Franz K Endo.com

自分と親父と兄の間では母親のことは「アイツ」と呼んでいた。


母親が蒸発してしばらくした後、家族でTVを観ながら食事をしたら、たまたま流れていたドラマかなんかで、登場人物が自分の母親のことを「アイツ」と形容したことが由来だったと思う。


離婚してからしばらくは、プログラムの一環として定期的に母親と会っていたが、親父が自分と兄を親父サイドに確実に置くために、兄に「もうママとは会いません。なぜなら..」云々の台詞を覚えさせて、ある日横浜で会った時に、兄はそれをそのまま母親に告げた。


たしか横浜駅かなんかの長い連絡通路だった。人混みを縫って自分と兄は追いかけてくる母から逃げた。


なんと言ってたかは覚えていないが、母は何か叫んでいた。その長い連絡通路と、遠ざかって行く母親の顔だけはよく覚えている。


親権争いの裁判では、母親はDVの証拠として頬などのアザのネガを提出した。
父親は捏造された、完全なる嘘だと言った。


親父の言ってることは明らかに嘘だった。


親父は食卓ではよく母の顔に向かってグラスを投げたり、顔を引っ叩いてた。
親が離婚する最後の方は特に親父の母親に対する暴力は酷かった。
お互いがヒステリックになり、怒鳴り声と叫び声の応酬が永遠と続き、自分と兄は食卓の端で泣き叫けぶか、ただそれを傍観した。


何回か兄が親父を止めようと立ちはだかってが、逆に親父の暴力の犠牲になっていた。


さらに親父はその画像を逆手に利用し、
「お前らの母親はこういう嘘を平気でつく女だ！二度と会おうと思うな」
と怒鳴り散らし、その画像を自分の部屋にビラのように撒いた。壁にもその画像がたくさん貼られた。


親父からは一方的に母親に対するマイナスイメージをひたすらに植え込まれた。


母親は精神障害者で、障害者手帳を持っているという話を親父から聞かされた。


昔から自分が人からweirdo扱いされて「頭がおかしい」と多々言われるのも、秒単位で自分の感情が急激に変化するのも、人と関わる中で根本的な何か違ってるのも、自分は障害者の息子だからなのかとすごく悩んだ時期があった。


そのことを話したら皆に避けられると思って誰にも話したことはなかった。


後に親父は親父サイドに引き込むために色々なバイアスをかけたことを認めている。だからそれが嘘の１つだったと信じたい


それでも、そのことが自分の頭の中でどうしても引っかかるのは、当時の母親はどうしてもその気質があるのを自分が感じていたからだった。


親父がヒステリックで頭おかしいのは身にしみてわかっていたが、母親が同じくヒステリックだったのも事実だった。


ささいなことで突然甲高い声で騒ぎ出したり、兄を隣町のスーパーに置き去りにしたり、兄の足を車で轢いたり、聞いた話でしかないが、兄を全裸のまま外へ追い出したりしていたらしい。ママ友相手にアムウェイのマルチ商談なんかもしていた。


のちに母はマヤ暦を用いた宗教(?)チックなものを開いていたし、中学の時にfacebookを特定して連絡を取ってみたら、
「携帯電話の電磁波は脳に悪影響を..」
なんてコメントが来たくらいだ。




（2019 6/1）諸事情で一部の文章を削除しています。



そういったバックグラウンドも含め、案の定、親父の目論見通りに自分は母親を恐怖の対象として認識するようになった。



裁判は親父が勝った。
なぜか養育費は母親が払うことになっていた。


(養育費は普通は経済力のない母親サイドが子を養うために経済力のある男の方に請求するもの(らしい))


詳しいことは省くが、親父は裁判に勝つためにあらゆるものを利用した。


それが小学2年の時だった。



親父からの暴力が常にあった。
親父は気に入らないことがあると永遠と自分の顔をビンタし、玄関か家の外で正座をして数日を過ごすことが日常だった。


その当時は、悪仲間たちと空き地に放火したり、人の家に花火を打ち込んだり、人の車(R-34だったと思う)に石を投げてフロントガラスを割ったり、担任をいじめて一年で3人入れ替えさせたり、散歩中のおばさんをエアガンで銃撃したり、人から物や金を盗んで万引きもして警察にしょっぴかれたり、非行ばかり繰り返していた。妊娠した担任の先生の子供を流産させようの会なんてのも作っていた。（実際には何もしていないです。あと愛知の事件とは一切関係ないです。）


(警察にしょっぴかれてからは更生しました)



親父は出張ばかりで、「うちは一馬力だからお前も家事を手伝え」が口癖だった。


小6〜から中学校、高校の初めは、学校が終わったら即帰宅であらゆる家事をやらされた。外出は許されていなかったから友達とはもちろん遊びにいけなかった。


うちの中では権力と金のシステムが出来上がっていて、家族の間での全ての関係の裏では金が動いていた。


兄はゴマスリが上手くて親父に加担する面が強く、兄は親父から金をもらって、学校の成績や家族への態度が最悪だった自分の監督になった。自分の一挙一動を監視し、教材を用意されて勉強プログラムみたいなのも組まれた。


自分が何か少しでも問題を起こすと、それはすぐに兄を通じて親父に知らされ、親父からあらゆる手段でボコられた。もちろん自分と兄の関係にも金が絡んでいた。「嫌いなものを食べてくれたら100円やる」とか、「この家事俺の代わりにやってくれたら500円やる」といった具合だ。


その逆もあって、兄に対して何かやらかしたら(やらかしてなくても)、「はい千円払え」と金を巻き上げられた。カツアゲみたいなものだ。カッターを首に突きつけられたこともあった。そのまた裏返しで、兄の弱みを握って金を巻き返したり、ある程度幅を効かせることもできた。それだけのために暇さえあれば兄の部屋に忍び込んであらゆる情報を集めてた。


親父の命令以外と金以外で家族が動くことはなかった。


兄のことを親父に飼いならされた犬だと思っていたが、自分より兄の方が確実に苦労していた。兄は自分よりは権力があったし、親父ともまあ擦り合わせは上手くいっていたが、それでも親父の絶対的な権力に勝てるわけではなく、親父のメンタルブレイクダウンの餌食になっていたし、長男としての責任も異常なほどに課せられていた。


自分のせいで兄が犠牲になったこともたくさんあるし、親父から受けたストレスの腹いせは、自分の金を巻き上げたりいきなり蹴ってきたり、よく自分にぶちまけてきたが、そのことを考えると妥当ではあった。


兄との関係は今でもよく分からない。
親父の犬として自分を痛めつけて来たことも多いし、共に親父の暴力の犠牲になった結束感みたいなのもある。真冬に家を締め出されて、部屋の物の全部を庭に投げすてられて、衣服をたくさん集めて寒さをしのいだり、親父に秘密で、電車ほぼタダ乗りで一緒に東京まで出かけたこともある。でも兄とは会話することは(今でも)ほとんどなかった。




ネットもないし友達もいないし遊ぶおもちゃもなかった自分は、本や図鑑を読むか、電子辞書のコンテンツの虫・鳥の鳴き声とか、クラシック音楽ばかり聴いて物思いにふけった。親父がいない間に部屋に忍び込んでカセットをパクって、それをずっと聴いてたりしてた。テレビはあったから、親父が寝たり外出してる間に唯一の娯楽としてみてた。BEST HIT USAとか木曜洋画劇場とか、そんなのばかり見てた。


小学校の時から存在はしていたけど、その時期から所謂イマジナリーフレンドってやつがたくさんできるようになって、頭の中で想像の友達と会話したり遊んだり、現実が辛い分、頭の中と夢の中で自分の世界を作り上げた。今作ってるアニメの想像グセはそこから来ているかもしれない。


召喚する回数はかなり減ったが、今でもイマジナリーフレンドはいるし、良くも悪くも友達ができない理由の１つはイマジナリーフレンドの方が面白いし都合が良いというのがある。金もかからないし。


最後の方は親父の財布から金を盗んでそのお金でWi-Fiルータやパソコンを買ってインターネットの世界を楽しんだり、自分でフランス語の教材を買ったり、パソコンの部品とかを転売してなんとか金を稼いだ。


親父の性格は予測ができないくらいに変化が激しく、あれほどの情緒の不安定を自分は見たことがなかった


友達ができたとしても、その話をすると
「そんなバカとはつるむな」と怒鳴られるし、自分の家の環境を心配してくれた友達が何かモノをくれても、親父はそれを叩き壊して友達の元へ返してくるように言った。


何かあるたびに
「それはアイツの血だ！」
「お前は怠け者でアイツと同じ！人間じゃな
い！」


そんなことを永遠と言われ続けた


冷蔵庫の食べ物を床に投げつけて掃除させられ、ある程度片付くとまた床に食べ物を投げつけて、それが一晩続くことが何回もあった。雑巾についた卵と牛乳の混ざった臭いを覚えている。


定期的に部屋の文字通り全てのものを捨てるか庭に投げ捨てられた。


地元の夏祭りで皆の目の前で怒鳴り散らされてボコられてゴミ箱を漁らされた。


早朝からぶっ叩かれて血を吐きながら校外学習に行ったこともあった。


話したらキリないので先に行きます


何度も家出を繰り返し、家を締め出されてる深夜は大体警察に追われた。
でも結局は家に帰るしかなかったし、警察に捕まるわけにもいかなかった。


警察に追いかけられてる時に、なぜ自分は逃げないといけないのだろうと考えた。


締め出されて苦しいのはこっちだし、そもそも自分はなにも悪いことはしていなかった。


警察に事情を話そうかと考えたが、親父がきっとその後報復してくるのを考えると、逃げ切る方が賢明な判断だった。





兄はあの経験から金が全てだということを学んだ。どこから仕入れたか分からない札束を毎晩数えて「金が全てなんだよ」と自分にいってきたことがあった。兄は賭け事が好きで麻雀や競馬にハマっていた。ただ優秀な方だったので、それで金を儲けていたみたいだし、今ではみんなが知ってる一流の企業に勤めてる。


一方で自分は金が全てだけど金が全てじゃないという考えがとても強くなった。金がないと生きていけないが、金がない中で自分の楽しさを見つけた分、金は必要ないし、所有物も所詮は消耗品で無くなるものだ思った。
そして世の中の大体のことは全部くだらないと思うようになった。


ただ、その発想が自分の社会不適合を悪い方に加速させた気もする。


理由もなく暴力を振るわれることは高校に入ってからかなり減ったし、ストレスから胃腸と膀胱が神経性の病気になって精神が病んでいたが、高校は楽しい生活を送っていた。


何もできないのに有名になりたいという気持ちが空回りしていたし、学校にいる意味がわからなくなって、定期テストをサボって家出して野宿したりしてたけど、友達はたくさんできたし、音楽や映画の嗜好が似た連中がたくさんいたから、夏休みは学校のグラウンドの真ん中にビーチパラソルを建てて、部室からパクってきたラジカセなんかで音楽をかけてあのバンドはどうだこうだなんて話をした。


あの環境は普通だと思ってたけど、東京に出てからとても恵まれてたと思うし、自分の今のパーソナリティを大きく作ったひとつだと思っている。



そんなこんなで大学生になった。
もともと高校を出たら地元でドカタしてバックパックする予定だった。もちろん親父は許さなかったし、あらゆる手段で自分を見下して痛めつけてきた。「MARCH以下は人間じゃない」「首から下で生きてる奴は人間じゃない」が親父の口癖だった。


車に乗っていて道路工事の現場を通り過ぎる時、スピードを落として道路工夫を指差して
「ああいう首から下で生きてる人間にはなるな」とよく言っていた。(割とこう言う親は多いと思う)


学者やら天皇の勲章もらっただ、朝日ジャーナルの編集長だ電通だ、学歴もステータス全員が上層(笑)らしい分、親父的には高卒のドカタ志望はとても気に食わなかったらしい。


色々やられて頭にキた自分は、親父と兄と同じ大学を受けた。受かったから入ったものの、親父を見返すために入った自分は、入った後の学校に行き続ける理由がなかった。


親父の情緒不安定は続いていたので家を出た。友人の家に家賃割り勘で転がり込んだ。


その月に財布を盗まれてキャッシュカードと全財産がなくなった。


とにかく金がなかった。
日雇いの仕事をしながら学校に通って、
友達から借金して食べるものはバナナか豆腐くらいだった。親父からは勘当を告げる手紙がきていた。(親父も祖父に勘当されているから、親父は勘当に対して相当狂うような思い入れがある)。


借金を返した後、生活スタイルが合わずに自分は友達の家を出た。もちろん帰る場所はなかったから、荷物をほとんど捨てて、バック１つに弾けないギターを背負って渋谷を彷徨った。寝泊まりできる場所はあまりなかった。当時のバイト先はたまたま緩かったので、鍵を入手して、ビルの警備員の監視の目を避けながら、ゴキブリだらけのバックヤードか売り場に寝袋を敷いて寝て、毎日同じ服で学校に通った。11月頃だった。


最初は楽しんでいたが、終わりが見えない生活に絶望的になってきた。
もちろん部屋を借りたかったが、金銭的にも他の事情でも、この生活を続けることが皮肉にも一番ベストだった。


住み込みの新聞配達の奨学制度にも期待したが、フレキシブルな感じではなかったので、履修とかぶってたら仕事はできないという状況だった。


当時のバイト先は学校から歩いて３分くらいのところだった。
昔は繁盛していたらしいが、月の家賃が100万円もするような場所にもかかわらず、当時は1日に5人くればめでたいようなところだった。アパレルなのかアクセサリーショップかもいまいちわからず、中国から安く仕入れたパチモンの流行りものを売っている店だった。
服を売っているにもかかわらず、試着室がないようなところだった。


時給は高くなく、空いてる時間を文字通りフルで入っても稼げたのは月に8万程度だった。
当時、本社から店に来ていたセオドアバックウェルみたいな人には「金が欲しいなら居酒屋でも行けや」と言われたし、客観的に見れば合理的ではなかったが、やはりここで働くのがベストだった。


誰も来ない店に一人で店番というのはとても楽だった。
好きな音楽をかけ、本を読んだり、宿題や押し付けられたグループワークの課題をやった。

店の前の通りを歩いてゆく人間がどんな生活をしているのかを想像した。


高校の時に家出をして東静岡駅の近くで野宿をした時に、向かいの通りにあった高級マンションを出入りする人間をみて生活を想像した時の感情と似ていた。上手く説明できないが、映画を見ているような感覚に近いと思う。


朝、店が開店する１時間ほど前には店を出て近くの蕎麦屋で安い朝食を喰らい、日中は授業に出て夕方はバイトをし、閉店後は近所の銭湯で洗濯をした。


大学にシャワーがあるので、しかるべきタイミングで利用した。


今では良い思い出だが、当時はかなり精神がすり減っていた。
今でも唯一仲の良い高校の親友が店を訪ねて来たが、会話はおろか、目線すら交わせないような状態だったのを覚えている。


そんな生活がしばらく続き、親父から「兄の家に行け」とLINEがきた。もちろん行かなかったが、バイト先の人間に寝泊まりしているのがやんわりバレていたし、当時は本社の人間も頻繁に店にきていたので、彼らはバックヤードの自分の荷物をみて不審に思っていた。


有り金を叩いてネカフェ生活が始まった。
オレンジジュースのボタンを押したら真水が出てくるようなネカフェだったが、インターネットが使えるのは良かったし、人から逃げ隠れしなくていいのは快適だった。
その日OasisのGas Panicを聴いたのをとてもよく覚えている。



しばらくしてもちろん金は無くなったから兄の家へ行った。兄の部屋は廃屋状態で、部屋全体に粗大ゴミ可燃ゴミ不燃ゴミの山ができており、電気と水道も止まっていた。ゴキブリがたくさんいた。 しばらくはそこに寝泊まりした。アイドルかってくらい可愛い兄の彼女が、自分が真横にいるのも気にせず兄に手コキしてるのを横目に自分は部屋でも寝袋で寝た。


その日を生きることしか考えていなかった


ちょうど奨学金の募集の時期だったので応募した。その時まではそれなりに頑張っていたので借りることができた。その金でやっと家を借りることができた。


その日から学校に行くのをやめた。
これ以上は無理だというのが全てだった。
自分はもう十分辛い思いをしたからこれ以上苦労したくない。楽をする権利があると思っていた。


バイト先が倒産したが、家賃が3万で奨学金の範囲で余裕で生活できるのもあって新しいバイトはもちろん探さなかった。


そこから1年はずっと虚無が続いていた。
やりたいことなんかもちろんなかった
働きたくなんかもなかった。
ただ起きて多摩川でタバコ吸って酒を飲んで音楽を聴いて射精して寝てを繰り返した。


人生で人が消費する活力と精神を20歳で全て使い果たした気分だった。


しばらくして、好きな先生のフランス映画の授業には1個だけいくようにはなり、当時いた音楽サークルの活動にもでたが、基本的にはずっと家でグダっていた。


その頃にたまたま作曲を始め、それ以降はずっとそれにのめり込んでいた。起きてる時間は文字通りずっと曲を作っていた。


当時の自分はとても孤独と虚無を感じていた。人生とはとても絶望的なものだと思っていた。死ぬ勇気はなかったがはやく人生は終わらせたかった。



母親もおらず、全てを否定されてずっと拳で育てられた身としては、とりあえず誰かからの愛情が欲しかった。



ただ恋愛に奥手なのもあったし、ふつうに相手の好みではなかったから当時好きだったな人には秒で振られてずっと多摩川で泥酔して泣き叫んでいた。


誰にも好かれず、社会にも適合できない自分に絶望を感じていた。


夏休みに学校で一人で酒を飲んで学生課に連行された。学生課の尋問官は「1人で飲んだんですか」と呆れていた。


惰性で転部試験を受けてもちろん落ちた。
結果的に留年することになり、奨学金も止まった。


その頃が1番人生で荒れていたと思う
いろんな人間から「幸せになってほしい」
と言われたが、幸せが何かすら理解できていなかった。


髪の色が金になり、パーカーにスケボー姿で街を歩き回り、キャッチにツバを吐いたり酔った勢いで通りすがりの人間に暴言を吐いたりしてた。ひたすら酒場で女を口説いていた。


そんな自分に転機が訪れた。
ひょんなことから母親と13年ぶりに再会することになったり、自分のことをよく理解してくる彼女ができたり、2年目の2年生の年は
とても幸せな年だったと思う


頑張ろうと思ったし、頑張った。
真面目に授業も出たしバイトも始めたし、
留年した分も自腹を切った。親父はなぜか月3万ペースで返済しろといってきた。もちろん奨学金もなしに生活費の全てと返済は無理だったが親父は気にしなかった。


また絶望だと思ったら、再会した母がなんとか援助をしてくれてなんとか持ちこたえられた。


幸せだったが長くは続かなかった。
自分の惰性と価値観の微妙なすれ違い、今までの経験を乗り越えてきたプライドに近い何かが彼女との関係を蝕んでいった。
彼女は多分ベストを尽くしてくれたと今でも思っているし、多分、大半のことは自分が悪かった。


自分の今までの辛かったことを彼女は理解してくれようとはしてくれても、できないと勝手に思い込んでいた。


それに、この関係を続けていった先のことを考えると自分の頭の中にバグが生じているのをみつけた。


自分が普通に会社に勤めるなんて絶対に無理だと思っていたし、幼稚園の頃から有名になりたいとは思ってて、その思いは強かったが結局自分に何か才があるわけでもなかった。

実質内定をもらっていた外資系のゲーム会社のインターンも、行ってる意味が分からずにバックレた。


何か曲や小説を書こうと思ったが、幸せだったから何も思いつかなかった。


幸せとはなんだろうと考えた。


彼女との問題以前の話だった。


自分は人といることに幸せを求めていたが、
結局それは結果的に人の言動に一喜一憂することになるし、人を養うほどの金を普通の仕事で稼ぐなんて自分には無理な話だったし、
何も音楽も作品も作れないのは自分にとっては何か違う感じがした。


それに自分は「自分は特別で他の人間とは違う」という考えを持った典型的なイキりマンだった。


特に何かがすごいわけでもないのに、
自分は自分が特別で他より優れていると思っていた。


マウンティングばかり取っていた。


でも自分に何もないことは気づいていたし、焦りを感じていた。


自分が特別だと思われたいだけに自分に関して嘘をついた。


過去の話を引きずり出して美化して武勇伝としてマウンティングの材料にしていた。



付き合い始めてからちょうど一年経ったくらいのときに、あるアニメを見て突然アニメを作ろうと思い、ソフトをダウンロードして絵を描き始めた。


1番最初の作品がツイッターにあるが、もちろん作り始めなもんだし全てがひどかった。


半年経った今でも作ってるものは大差ない


彼女と上手くいってないのもあって、彼女のことは放っておいてずっとアニメに没頭していた。



結局そんなこんなで別れた
彼女には「あなたのアニメに将来性を感じないと言われた」


まあそうだわなと思った。


言われたことの詳細は省くが、親父以外の人間の言葉でここまで心臓をえぐられたのは産まれて初めてだった。



そこから数日は記憶がない。


振り出しに戻った気分だった。自分は普通に就職しようか迷っていた。でも自分にはやはりそういう生活は無理だということが分かった。来るところまできた。全てを失った。というのはこういうことかと思った。



結局自分のこの思考は変わることはないことが分かった。人間にはできることとできないことがあって、今までトライしてきたことは、自分にはできないことだったのが分かった。



残った道はアニメと音楽を作ることだけだった。この半年は永遠とアニメを作っていた。


アニメには将来がない。彼女だけでなく周りの人間にもそう言われ続けた。それでも自分はただひたすら作り続けた。半ば自暴自棄ではあったと思う。


半年経ったある日、ジャイアンがユーチューバーになったやつがなぜかバズを起こした。


そこからは基本的にトントン拍子で結果が出て来た。


最近よく「ヤク中だ」「頭がおかしい」「キチガイ」などの楽しいコメントをもらうが、
もちろん薬物は一切やったこともないし、なんならあれは全部シラフで作っている。


自分からすれば、周りの人間の方がモラルと道徳観念のない異常者の集まりだと思っている。


親にスポイルされて親の金で放蕩の限りを尽くし、サークルで誰を寝取るだ穴兄弟だ、酒を飲んで話すことは女の話ばかりで、時間も金使いもルーズで約束も守らないで、何も努力しないで言うことは「あいつは才能があるから..」だ「起業だ一流企業に就職だ..」、愚痴ばかり吐いてよく知らない人間の短所を粗探しして不幸自慢だくだらないマウンティングで優越感に浸る。

誰かが右を向くまで誰も右を向かないし、皆が右を向けば左を向く人間を根絶やしにする。

自分からしたらそっちの方がよっぽど異常だ。


でも、結局は皮肉にも自分も多かれ少なかれそのうちの1人ではあるし、自分の作ったものを気に入ってくれる人がいても、結局はしょうもないの一言で済まされる程度のものだというのもまた事実だと思う。


人と自分は違うとは思っても、本質的に人間はみんな同じだと思うし、自分自身も含め、世の中のほとんどのことはくだらないし、個人の意見も無意味でバカらしいと思う。


今では自分のコンテンツでメイクマニーができるようになったので、自分のことをバカにしていた人間たちはお疲れ様という感じではあるが、それが自分自身の本質的な真価を上げるわけではないと思うし、人より大きい数字を出したところで、自分は結局、斜に構えた適合と不適合の狭間のぬるま湯に浸かっている井の中の蛙であることに未だ変わりはないんじゃないかと思う時がある。（猛省）


「人の目を気にしない」なんて甚だ無理な話ではあるし、自分がやっていることが正しいかは未だにわからないが、結局は自分ができることをそつなくこなしていくことが、それなりに自分に良い結果としていつか返ってくる（可能性が大きい）と思う。


自分はかなり重度の懐古主義者なので、未だに昔のことを考えるが、もし皆さんがやりたいことがあるなら(なくても)、くだらない人の意見も、自分の過去も未来も、世の中のことも、一旦全部忘れて、何も考えずにひたすら自分がやるべきことを続ければ、それなりの結果はついてくる可能性はあると思うので、是非一瞬だけでも挑戦してみてください。そしてやることやってはやく人生たたみましょう。


では