「町がつぶれる」 口蹄疫、宮崎の畜産農家ら悲痛

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2010/5/18付

人口約1万7千人の川南町は年間の農業生産額200億円のうち、畜産業が150億円を占める畜産の町。牛1万頭、豚13万5千頭が飼われていたが、半数以上の殺処分が決まった。同町商工会の津江章男会長(62)は「このままでは町がつぶれてしまう」とうめく。

町のにぎわいも消えてしまった。野菜や衣類を積んだトラックが役場近くに並ぶ人気イベント「軽トラ市」は中止。小学校、飲食店、役場など人が出入りする建物の玄関には消毒液でぬらしたマットが置かれ、駐車場や給油所など車の出入り口には消毒剤がまかれる。ウイルス付着を恐れ、人通りも激減。津江会長によると売り上げが8割以上落ち込んだ商店や飲食店もあるという。

一方、幹線道路など30カ所で自衛隊員らが車両の消毒噴霧にあたる。町内全域で感染疑いが続発し常態化した。

国や県など行政への対応への不満は頂点に達している。「政府に危機管理能力がなく、口蹄疫封じ込めの機会を逃した」と憤るのは同町のJA尾鈴養豚部会長の遠藤威宣さん(56)。感染疑いがなくても一定地域の家畜を処分し、緩衝地帯をつくる措置を農林水産省に要望したが「法律上難しい」と断られてきた。「鹿児島や熊本にも広がったら九州の畜産は崩壊する」と危惧する。

人手不足から殺処分が遅れていることへの怒りも。ウイルス拡散を食い止めるため、地元は家畜の早期処分を求めているが、自衛隊の応援を得ても処分まで10日以上待つ例もある。40年以上、豚の品質向上に取り組んできた養豚業、山道義孝さん(61)の農場もついに16日、感染疑いが出た。「悔しくてたまらない。国や県がもっと早く深刻さを受け止めていれば、食い止められたのではないか」と唇をかむ。

別の養豚農家の男性は17日になってようやく対策本部を立ち上げた政府の対応を批判。「これは国益の問題。農相は感染地域の視察すらしていない。現場と温度差がありすぎる」といらだった。

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