公判の被告人質問への返答で、宅間被告は、聞いている者が戦慄するほどに根深い女性蔑視を何度も口にしました。
また、彼はたびたび母親への恨みも口にしました。まるで、母親の知性のなさが自分の犯行の原因とでも言いたげでした。
その母に父が暴力を振るうのを見て、彼は育ちました。幼少の子どもにとってそれは恐怖や悲しみの感情が凍結してしまうほどのトラウマをもたらす体験です。彼自身も厳しい体罰を父親からしばしば受け、恐れ、不安、辛さ、悲しさをためこんでいました。
その苦しい心理状態を宅間は公判でしばしば「むしゃくしゃする」と説明しました。
表現を許されなかった怒りや悲しみ、とりわけ本人も認めたくない不安や屈辱や恥の感情は心の中の異物として、行き場を失い子どもの身体の内をさまよい、自我形成に、人間関係の持ち方に深刻な影響を及ぼします。
「むしゃくしゃする」と、小学生の宅間は自分より小さな子どもにつばを吐きかけいじめ、「むしゃくしゃする」と、中学生の宅間は女子を後ろから襲ってレイプし、「むしゃくしゃする」と、駐車している車のタイヤを片端からパンクさせ、「むしゃくしゃする」と、妻を殴ったのです。
「昔から生きてんのがやっと。しんどかった。100人中95人まではこういう気持ちはわかってもらえないだろう。むしゃくしゃするとどうしていいかわからなくなり、女を襲ったり、車をパンクさせたりして、ごまかして不快感を発散させる方法を身につけた」
中でも女子への攻撃は一貫していました。小学生の頃は、女子生徒の胸や尻をさわる。いじめや唾吐き。中学では女子の弁当に精液をかける。10代の頃から始まった数知れない女性への暴行、レイプ。元妻たちへの執拗なDV暴力。母を廃人同様にした暴力。女子高校生や空港の「グランドホステス」など女性を攻撃対象にした無差別殺人の想像。
そして3番目の妻への「むしゃくしゃする」気持ちの肥大を止めようがなくなり、大量殺人、池田小襲撃の行動となりました。