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【社説】

ゲーム障害 若者の依存を防ぎたい

 若者たちのネット・ゲーム依存の現状が分かる調査結果が公表された。のめり込むと日常生活や健康に支障がでる「障害」となる。どう防ぎどう治療するのか、その手だてを社会全体で考えたい。

 調査は依存症の専門治療を行う国立病院機構久里浜医療センターが十~二十代を対象に実施した。国による初の実態調査だ。

 85%が過去一年間にゲームをしており、八割がスマートフォンを使用していた。プレー時間は平日で一日二時間以上が三割を超えた。六時間以上が2・8%、休日だと12%いた。

 気になるのは、ゲームをやめなければいけない場面でしばしばやめられなかった人が、平日のゲーム時間が六時間以上の人のうち45・5%と半数近くいたことだ。

 ゲームのためにスポーツや友だちと会うなど大切な活動への興味が下がったと思う人も、プレー時間が長くなるに従って増えた。

 プレー時間が長ければ、学業や仕事に悪影響がでる割合や、不規則な生活になり体の不調を抱える割合も増加していた。

 熱中するほどやめにくくなり生活に支障がでる。その実態が数値で裏付けられたことになる。

 ネット・ゲームは子どもや若者らに広がっている。昨年のジャカルタ・アジア大会や今年の茨城国体でもeスポーツとして実施された。高額な優勝賞金の大会が開かれ、プロ選手もいるなど憧れの世界になっている。

 一方で、ネット依存が疑われる中高生は全国で九十三万人いるとの推計がある。

 世界保健機関(WHO)は五月、ゲーム優先の生活で健康を害しても続け、学業などに支障がでるなどゲームへの過度な依存を「ゲーム障害」と位置付けた。

 ただ、治療や予防法の研究はこれからだ。薬物など大人の依存症と違い、子どものプレー環境を完全に断つことは難しいし、通信機器も生活に浸透している。ネット社会の進展でゲーム環境は急拡大している。政府は医療機関や相談窓口を迅速に整備すべきだ。ゲームメーカーも対象年齢を限定するなど対策を取り入れているが、さらに検討してほしい。

 中国政府は若者のゲーム時間を平日九十分、休日三時間とする規制措置を打ち出したという。ただ、何時間が適切かは一概には言えない。家庭でもプレーのルールを話し合ってはどうだろう。

 依存の傾向があったら外部への相談や治療に頼るようにしたい。

 

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