「不正」は本当にあるのか?安田浩一が見た、開票作業のウラ側

「選挙機材メーカー」の真実(第2回)

選挙用機材のトップメーカー「ムサシ」が、自民党と結託して不正な手段で選挙結果を「動かしている」──。

選挙のたびにネット上で流れる”ムサシ陰謀論”の真相を暴くべく、ムサシ本社を訪れた安田浩一氏(第1回)。そこに待ち受けていた開票作業の真実とは?

1分間に660枚を処理する"投票用紙読み取り機"

私が案内されたのは、最新型の選挙機器がずらりと並べられたフロアだった。

まあ、これを見てください

篠沢室長が指さしたのは、大型の投票用紙読み取り分類機だった。文字通り、票に書き込まれた候補者名を読取り、名前ごとに仕分け、分類するための装置である。要するに開票作業の「心臓部」であり、不正を訴える者たちにとってはブラックボックスに該当する装置でもある。

 

実際に目の前で操作してもらった。

 

まず、複数の候補者名が記入された票の束をまとめて投入口に差し込む。すると機械が作動して、名前ごとに別々のスタッカー(分類棚)に票が仕分けされた。これがなんともいえぬスピードである。聞けば、処理能力は「1分間に660枚」

名前を確認し、仕分け、それぞれのスタッカーに収めるまでの作業を、これだけの早さでおこなうのだ。しかも、バラバラに収めた票の束を「上下」「左右」とも均一にそろえるばかりか、文字の大小、漢字、ひらがな、カタカナ、それらのミックス、あるいはくせのある崩し字であっても即座に判別して、仕分けするのだ。もちろんなかには読み取り不能な文字もある。その場合は「リジェクト」として排出される仕組みだ。

これは同社が開発した「画像認識」の技術によるものだ。記された文字を「形状」として認識することで、間違いの少ない「分類」が可能となるのだそう。

書き文字を一瞬で判読する

不正は「当社にとってはなにひとついいことがない」

特徴的なのは、これら一連の作業がすべて、目視できるようになっていることだ。投票用紙が投入されてから、仕分けされるまでの「票の通り道」が扉で隠されることなく、すべて目で追うことが可能なのだ。

「行程を機械の中に閉じ込めてしまうと、意図的な仕組みが存在するのではないか、票が行方不明になっているのではないかと疑われてしまいますからね。票の流れが人の目で確認できるという透明性こそが、こうした機器類でもっとも大事なことだと思っています」

何度もデモ作業を繰り返してもらったが、少なくとも私の目では、ここに不正が入り込む余地などないように思えた。

集計マシンの裏側。裏からも不正のしようもない。

この読取分類機、読取機能の付いた本体が約270万円。スタッカーなどの分類機を含めると、その数にもよるが、通常は670万円ほどだという。かなり高価なものであるが、「これまでの選挙における人海戦術だけに頼ってきた環境を知っている人たちは、それだけに定価以上の価値を見出してくれます」と篠沢室長も胸を張る。

そしてこう続けるのだ。

「いったい、この装置のどこに、不正を仕込むことなどできるのか。仕組み的にも、行程的にも、特定の意志を介在させることなど無理です。しかも、実際の選挙では、すべてを機械が仕切っているわけではありません。分類された投票用紙は、一度、この装置から取り出した後に、担当者によって同一候補の有効票であるのかどうか、必ず確認されるのです。仮に機械が不正な分類をしたところで、最終的には人間による確認作業が義務付けられているのですから、意味のないことです。むしろ意図せぬ間違いがあっただけでも、当社製品の信用はガタ落ちします。当社にとってはなにひとついいことがない」