★★★ Excellent!!!
TS転生物としてはあまり評価できないが、知識と熱量には目を見張る 彩の国さいたま
板野氏を長らく観察している私からすると、本作ははっきり言って板野氏の成長を強く感じる一作である。成長というか適合というべきか、なろう系のガジェットであるTS転生をまんまと使って自分の好きなアイドル物を書き、なろう系の読者をそこそこ程度集めることに成功している。どこに需要があるのか分からないスクールアイドル物をただ自分が書きたいからと言って書いていたカクヨムコン3の頃の板野氏とは別人のようである。
なぜアイドルと海軍という組み合わせなのかは知らないが、作品のメインテーマである海軍士官のことも本当によく調べている。恐らくはこの一作のために膨大な資料を引いたのであろう、こればかりは脱帽である。地の文での説明がややくどい気はするが、士官としての主人公の行動には一貫性があり、現代人との常識ギャップがなかなか上手く描けている。IDOLIZEで見られた過剰な修飾も抑えられており、ちゃんと主人公の目線で状況を追えるようになっている。
ただやはり付け焼き刃というべきか、TS転生物が通常有しているべき魅力が色々と欠落しているのは、氏の限界であろう。せっかくヒロインと同居して数々の美味しい目を見る機会があるのに、主人公が真面目すぎてことごとく回避してしまうのは、読者にとっては興ざめである。「この主人公ならこういう行動を取る」という考えがしっかりあるのは分かるが、そもそも読者が読んで気持ちよくなる展開が…
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