「製造業として世界最大規模のIoT(インターネット・オブ・シングズ)プロジェクトだ」。独フォルクスワーゲン(VW)でグループCIO(最高情報責任者)を務めるマーチン・ホフマン氏は力を込めた。
2019年12月5日(米国時間)、米ラスベガスで米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が開催中の年次イベント「AWS re:Invent 2019」の基調講演に、VWのホフマンCIOがゲスト出演。VWグループがAWSとの協業のもとに開発を進めているクラウド生産システム「Volkswagen Industrial Cloud」の狙いについて解説した。
VWグループは年間約1100万台、1営業日当たり4万4000台の車両を生産している。「この生産量を実現するサプライチェーンは非常に複雑だ。世界全体で1500を超えるサプライヤーが、毎日1億個近い部品を生産し、1万8000台のトラックで出荷している」(ホフマンCIO)。VWグループは世界に122の工場を抱え、各工場がバラバラに生産システムを導入していた。Volkswagen Industrial Cloudは、こうした工場のIT基盤を単一のクラウドに移行する野心的な試みだ。VWとAWSが2019年3月に計画を明らかにした。
VWグループがこのプロジェクトを通じて目指す生産の理想像を、同社は「デジタルプロダクション」と呼ぶ。プレス機から塗装ロボット、組み立てロボット、ロジスティクスまで全ての設備をクラウドに接続。データをリアルタイムに収集し、機械学習アルゴリズムで各設備のパラメーターを調整し、生産効率を高める。
オンプレミスに配置するAWS基盤「Outposts」を採用
このシステムは主に4つのブロックからなる。生産設備のネットワーク(Operational Network)とITシステムを接続するシステム、生産設備などからIoTデータを収集するシステム、生産設備に付随したシステム(Plant Cloud)、データを活用した各種アプリケーションなどを動かすシステムである。
このうち、設備に付随したPlant Cloudの主要部はAWSのクラウド上ではなくオンプレミス(自社所有)環境に配置する。「工場のITシステムが担う機能の多くは生産設備の近くで実行する必要があるため」(ホフマンCIO)だ。
Plant Cloudをオンプレミス環境に配置するため、オンプレミス環境で運用するAWS基盤のハードウエア「AWS Outposts」を工場に導入して使っているという。Outpostsは今回のre:Inventのタイミングで一般提供が始まったサービスだが、VWはそれに先行してプレビュー提供の段階から活用している。
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