普及するシナリオ。これは「ロボタクシー」と呼ばれます。

いつまでも(1)のままであるとは想像しがたく、どんどん(2)(3)へと移行していくものと私は考えています。

この連載の一覧はこちら

もしロボタクシーが広範に普及すれば、自動車の利用法は現在とは大きく変わります。

タクシーを呼べば、運転手のいない車が到着します。それに乗って目的地まで行き、そこで乗り捨て、帰りにはまたロボタクシーを呼んで自宅まで帰る、といった利用法になるでしょう。個人が乗用車を保有しなくてもタクシー会社が保有する乗用車の利用で事足りるようになるというイメージです。

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  • ymns0fcd86c66b02
    年間3500人が交通事故で死んでもニュースにもならないけど、「トヨタが全責任を持つ自動運転車が一人殺した」は国を挙げて大騒ぎになったあげく「自動運転は不許可」になります。
    手動運転よりは8割減るからトヨタの人殺しが許される、とはならないですよ。もちろん非合理的判断だけど、政治イシューである限り。
    「技術的には自動運転だけど、最終責任は搭乗ドライバー」が一旦はゴールではないかな。

    up5
    down2
    2019/12/8 23:52
  • 5d103f216716b0ed6e0235
    2025年
    物流を中心に業務用車両への補助金のバラマキ、促進。
    高速道路の時間帯による本格的自動運転専用道路化開始。
    2030年
    非自動運転車の生産終了。
    非自動運転車の税段階的に増税。
    高速道路は自動運転車専用道となる。
    2035年
    非自動運転車の税爆上げ。個人所有がかなり厳しくなる。
    2040年
    非自動運転車の車検終了。事実上公道走行は不可となる。

    まあ時期は微妙ですが大雑把にこんな感じではないでしょうか。

    up13
    down10
    2019/12/8 13:08
  • JPYa2352911dd6b
    この先数十年は完全自動運転の車は絶対にできない。
    近い将来に地域限定、運転手無人タクシー、そしてセンターにて人間がモニター監視がやっとだと思う。

    up15
    down14
    2019/12/8 09:44
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