宇宙暦七九一年一一月二〇日、エルゴン星系第二惑星シャンプールに集結した同盟軍は、「自由の夜明け作戦」の名のもとにイゼルローン方面辺境の奪回に乗り出した。
ユリウス・フォン・クラーゼン上級大将指揮下の帝国辺境鎮撫軍は抵抗らしい抵抗もせずに後退し、シドニー・シトレ宇宙軍大将のドラゴニア方面軍、ラザール・ロボス宇宙軍大将のエル・ファシル方面軍はいずれも順調に前進していった。そして、開戦から一週間で占領地の六割を奪還したのである。
ここ数年の劣勢を一気に取り戻すかのような快進撃に、市民は大喜びした。メディアも別の意味で喜んだ。不況に苦しむ彼らにとって、一大反攻作戦は一大ビジネスチャンスだったのだ。
「連戦連勝! 同盟軍に敵無し!」
「年内に全占領地奪還か!」
「次はイゼルローン攻略だ!」
威勢のいい文句が連日のように電子新聞の見出しを飾り、第一面の常連だった不況関連の記事は経済面へと追放された。
「千里眼の知将シトレ!」
「炎の闘将ロボス!」
「専制打倒の希望現る!」
「シトレとロボスの二提督時代が始まった!」
マスコミはシトレ大将とロボス大将にあらんばかりの賛辞を浴びせ、恵みの雨を降らせてくれた恩に報いた。
「民主主義は六世紀の時を経て、クリストファー・ウッドとミシェル・シュフランを再び手に入れたたのです」
保守的な報道姿勢で知られるNNN(ナショナル・ニュース・ネットワーク)のニュース司会者ウィリアム・オーデッツは、銀河連邦の二大名将を引き合いに出して、シトレとロボスを賞賛したが、さすがにこれは軽薄の謗りを免れなかった。
前線にいる者は、みんなマスコミのフィーバーを冷めた目で見ていた。占領地の六割を奪還したと言っても、放棄された惑星を拾い上げただけに過ぎず、戦いで勝ったわけでもない。敵が戦線を縮小して戦力集結を図っているのは、明らかだった。
国防委員会情報部の調査によると、「辺境鎮撫軍」を称するイゼルローン方面辺境の帝国軍の総戦力は宇宙艦艇が五万隻、地上戦闘要員が三〇〇万人ほどで、ドラゴニア航路に主力が展開しているという。これらの部隊を排除しないことには、勝ったとは言えないだろう。
シャンプールを出発して八日目の一一月二八日、ドラゴニア方面軍は初めての戦闘を経験した。ウランフ少将の第八艦隊B分艦隊が、オグニツァ星域において帝国軍の分艦隊と遭遇し、二時間の戦闘の末に撃破したのだ。
その翌日には、エル・ファシル方面において、ジャミール=アル・サレム少将の第一二艦隊A分艦隊が惑星カラビュクを攻撃し、守備司令官エルディンク准将と装甲擲弾兵六万人を降伏させた。
これ以降、同盟軍と帝国軍は戦闘状態に突入し、ドラゴニア方面軍とエル・ファシル方面軍は、競い合うように小戦闘での勝利を重ねていった。
一一月三〇日、ドラゴニア方面軍所属のアレクサンドル・ビュコック少将率いる第七艦隊D分艦隊は、ドゥルベ星域で帝国軍の分艦隊を撃破した。
ビュコック少将と言えば、前の世界で最後の宇宙艦隊司令長官となった人物で、戦記の英雄の中でも、ぶっちぎりにかっこいい。マル・アデッタ会戦でラインハルト帝の降伏勧告を拒み、「民主主義に乾杯」と叫びながら散っていくシーンは、愛国心など一かけらもなかった俺でも涙が止まらなかった。伝説の英雄がリアルタイムで活躍していると聞くと、心が躍るような気持ちになってくる。
その数時間後、第七艦隊D分艦隊所属の駆逐艦「ガーディニア九号」艦長イレーシュ・マーリア少佐から通信が入った。いつもと比べると、やけにうきうきした感じがする。
「ねえ、ドゥルベ星域で同盟軍が勝ったって聞いてる?」
「聞きましたよ。そういえば、イレーシュ少佐はビュコック提督の分艦隊所属でしたよね。どうでした?」
何気なく聞いたつもりだったのに、イレーシュ中佐はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに胸を反らし、ただでさえ大きな胸がさらに大きく見えた。
「敵の駆逐艦を一隻撃沈してさ。単独だよ、単独」
いつもの不機嫌そうな表情を保とうとするイレーシュさんの努力は、明らかに失敗していた。真っ青な瞳は喜びに輝き、朱を引いたような唇は綻びを見せ、白磁のような肌は紅潮し、初めての武勲に浮かれてるのがひと目でわかる。
六年も年上の人に面と向かっては言えないが、そういうところが本当に可愛らしいと思う。ここは徹底して持ちあげるのが親切というものだ。
「艦長になっていきなり敵艦を単独撃沈するなんて、凄いじゃないですか。普通の艦長なんて、一年で敵艦一隻を単独撃沈できるかできないかだと聞いてます。もしかして用兵の才能があるのかもしれませんね」
「そんなわけないでしょ。才能ないのは自分でもわかってるよ。戦略戦術シミュレーションでも勝率低かったしね」
「所詮シミュレーションでしょう? 本番には関係ありません」
「君が補給士官になった理由って、シミュレーションで勝てなかったせいじゃなかったっけ?」
痛いところを突かれた。しかし、ここで怯んではならない。勢いで押し切るのだ。
「それはそれ、これはこれでしょう! とにかく大事なのは本番です! シミュレーションだけ強くたって、本番で駄目なら無意味ですよ!」
「私の士官学校同期に、シミュレーションで無敵だったホーランドってのがいてさ」
「ああ、そういう人は本番で弱いんですよね! 実戦とシミュレーションが違うってことが分からなくて、自滅するタイプです! 味方との連携を無視して暴走して、自滅するところが目に見えますよ!」
「そいつ、戦うたびに武勲を立てて、今は准将閣下だけどね。君と同じ第三艦隊にいるのに知らないの?」
イレーシュ少佐の真っ青な瞳から送り込まれた凍気が、俺を凍りつかせる。
「私を喜ばせたいのはわかるけどさ。見え透いたお世辞言われると、なんか冷めちゃうよ」
「お、俺がお世辞なんか言うはずが……」
「君なら言うね。背は小さいけど、人間はもっと小さいもん」
凍結した俺は口撃によって砕け散った。
「ま、そこが可愛いんだけどさ」
イレーシュ少佐は無邪気に笑いながら追い打ちを掛けてくる。こうも的確に俺の弱点を突いてくるなんて、本当に用兵の才能があるんじゃないかと思った。
浮かれていると言えば、惑星ブレガ攻防戦で武勲を立てた第四三空挺連隊第二大隊長エーベルト・クリスチアン少佐もそうだった。剛直を絵に描いたような彼が浮かれるなど、普通は想像もつかないだろう。しかし、俺が英雄と呼ばれるような世の中では、どんなことだって起きる。
「学校で若者を指導するのも良いが、前線はもっと良いな。故郷に帰ってきたような心持ちだ」
クリスチアン少佐は酒をたっぷり飲んだ後のように上機嫌だった。
「故郷ですか?」
「うむ。自分の原点がある場所を故郷と呼んで良いのならば、戦場こそ小官の故郷であろう。戦場に立って初めて人間の素晴らしさを知った。人間は戦いの中でこそ光り輝くのだ」
「俺も光り輝けるのでしょうか?」
初陣を控えて不安に囚われていた俺は、恐る恐る聞いた。
「もちろんだ。貴官は本番に強い。三年前からそうだった。そして、これからもそうだろうと信じている」
「期待に背くわけにはいきませんね」
戦場のベテランから貰った力強い言葉に表情を引き締めた。ロボス大将、エル・ファシル義勇旅団隊員、そしてすべての同盟市民が俺に活躍を期待している。帝国軍は怖いが、みんなの期待に背くのはもっと怖い。不安を抑えつつ、エル・ファシルに着く日を船の中で待ち続けた。
一二月三日、エル・ファシル方面軍通信部は、私用通信の全面規制に踏み切った。敵の妨害電波が激しくなる中で、司令部が使用できる回線を確保するためだ。規制期間が終わるまでは、超高速通信やメールはもちろん、ネット接続もできなくなり、外部の情報は司令部が一括して全将兵の公用端末に配信する。
広域通信規制なんて、大きなテロや災害が起きた時に行われるものと思っていた。敵艦隊との距離が近くなると必ず行われる措置だと、実戦経験のある人は言ったが、実戦経験皆無の俺にはとてつもなく不安に感じられる。
一旦不安に陥ると、どうしようもなく広がっていくのが小心者というものだ。イレーシュ少佐、クリスチアン少佐、フィン・マックールの仲間などと通信できなくなったせいで、不安は際限なく膨らんでいく。
新聞を読んで知ったことだが、ドラゴニア航路とパランティア航路の重要性には大きな違いがあるらしい。ドラゴニア航路は障害物が少なく、恒星活動も安定しているため、エルゴン星系と同盟領外縁部を結ぶ交易路として利用されてきた。一方、パランティア航路は不安定な場所が多く、利用価値はさほど高くない。だから、ドラゴニア航路に辺境鎮撫軍の主力が配備されているのだそうだ。
義勇旅団が投入される惑星エル・ファシルは、重要でないパランティア航路のメインロードからやや外れに位置する。ロボス大将は「敵はエル・ファシルに大規模な艦隊基地を築いた」と言ったが、実際はかつて同盟軍星系警備隊が使用していた軍港をそのまま使ってるらしく、駐留する戦力も乏しく、エル・ファシルの戦略的価値は皆無に近かった。
自由の夜明け作戦は「エル・ファシル解放の聖戦」と言われ、ドラゴニア方面軍とエル・ファシル方面軍はほぼ同数の戦力を与えられた。しかし、こうも差があると、二つの方面軍が同格に扱われていること自体がおかしく思える。パランティア航路を担当する方面軍がエル・ファシル方面軍を名乗ってるのも変だ。裏に何かあるんじゃないかと思えてくる。
一二月六日、驚くべき事実が判明した。宇宙艦艇五〇隻、地上戦闘要員一万人程度しか駐留していないと思われたエル・ファシルに、四万隻近い宇宙艦艇と七〇万人以上の地上戦闘要員が集結していたのだ。
予想もしなかった大戦力の出現に、エル・ファシル奪還作戦は根本的な見直しを迫られた。艦艇二〇〇〇隻と地上戦闘要員一二万人が投入される予定だった作戦に、エル・ファシル方面軍の全戦力が投入されることとなった。
一二月八日、ロボス大将率いるエル・ファシル方面艦隊二七四〇〇隻と、クラーゼン上級大将率いる帝国辺境鎮撫軍主力艦隊四万隻は、惑星エル・ファシルから五〇光秒(一五〇〇万キロメートル)の宙域で相対した。
軍艦に描かれた艦隊章から、帝国軍の中央にはクラーゼン上級大将、左翼にはバルニム大将、右翼にはゼークト大将の艦隊が展開していることが分かる。いずれも艦の間の距離をやや短めに取って、戦力密度を高めている。
ロボス大将は自ら率いる第三艦隊を右翼、ヴィテルマンス中将の第一二艦隊を左翼に置いた。陣形は両艦隊とも横に薄く長く広がり、第一二艦隊がやや前方にいる。ソン中将の第五艦隊は到着が遅れており、戦力的には同盟軍が劣勢だ。
俺の乗っている揚陸艦「ワスカラン一八号」は、他の揚陸艦とともに後方の安全宙域で戦いの行方を見守る。
エル・ファシル星域会戦は、オーソドックスな砲撃戦から始まった。数十万に及ぶビームと対艦ミサイルが雨となって両軍に降り注ぎ、真っ暗な宇宙空間はまばゆい光に満たされた。
「凄いなあ」
俺は他の士官達と一緒に、士官サロンのスクリーンを通して戦いを眺める。艦隊戦はビデオで何度も見たことがあるが、リアルタイムで見るのは戦いは初めてで、あまりの迫力にすっかり見入ってしまう。
「軍艦って意外と沈まないものなんだな」
軍艦がガラス細工のように脆い前世界の戦争記録映像とは全然違う。激しい攻撃の応酬が一時間以上も続いているのに、ほとんどのビームが大型艦のエネルギー中和磁場によって受け止められ、ほとんどの対艦ミサイルが迎撃ミサイルと電磁砲によって撃ち落とされてしまい、味方も敵もほとんど打撃を被っていない。お互いに有効打を与えられないまま、同盟軍と帝国軍は少しずつ前進する。
戦艦や巡航艦の主砲は、射程が一五光秒(四五〇万キロメートル)と長く、砲火を一点に集中するのは難しいとされる。しかし、砲術運用に定評のあるゼークト大将は、第三艦隊と第一二艦隊の隙間に集中させて、両艦隊を分断することに成功した。
「まずい!」
みんなが叫びをあげた時、クラーゼン上級大将、バルニム大将、ゼークト大将が、第三艦隊と第一二艦隊の隙間に殺到してきた。両軍の距離が一気に二光秒(六〇万キロメートル)まで縮まり、近接戦闘の間合いになった。
両軍の駆逐艦が前面に展開し、宇宙母艦から単座式戦闘艇が発進する。大型艦のエネルギー中和磁場は、ビームやレーザーには強力な防護力を発揮するが、駆逐艦の電磁砲や単座式戦闘艇の機銃から放たれる実弾には無力だ。駆逐艦と単座式戦闘艇が乱戦を繰り広げ、これまで主役だった戦艦と巡航艦は近距離砲を放って援護に徹する。
「これはどういうことだ?」
俺は傍らにいた旅団長補佐のアンドリュー・フォーク義勇軍少尉に疑問をぶつけた。
「第五艦隊が到着する前に、第三艦隊と第一二艦隊を撃破してしまおうと、敵将は考えただろうと思います。損害の少ない砲戦を続ければ、いずれ第五艦隊が到着するでしょう。時間や戦力の余裕が無い時は、早めに近接戦闘を仕掛けて各個撃破を狙う。それが艦隊戦のセオリーです。スラージ・バンダレー提督が二倍の帝国軍を正面決戦で撃破した六九六年のシャンダルーア星域会戦は、その理想例です」
「ああ、なるほど。戦史の授業で習った覚えがある」
各個撃破と聞いて俺の脳裏に浮かんだのは、一世紀前のスラージ・バンダレーではなく、同時代人のラインハルト・フォン・ローエングラムだった。アスターテ星域会戦において二倍の同盟軍を各個撃破したラインハルト・フォン・ローエングラムも、いきなり近接戦闘を仕掛けたような気がする。
知識として戦例を知っていても、とっさに目前の戦いに結びつけるのは難しいものだ。やはり自分は指揮官に向いてないとつくづく思う。
密集隊形で突っ込んでくる帝国軍に対し、第三艦隊と第一二艦隊は、横一列に並んだままで隙間を埋めるように動き、電磁砲と迎撃ミサイルを浴びせかけた。実弾兵器の撃ち合いは、砲撃戦とは比較にならないほどの損害を生じさせる。やがて、同盟軍が押され始めた。
「フォーク補佐、味方が押されてるぞ? どういうことだ?」
「火力密度の違いです。敵は艦の間の距離を短く取って、短距離砲の火力を高密度で叩きつけてくる。一方、味方は艦の間の距離を広く取っているため、火力の密度も薄くなる。その違いです」
「それはまずいだろう」
「見ていてください。最後に勝つのは、ロボス閣下ですから」
フォーク旅団長補佐は、静かに力強く断言した。しかし、俺は彼の人間性を信じていても、軍略についてはまだ信じていない。砂糖とクリームでドロドロになったコーヒーを何杯も飲み干し、不安を紛らわす。
第三艦隊左端にいるアップルトン少将の第三艦隊B分艦隊と、第一二艦隊の右端にいる第一二艦隊D分艦隊のキャボット少将は、ゼークト大将を戦闘に突入してくる帝国軍の前に後退を重ね、同盟軍の艦列は中央部で大きく凹む。ルフェーブル少将の第三艦隊C分艦隊と、アル=サレム少将の第一二艦隊A分艦隊が援護に回って、崩れかけている戦線を必死で維持する。
戦況が一変したのは、戦いが始まってから六時間ほどが過ぎた頃のことだった。第三艦隊副司令官ジェフリー・パエッタ少将率いる二個分艦隊が、突如として帝国軍の背後に出現したのだ。
帝国軍が浮足立ったところに、パエッタ少将配下のウィレム・ホーランド准将が高速で突入し、一筋の刃となって帝国軍の艦列を切り裂く。後続部隊がホーランド准将の作った亀裂に火力を叩きつける。
たまりかねた帝国軍は態勢を立て直そうとするが、いつの間にか第三艦隊と第一二艦隊が上下左右から挟み込むように縦深陣を完成させており、機動を阻害する。密集して動きの取れない帝国軍は、驚くべき速度で敗北への道を転がり落ちていく。
俺はぽかんと口を開けながら、味方の逆転劇を見守っていた。
「いきなり別働隊が出てくるし、気が付くと縦深陣も完成していた。一体何が起きたんだ?」
呟きながらちらりと横を見る。心得たとばかりにフォーク旅団長補佐は説明を始めた。
「これはロボス閣下の得意戦法です」
「得意戦法?」
「はい。総戦力では互角でも、第五艦隊が後方にいるため、前線戦力では敵が優位。そして、第三艦隊と第六艦隊は薄く広く展開している。敵司令官のクラーゼン提督は積極攻勢型の用兵家で、右翼部隊のゼークト提督は帝国軍屈指の突破力を誇る猛将。これらの条件から、第五艦隊が到着する前に、味方の主力を各個撃破する誘惑に駆られたのです」
「つまり、敵は突撃したんじゃなくて、突撃させられたわけか」
「そうです。各個撃破の可能性をちらつかされた敵は、第五艦隊が到着する前に、第三艦隊と第一二艦隊を撃破しようと焦り、気が付かないうちにロボス閣下が作り上げた縦深陣に誘い込まれました。また、前方に集中しすぎて、パエッタ提督の別働隊への注意が逸れたのです。陽動、迂回、包囲、奇襲。機動力を重視するロボス流用兵のすべてが詰まった戦いですよ」
「凄いなあ、まるでヤン……、いやブルース・アッシュビーみたいだ」
ヤン・ウェンリーの名前を口に出しかけて、慌てて言い直した。前の世界では「ヤン・ウェンリーみたいだ」と言えば用兵家に対する最高の賛辞になるが、この世界ではまだそうではない。しかし、あの不敗の魔術師に例えたくなるほど、ロボス大将の用兵は凄かった。
「凄いでしょう? ロボス閣下は同盟軍最高の名将ですよ」
フォーク旅団長補佐の目はいつにもましてキラキラと輝き、ロボス大将がいかに凄い提督か、自分がどれほど彼を尊敬しているかを延々と語り続けた。周囲の士官達は「またか」と言いたげな顔で苦笑する。何というか、微笑ましい光景だ。
ロボス大将の用兵、フォーク旅団長補佐の人柄は、いずれも前の世界と今の世界が違うことを教えてくれる。
別働隊を率いたジェフリー・パエッタ少将は、『ヤン・ウェンリー元帥の生涯』や『レジェンド・オブ・ザ・ギャラクティック・ヒーローズ』では、ヤンの真価を見抜けなかった愚将と評される人物だが、この戦いでは殊勲者だ。彼も直に接すると優れた提督なのかもしれないと思った。
四方向から攻撃を受けた帝国軍は潰乱状態に陥り、命からがら逃げ出したクラーゼン上級大将、ゼークト大将、バルニム大将らは、後方から急進してきた無傷の第五艦隊から猛追撃を受けた。帝国辺境鎮撫軍の艦隊主力はこの会戦で壊滅して、惑星エル・ファシル攻略の準備は完全に整ったのであった。
会戦翌日の一二月九日から、惑星エル・ファシル攻防戦が始まった。エル・ファシルの衛星軌道上に展開した第三艦隊と第六艦隊の前に、帝国軍の軌道戦闘艇一万隻が立ちはだかる。軌道戦闘艇というのは、単座式戦闘艇と駆逐艦の中間に位置する小型戦闘艇で、恒星間航行能力を持たず、専ら惑星宙域での戦闘に用いられる艦艇だ。
二時間の戦闘の末に、軌道戦闘艇部隊を壊滅させた同盟軍は、三万キロメートルの超高度からビーム砲やミサイルを放ち、地上の敵防空基地を丹念に潰していった。
防空基地が沈黙したら、宇宙軍陸戦隊の出番だ。第三陸戦隊と第一二陸戦隊の強襲揚陸艦一二〇〇隻は、大気圏内戦闘機と宙陸両用戦闘艇の援護を受けながら、エル・ファシル西大陸にある五つの空港めがけて降下していった。敵は都市が集中するエル・ファシル東大陸に集まり、未開の山岳地帯が広がる西大陸は手薄と思われていたのだ。
予想通り、帝国軍はほとんど空港に兵を置いていなかった。陸戦隊はあっという間に空港を制圧し、エル・ファシル奪還の足がかりを築いた。
俺はセミヨール空港に降り立ち、装甲服を着てビームライフル片手に戦場を走り回った。だが、一〇〇人近い陸戦隊の精鋭に守られていたため、ほとんど何もしないうちに、生まれて初めての実戦が終わってしまった。
「たった今、エリヤ・フィリップス義勇旅団長が、三年ぶりにエル・ファシルに足を踏み入れました! エル・ファシルの英雄が帰ってきたのです!」
陸戦隊に囲まれながら空港ターミナルビルに足を踏み入れた瞬間、従軍記者がどっと押し寄せてきた。テレビスターのような扱いに辟易しながらも、装甲服のヘルメットを脱いで笑顔で応じる。
その後、ビル内に置かれた第三艦隊陸戦集団臨時司令部で記者会見に臨み、義勇旅団首席幕僚ビロライネン義勇軍中佐に教えられた通りの受け答えをした。同席したマリエット・ブーブリル副旅団長は、いつものように愛国婦人を完璧に演じる。指揮をとるのはビロライネン首席幕僚の仕事、演技をするのが俺とブーブリル副旅団長の仕事だ
「帝国軍など一人だろうが七〇万人だろうが同じだ! 一捻りにしてやる!」
第三陸戦隊副司令官エドリック・マクライアム宇宙軍准将は、「ファイティング・エド」の異名に恥じない大言壮語ぶりで、記者達を喜ばせた。
それにしても、敵地に降下して最初にすることがマスコミ向けのアピールなんて、まともな軍隊と言えるのだろうか? 演出ありきの戦争に不安を覚えずにはいられない。
やがて、第五艦隊配下の第五陸戦隊も西大陸に降下してきた。第三陸戦隊の第三陸戦軍団とエル・ファシル義勇旅団は大陸東北部、第三陸戦隊の第一五陸戦軍団は大陸中央部、第五陸戦隊は大陸西部、第一二陸戦隊は大陸東南部に進軍した。
陸戦隊の装甲車両と大気圏内航空機が西大陸の帝国軍を追い散らして、安全地帯を確保すると、第四地上軍と第五地上軍が輸送船に乗って降下してきた。陸上戦力・航空戦力・水上戦力をすべて備えた地上軍の参入によって、エル・ファシル攻防戦は佳境に入っていく。
西大陸を制圧した同盟軍は、ロヴェール地上軍少将の第五地上軍別働隊と、マディソン宇宙軍少将の第一二陸戦隊別働隊を抑えに残すと、海を渡った。
エル・ファシル方面軍副司令官ケネス・ペイン地上軍中将率いる二二〇万の大軍は、帝国軍水上艦隊の抵抗を排除し、水際で上陸を阻止しようとした陸上部隊も粉砕し、東大陸への上陸を成功させた。
しかし、同盟軍の快進撃は、アル・ガザール州とラムシェール州で阻止された。二〇〇を越える防御陣地は進軍路を押さえるように配置されていて、迂回は不可能。正面から攻撃すれば、敵の火力の網に捉えられてる。陣地の主要部分は地下にあるため、火砲やミサイルを叩き込んでも、有効打を与えられない。
陸上からの突破を困難と見た同盟軍は、海と空から帝国軍の後方を攻撃して、指揮通信網の分断を図ったが、敵部隊は巧妙に隠蔽された地下陣地に隠れ、地下道を使って移動していたため、ほとんど効果を与えられなかった。しかも、捕虜から得た情報によると、主要部隊の司令部はすべて地下に築かれており、陸上戦力を送り込まなければ攻略は不可能だという。
帝国軍のエル・ファシル防衛軍司令官ミヒャエル・ジギスムント・フォン・カイザーリング宇宙軍中将が築きあげた防衛線の前に、同盟軍は空しく人命と時間を空費した。
「何をグズグズしているのだ!」
市民は圧倒的な戦力を持つ同盟軍の苦戦に苛立ち、一刻も早く防衛線を突破するよう求めた。ロボス大将は大勢のマスコミを同行させて、エル・ファシル攻防戦が聖戦であるという認識を広めようと努力したが、それが苦戦ぶりを知らしめるという皮肉な結果を産み、非難の声を大きくしたのであった。
批判に焦ったロボス大将は、衛星軌道上の第三艦隊に、アル・ガザール州とラムシェール州を砲撃するよう命じた。火砲やミサイルでは傷ひとつ付けられない地下陣地も、二〇光秒(六〇〇万キロメートル)の射程を誇る戦艦の主砲の前には無力だ。地図の書き換えが必要になるであろうと思われるほどの砲撃によって、半数以上の陣地が破壊され、残る陣地も著しく弱体化した。
年が明けて一週間以上過ぎた一月八日に、ようやく防衛線を突破したものの、苦戦はなおも続いた。カッサラ州に差し掛かったところで、アル・ガザール=ラムシェールの防衛線に倍する規模の防衛線が立ちはだかったのだ。攻撃はことごとく跳ね返され、死傷者は増える一方だった。
ドラゴニア方面軍のシトレ大将は、年末までに帝国軍をことごとく駆逐し、現在は帰還の途に着いている。それと比較すると、ロボス大将とペイン中将の手際は悪すぎるように見えて、市民は不快感を示した。
戦局が悪化するにつれ、大勢の陸戦隊員に守られながら戦場に顔を出して愛国心をアピールする義勇旅団は、他の部隊から反感を向けられるようになった。司令部からエル・ファシル方面軍の全将兵に毎日配信される『エル・ファシル方面軍ニュース』での義勇旅団の扱いも日に日に小さくなっていく。
「フィリップス旅団長、ブーブリル副旅団長、君達二人にはもう少し頑張って欲しいんだがね」
第三陸戦隊参謀長アル=サフラビ准将に呼び出されてそんなことを言われた翌日から、義勇旅団は危険な場所に配属され、護衛の陸戦隊員は減らされ、俺とブーブリル副旅団長は先頭に立たされた。
「偉いさんは殉教者を欲しがってるんじゃないか? 聖戦には犠牲がつきものだからな」
ある戦場で陸戦隊員がそう話してるのを耳に挟んだ時、背筋が凍りついた。義勇旅団が再び注目を集めるには、彼らの言う通り、俺かブーブリルを戦死させて殉教者にするのが手っ取り早いだろう。ロボス大将やペイン中将がそこまで考えるとは思いたくないが、マスコミ受けを気にするところを見ていると、信じることもできない。
ふとフィン・マックールが恋しくなった。あの宇宙母艦にいた時は難しいことを考える必要もなかったし、職場のみんなも優しかった。早く戦いを終えて、フィン・マックールに戻りたいと、心の底から願った。
エル・ファシル方面軍の苦戦に業を煮やしたアンブリス総司令官は、作戦を終えたドラゴニア方面軍や地方駐屯部隊から戦力を集めて、エル・ファシルに送った。
これによって、四五〇万まで増強されたエル・ファシル方面軍は、エル・ファシル全域で大攻勢に打って出た。小隊には中隊、中隊には大隊、大隊には連隊、連隊には旅団、旅団には師団をぶつけて、数の力で帝国軍を押し潰そうとしたのだ。
聖戦の名のもとに、エル・ファシル全土で血みどろの戦いが繰り広げられた。一軒のビルや一本の道路を確保するために、両軍は死体の山を積み上げた。
東大陸中南部のニヤラ市では、「一メートル進むたびに味方の死体が一〇体増えた」と言われるほどの激戦が繰り広げられ、一月一七日から二四日までの一週間で二万人の死者を出した。兵員の八割が戦死するという恐るべき損害を被った連隊もあった。
東大陸中央部のハルファ市郊外の丘陵に築かれた帝国軍防御陣地は、あまりに多くの同盟兵を死に追いやったために、「屠殺場」と呼ばれた。
西大陸の山岳地帯でゲリラ戦を展開する帝国地上軍の猟兵部隊は、その残虐さによって、同盟軍の恐怖の的となった。
血まみれの激戦は多数の英雄を産んだ。第一二陸戦隊司令官イーストン・ムーア宇宙軍少将は、銃撃の雨を恐れずに陣頭指揮を取ることで、兵士から半神のように崇敬された。第三陸戦隊の陸戦大隊長フョードル・パトリチェフ宇宙軍少佐は、撤退中に取り残された部下を単身で救出して、その勇気と思いやりから、すべての陸戦隊員に「フョードル兄貴」と呼ばれた。ルイジ・ヴェリッシモ宇宙軍准尉は、敵陣単身爆破や死亡宣告からの復活などの奇跡を幾度も起こし、「超人」と称えられた。
その他には、多数の戦闘車両を破壊した「戦車殺し」ランドン・フォーブズ地上軍大尉、一〇〇人以上の敵を狙撃で葬った「死の天使」アマラ・ムルティ地上軍伍長、敵の歩兵小隊を一人で撃破した「黒い暴風」ルイ・マシュンゴ地上軍軍曹なども有名だ。
帝国軍にも英雄は多い。開戦から同盟軍を苦しめ続ける装甲擲弾兵小隊「不滅の三〇人」、同盟の戦闘機を五〇機以上も撃墜した大気圏内戦闘機のパイロット「人食い虎」、二つの体を一つの意思で動かしているかのようなコンビネーションで恐れられる二人組の勇士「双子の悪夢」などが、同盟軍に恐れられた帝国軍の英雄だった。
エル・ファシル義勇旅団は、第三艦隊陸戦隊の指揮下で各地を転戦し、戦うたびに大きな損害を被った。二月に入った頃には、総兵力五一四八名のうち七七一名が戦死し、二一五三名が負傷し、聖戦の殉教者とみなされるようになり、再び人気が盛り上がったのである。
俺はエル・ファシル方面軍司令部の求めに応じて最前線に立ち、陸戦隊員と一緒に匍匐前進し、銃をとって銃弾やビームが飛び交う中を駆け回り、英雄らしい映像をたくさん提供できたが、戦功は立てられなかった。マラカルの戦いでは「双子の悪夢」に遭遇し、物陰に隠れながらやり過ごしたほどだ。それでもほとんど傷を負うこともなく生き延びたのは、幸運の賜物であろう。
闘将カイザーリング中将の指揮のもとで奮戦した帝国軍も、二月に入ってからは疲弊の色が見え始め、戦線維持も難しくなった。多くの部隊が陣地を放棄して、道路や橋を破壊しながら後退していった。山や森林に隠れてゲリラ戦を行う部隊もいた。ガザーリー市の帝国軍は、ダムを爆破して洪水を起こし、同盟軍の足止めをはかった。しかし、これらの試みは徒労に終わり、二月末には帝国軍の戦力は底をついた。
三月二日、マクライアム准将率いる第三陸戦隊と義勇旅団は、帝国軍の総司令部があるエル・ファシル市を包囲した。市内に立てこもる帝国軍一万は勇敢に戦ったものの、一〇万近い地上戦力相手では勝ち目はなく、三時間の戦闘の末に帝国軍は壊滅した。
三年ぶりのエル・ファシル市は、敵味方の砲撃によって破壊しつくされていた。勝者として行進しているはずなのに、心の中は敗者のように惨めだ。これからとても気の重い任務が待っている。
「準備が整いました」
ビロライネン首席幕僚が耳元でささやく。俺は無言で頷くと、前方に置かれた野外用のプロンプターに視線を向ける。そして、画面に映し出された文字を帝国語で読み上げた。
「自由惑星同盟軍エル・ファシル義勇旅団長エリヤ・フィリップス義勇軍大佐より、銀河帝国軍エル・ファシル防衛司令官ミヒャエル・ジギスムント・フォン・カイザーリング宇宙軍中将閣下に申し上げます。小官は軍人として、あなたの勇戦に心の底より敬意を払うものであります。しかしながら、今やあなたは我が軍の完全なる包囲下にあり、食料も弾薬も尽き果てました。これ以上の抗戦は不可能でしょう。部下の命を救うことを考えてみてはいかがでしょうか? 二時間以内にご返答ください。賢明な判断を期待しております」
半壊したエル・ファシル星系政庁庁舎に立てこもる帝国軍司令官カイザーリング中将に対する降伏勧告。それが俺に与えられた任務だった。ビロライネン首席幕僚が作った文面をそのまま読み上げるだけの仕事だが、エル・ファシル義勇旅団長という肩書きが重要なのだろう。ロボス大将は最後の最後で、「エル・ファシル奪還の主役は義勇旅団」という建前を思い出したらしい。
カイザーリング中将がどのような選択をしようとも、ここで戦いが終わることは確定している。作られた英雄が演じるにふさわしい茶番といえよう。
いつになく皮肉っぽい気持ちになっていると、ボロボロになった庁舎正面の巨大スクリーンが明るくなり、帝国軍の軍服を身にまとった初老の人物が映し出される。端整な顔に美しい髭を生やしていて、「老紳士」という言葉を体現するかのような人物だ。
「これがあの闘将カイザーリングか」
「意外だな。屈強な偉丈夫とばかり思っていたが」
陸戦隊員や義勇兵のささやきが鎮まり返った広場をざわつかせる。カイザーリング中将が口を開くと、ささやきは収まった。
「銀河帝国軍エル・ファシル防衛司令官ミヒャエル・ジギスムント・フォン・カイザーリング宇宙軍中将です。敗軍の将にお心遣いをいただき、まことにかたじけなく思います。しかしながら、皇帝陛下より賜った勅命を全うできなかった以上、一命をもって謝する以外の途は、小官には選べません。あなたの配慮はありがたく思いますが、帝国軍人として受け入れることはできかねると申し上げる次第です」
カイザーリング中将は、容貌にふさわしいきれいな同盟語で拒絶の意を示した。静かではあるが毅然とした態度で降伏を拒絶する敵将の姿に、胸を打たれずにはいられない。彼は古風だが格調のある騎士だ。俺なんかが引導を渡していいような人では無い。
やがて、スクリーンの中のカイザーリング中将がどんどん小さくなり、部屋全体が映しだされる。壁には現皇帝フリードリヒ四世と初代皇帝ルドルフの大きな肖像画が掲げられ、カイザーリング中将の周囲には、部下とおぼしき軍服姿の人間が一〇人ほど集まっていた。その一人はバイオリンを手にしている。
「皇帝陛下に敬礼!」
カイザーリング中将は張りのある声で叫び、肖像画に向かって敬礼した。部下も一糸乱れぬ敬礼を肖像画に捧げる。これほど整然とした敬礼は見るのは初めてだった。死を目前にした彼らが平常心を保っていることに感動を覚える。
「国歌斉唱!」
その掛け声を合図に、バイオリンを持っていた人物が演奏を始めた。荘厳な帝国国歌の旋律が流れ、全員が演奏に合わせて歌い出す。
「皇帝陛下 神聖にして侵すべからざる我らが主君
皇帝陛下 万人が敬愛を捧げる我らが主君
鋼の如き意思の力 宇宙に満ち満ちる威光
万世に誉れ高き御方」
朗々たる声、荘厳な旋律、晴れ晴れとした表情。そのすべてが美しかった。憎むべきゴールデンバウムの末裔を称える歌だというのに、涙がこみ上げてくる。
「讃えよ 偉大なる皇帝陛下の御名を
偉大なる千年帝国の主
祖先より受け継ぐ貴き血
帝国よ 永遠なれ
我等が誇り 銀河帝国」
歌詞はどうでも良かった。心を一つにして歌う彼らの姿が胸を打つ。こんな歌で泣くのはまずいと思い、必死に涙をこらえた。
「ジーク・カイザー! ジーク・ライヒ!」
全員が万歳を叫んだ瞬間、スクリーンの中が閃光でいっぱいになった。同時に大きな爆音が辺り一帯に轟き、政庁庁舎は炎に包まれた。自爆を遂げたのである。
もはや涙をこらえることはできなかった。爆炎の中に消えていった闘将と、マル・アデッタで散ったアレクサンドル・ビュコックの姿が重なった。殉じた信念は正反対だが、信念に殉じる姿勢においては同じ世界の住人である。俺のような小物には、決して辿りつけない世界だ。
自然に右手がすっと上がり、敬礼のポーズを作った。周囲の将兵もごく自然に敬礼のポーズになる。
「総員、勇敢なる敵将に敬礼!」
静まり返った広場に俺の声が響き渡る。なぜそのような命令を出したのかはわからないが、そうするのが自然であるように思われた。これが俺が義勇旅団長として自分の意思で発した最初で最後の命令だった。
宇宙暦七九二年三月二日一四時二一分、帝国軍エル・ファシル防衛軍司令官ミヒャエル・ジギスムント・フォン・カイザーリング宇宙軍中将の壮烈な自爆とともに、エル・ファシル攻防戦は終結した。
帝国国歌の歌詞は自作です。それっぽいものをでっち上げてみました。