内閣主催の「桜を見る会」を巡る疑惑は、臨時国会の会期末が九日に迫る中、何一つ解明されていない。その責任は真摯(しんし)な説明を避けている安倍晋三首相自身にある。逃げ切りは断じて許されない。
税金を使って多数の支持者や反社会的勢力まで招待し、後援会主催の前夜の宴会は収支が不透明。
これらは、首相自身が公職選挙法や政治資金規正法違反に問われかねない問題だ。潔白だというのなら、桜を見る会の招待者名簿や宴会の明細書など、証拠を示して説明すれば済む。しかし問題発覚以降、首相は口先だけの逃げの姿勢に終始している。
二日の参院本会議でも、野党議員による資料要求の直後に行われた印刷名簿の廃棄について、シュレッダーの予約の関係だったと従来の政府説明を繰り返した。
同じころ削除した電子データの復元は、システム上「不可能」と言い切った。その後、データにはバックアップがあったと判明し、当時なら復元できた可能性も出てきた。菅義偉官房長官は予備データは行政文書ではなく、提出の必要はなかったと強弁するが、どんな状態であれ、政府が管理し復元できたのなら原本と同じ文書のはずだ。詭弁(きべん)にしか聞こえない。
二〇一五年、詐欺的商法を展開していた「ジャパンライフ」の当時の会長に首相枠の区分番号で招待状が届き、宣伝材料にされていたことも重大な問題だ。首相は「個人的な関係は一切ない」と元会長との面識を否定した上で、不当な営業への利用は「容認できない」と人ごとのように述べた。
ただ、首相の父晋太郎氏が外相だった一九八四年、元会長とともに米国などを訪問し、首相も外相秘書官として同行していたことが明らかになり、答弁の根拠はぐらついている。元会長への招待状が、約七千人から千八百億円がだまし取られた事件を拡大させたのかもしれない。誰がなぜ招待したのか、解明する必要がある。
格安な五千円の会費を参加者がホテルに直接納めたとする「前夜祭」についても、首相は、明細書を提示しないのはホテル側の営業の秘密に関わるためなどと言うだけで、説得力を欠く。
臨時国会が終わったとしても、閉会中審査や記者会見に応じて説明することはできる。十一月、政治とカネの問題で安倍内閣の二閣僚が連続辞任した際、首相は「自ら襟を正し、説明責任を果たすべきだ」と求めた。今度は自身がその言葉を守らねばならない。
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