『ゾンビ ―日本初公開復元版―』より

元祖ゾンビ映画は「アメリカのタブー」に切り込んだ問題作だった

人種差別、女性蔑視、中絶の権利…

世界初のゾンビ映画『ホワイト・ゾンビ』が公開されたのは1933年。ただし、アメリカで製作されたこの作品に登場するゾンビは我々が知るような“人を喰らう蘇った死体”ではない。現代のゾンビ像は、ジョージ・A・ロメロが監督した1968年公開の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』によって確立された。同作は当時日本では公開されなかったため、1978年に公開された(日本公開は1979年)同監督の『ゾンビ』が日本人とゾンビの邂逅、ということになる。

『ゾンビ ―日本初公開復刻版―』より
 

本作は100万ドル以下の制作費ながらも、世界全体で5,500万ドルを売り上げるという驚異的な大成功を収めた。以来、”ゾンビ映画”はいちジャンルを確立しただけでなく、ゾンビ研究家やゾンビ・コスプレーヤーまで登場するなどひとつのサブカルチャーとなっている。

世界唯一の、“日本だけの『ゾンビ』”が復刻

1979年に日本で公開されたジョージ・A・ロメロ監督作『ゾンビ』は、映画の世界観が理解されにくいだろうという判断で配給会社の日本ヘラルドが冒頭部分の説明を創作し(!)、残酷描写で成人指定される可能性を排除するため、該当シーンに静止画処理やモノクロ処理を行った日本独自のバージョンだった。

『ゾンビ ―日本初公開復元版―』より

この世界唯一の“日本だけの『ゾンビ』”に思い入れのあるコアなファンは多く、日本公開40周年を迎えた今年、『ゾンビ ―日本初公開復元版―』を全国劇場公開するためにクラウドファンディングが実施され、総額1,000万円以上の支援額が集まった。先日11月29日、とうとう復元された日本初公開バージョンがスクリーンに復活、日本中のファンを唸らせている。

なぜゾンビは我々の心をとらえ続けるのか。プレミア上演のために来日した本作の主演俳優のケン・フォリーと女優のゲイラン・ロスに聞いた。

左から、ゲイラン・ロスとケン・フォリー