「山田様、お願いがあります。」 ガードマンの大岩が打ち合わせ通りに口を開いた。
「何だ、大岩。」
「綱手火影は格闘技の天才と伺いました。私たちに是非とお手合せいただきたいのですが。」
「そうだな。お前らもまだまだ未熟だから、ここは、綱手先生に一つご指導願うか。」
「ふざけるな!誰がお前らなんかの相手をするものか。」 綱手は怒鳴った。
「綱手、調子に乗るなよ。お前に拒否する選択肢はない。」
「どうせ、私を嬲り殺しにするつもりだろう。無駄だ。私は戦闘では死なない体だ。」
「綱手、そうカリカリするな。どうだ、もしもお前が勝ったら、逃がしてやろう。」
「・・・ふん、どうせそんな約束は反故にするくせに。」
「どうだ、団体戦の勝ち残り戦と言うのは?」
「団体戦?私は一人だぞ。」 綱手はそう言ってからハッと気がついた。
「どこまでも卑怯な奴なんだ。シズネか。」
「綱手、お前は強すぎるから、ハンディキャップ戦にする。こちらは5名、そちらはお前とシズネの二人だ。」
「シズネはどこにいる。」
「ちょっと、千賀が激しく責めすぎてな。大丈夫だ、まだ生きている。」
「・・・わかった。私が一人で5人に勝てばいいのだな。」
「そう言うことになるな。」
「私が勝ち抜いたら、シズネだけは解放してくれ。」
「わかっている。お前が勝ち抜いたらお前共々解放してやる。」
「嘘はないな。」
「ああ、その代りお前はその褌のまま戦うんだ。上は裸だ。」
「何ぃ?」
「もちろん、こちらも上半身は裸だ。これで条件は同じだ。」
「卑劣な・・・」 しかし、どこかで囚われているシズネを思い、ここは堪えた。
「わかった、わかった、その条件を呑もう。」
「オイ、大岩、山田軍団の精鋭を集めろ、綱手先生が稽古をつけてくれるそうだ。」
「はい、わかりました。」山田と大岩はニヤリと笑った。全て打ち合わせ通りにことが進んだ。
「それではコロシアムで30分後に試合を始める。」
山田はそう宣言すると、大岩に命じて、綱手のつま先が届かない位置まで綱手を吊り上げた。
うあああぁぁぁっ
これまで、ずっと両手吊るしの状態にされていたので、いい加減腕が痺れてきた上に、とうとう綱手の全体重が両肩にかかり、その痛みに綱手は悲鳴を上げた。
「30分経ったら、迎えに来るからな、綱手、ゆっくりと休んでおけ。」
山田たちは大きな声で笑いながら、拷問部屋を出て行った。
大岩は、すでに5人を決めていた。
大岩、小鉄、鋼、嵐、響。全員身長が2メートル近くある筋骨隆々の大男ばかりだ。
それぞれ複数の武道に精通していて、その鍛えられた筋力は、いかなる刃物も貫通させない。
仮に綱手のパンチがどんなに強くても蚊に刺されたくらいに感じないかもしれない。
30分が経過して、千賀がガードマン数人を引き連れてやってきた。
綱手はもう完全に手の感覚がなくなっていた。
やっと下ろされたと思った刹那、綱手は千賀に、右腕は頭の方から背中へ、左手は下から頭の方へ、ストレッチのような形で手錠をはめられてしまった。
「・・・何をする、腕が痛い。」
「火の国の長、火影のくせに、根性のないことばかり言ってないの。」
千賀は、綱手の背中を押し、コロシアムへ引き立てる。
「この手錠はこの前の鎖の数千倍の強度なの。怪力の綱手姐さんでも今回は千切れないわよ。」
コロシアムと呼ばれる会場には、たくさんの人が詰めかけていた。
「こいつ等はいったい・・・」 入り口でたじろぐ綱手。
「この人たちは、山田様の風俗店の常連さんたちよ。巨乳熟女のキャットファイトと聞いて、こんなに集まったのよ。」
「人前で戦うなんて聞いてないぞ。」
「わがまま言うんじゃないよ。綱手姐さんが戦わないならば、シズネに出てもらうだけ。尤も、もうキャットファイトではなく、リンチショーになるけれど。お客様はそれだけで大喜びよ」
千賀は楽しくて仕方ない感じだった。綱手は諦め、コロシアムの中に入った。中央に鉄製の大きなゲージがあり、その前に5人の大男が立っていた。全員綱手よりもずっと大柄だった。
観客はトップレスに褌姿の綱手を見て大はしゃぎ。
「オッパイ姉ちゃん!!」「褌が色っぽいぞ!!」「やられちまえ!!」「殺せ!殺せ!!」と汚いヤジを飛ばしていた。
綱手と小鉄がゲージに入る。
「始め!!」 心の準備もしないまま、試合が始まってしまった。しかも手錠がはめられたままだ。