アナ雪2ステマ騒動は連絡ミス、日本ディズニーが釈明。「コミュニケーションに行き届かない部分」
役員の顔面フローズン
全国のディズニーファン、および『アナと雪の女王 / Frozen』ファンが心を痛めた「アナ雪2ステマ漫画騒動」に進展がありました。
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社のプレスリリースによれば、12月3日午後のほぼ同時刻に7人の漫画家が同じハッシュタグをつけて一斉に投稿した「感想」漫画は、本来はディズニーによる宣伝であることを明記するはずが、『関係者間でのコミュニケーションに行き届かない部分があり (略) 抜け落ちる結果となってしまった』ものであるとのこと。
つまり自発的・中立的な立場からの感想であることを装って一般消費者に好印象を与えることを意図したいわゆるステマ、ステルスマーケティングではなく、明確に広告と表記するはずが、あくまで手違いにより、結果的にステマに見えてしまったもの、という説明です。
おさらいすると、今回の騒ぎの発端は12月3日午後のほぼ同時刻に、7人の漫画家が『アナと雪の女王2』について好意的な「感想」漫画を一斉に投稿したこと。うち5人は19時ジャスト、残りの二人は19時1分と3分という見事なシンクロぶりです。
仮に同じ回の試写会の後であったとしても、単なる感想ツイートならばともかく、内容も違い制作期間も異なるはずの漫画がほぼ同時に、まったく同一のハッシュタグの組み合わせで投稿されていたことから、これはいわゆる「仕込み」の広告ではないか、それにしては依頼による投稿であることを示す文言や「PR」の二文字すらないということは、広告であることを隠して優良誤認を狙ったステルスマーケティングではないかと疑惑を集めていました。
翌朝になって、7人の漫画家が7人とも、「PR漫画でした」「説明をしておらず大変失礼しました」といった、非常に似通った文言の謝罪のツイートをしています。(どうやら指示通りの言い回しで謝った人と、イイ感じに自分の言葉であるようにアレンジして自然な文言にした人がいるようです)。
ウォルト・ディズニー・ジャパンはITメディアの問い合わせに対して当初「ステマであるという認識はない」、あくまで「コミュニケーションミス」によるものでありウェブサイト等で説明もしないと回答していたものの、12月5日付けでニュースリリース「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」に関するお詫び」を公開。
今回の件について
「(...) クリエーターのみなさま、ファンのみなさまに多大なご心配、ご迷惑をお掛けし、深くお詫び申し上げます」
としつつも、
『(...)「PR」であることを明記していただくことを予定しておりましたが、関係者間でのコミュニケーションに行き届かない部分があり、当初の投稿において明記が抜け落ちる結果となって』
しまっただけであって、あくまで純粋なミスによるもの、優良誤認を意図したスポンサー表記なしプロモーションではない、と説明しています。
さて、まだ「ステマ」という言葉がなかった10数年前ですら、一般消費者を装ったマーケティングが発覚すれば「ヤラセ」として大炎上を招いていました(※ディズニーではなく他社案件)。
現在ではなおさら、こうしたマイクロインフルエンサーとソーシャルメディアを通じたステルスマーケティングについては一般の理解も広がり、ディズニー本社がある米国ではすでに規制や法整備が進められています。
そのウォルト・ディズニー・カンパニーの100%子会社であるウォルト・ディズニー・ジャパンが、企業として公式に「ミス」であったと述べたこと、すなわち今回たまたま起きた偶発的事態であったと表明したことの重さを考えれば、Frozenシリーズの1ファンの心情としては、ああ良かったやっぱり何かの間違いだったんだ!起きてしまったことの責任は免れないとはいえ、夢と魔法のディズニーがこんな一瞬で解ける詐欺的宣伝に手を染めるわけがない、どこかで意図せぬエラーがあったのだろうと安心して、再発防止策を講じるというしこれで一件落着、と信じたくなります。
......なりますが、しかし一方で、「お詫び」の文言が「予定しておりましたが、関係者間でのコミュニケーションに行き届かない部分が」(強調筆者)という、世界有数のメディア・コングロマリットが目下の最重要ブランドをみずから、消費者の信頼を裏切るかたちで毀損した深刻な危機に際して述べたとは思えないスーパーふわふわ表現であること、何よりも貧しい漫画描きであったウォルター・イライアス・ディズニーの創業になるディズニー社が、依頼したアーティスト自身に謝罪させているという異様な事態であることを思うと、このままレリゴーできる案件とはとても思えないのも確かです。
今回、説明不足でしたと釈明した漫画家には、過去にほかのディズニー映画についてPR表記のない「感想」漫画を描いていた例も、また別の映画についてはしっかりPR表記ありで広告漫画を描いている例もあります。
(参考:WSJの英文記事「Disney in Japan Apologizes for Influencers' Tweets on 'Frozen 2'」)
ごく個人的には、公開された Frozen 2の圧倒的な作品力に酔い、アーティストだけでなくシミュレーション技術のエンジニアチームまで並ぶ膨大なエンドクレジットをほとんど畏敬の念で見つめた直後だけに、作品も制作者全員をも貶めるような「結果的」ステマには暗澹とした気分になります。
しかし、純粋に感動して自発的に絶賛した1ファンがどうせまた宣伝と思われないためにも、また作品名で検索すると「ステマ」がサジェストされる最悪のブランド毀損を二度と招かないためにも、過去にこれ以外の「明記が抜け落ちる結果」があったのか、偶発的な「行き届かない部分」だったのか慣習的な以心伝心だったのかの検証を含めた明確なディスクロージャーと、ディズニーが率先することで業界からこうした事態が駆逐される、実効性のある「再発防止策」を望みたいものです。
......望んでいるだけでもアレですので、ここはひとつ劇中でアナとエルサが教えてくれた諦めない姿勢、暗闇にあっても next right thing をマストゴーオンな姿に感化されて、まずは米国のウォルト・ディズニー・カンパニー本社に、今回の件および米国内と国外でのインフルエンサー広告ポリシーについてコメントを求めてみました。回答がありしだい追ってお伝えします。
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