初の中学生五段に昇段した藤井聡太 今後期待される「新記録」は?

藤井新五段、C級1組に昇級決定

 2018年2月1日。東京・将棋会館において、C級2組順位戦9回戦・梶浦宏孝四段(4勝4敗)-藤井聡太四段(8勝0敗)戦がおこなわれました。藤井四段はもし勝てば、最終10回戦の結果に関わらず、昇級枠である成績上位3人に入ることが確定するため、C級1組への昇級が決まります。

 大一番を前にして、緊張しそう、将棋界の言葉で言えば、「震えそう」なところですが、

「普段通りの気持ちで臨みました」

 と、局後に藤井四段は語っていました。

 午前10時、対局開始。梶浦四段が先手で、戦形は互いに飛車先の歩を伸ばし合う、相掛(あいが)かりとなりました。序盤はやや、藤井四段の方が苦しいのではないか、という声も聞かれる中、中盤ではその実力を発揮。

 形勢が接近した戦いがしばらく続きましたが、やがて藤井四段が優位に立ちました。

「夕食休憩を開けたあたりから、鋭い手を指されて、苦しくしてしまった。自分の予想してなかった手で来られて、斬られてしまったかな、という印象です」(梶浦四段)

「序盤は少し作戦負けしたかなと思っていて、その後一気に、中盤激しい展開になって、とてもむずかしい展開だったですけれど、踏み込んでいけたのがよかったかなと思っています」(藤井四段)

 23時5分。最後は114手で、藤井四段の勝ちとなりました。

 これで藤井四段は、C級1組昇級決定。

 また規定により、即日(2月1日)付で、五段昇段も決まりました。

「順位戦では1年間昇級を目指して戦ってきたので、それが果たせたのは嬉しかった。順位戦の昇級という形で五段昇段を果たせたのは良かったかなと思っています」

 局後のインタビューで、藤井新五段は、そう語っていました。

新記録、どこまで更新できる?

 藤井新五段の現在の年齢は、15歳6か月です。五段昇段の最年少記録は、1955年に加藤一二三現九段が記録した15歳3か月で、それにはわずかに及びません。しかし、中学生での五段昇段は、藤井新五段が唯一の例となります。

 また、藤井五段は全棋士参加の朝日杯将棋オープンで、準決勝にまで勝ち上がっています。次の対戦相手は、将棋界の第一人者である、羽生善治竜王。対局がおこなわれるのは2月17日で、もし羽生竜王に勝ち、決勝戦(相手は久保利明王将-広瀬章人八段戦の勝者)も制すれば、初の全棋士参加棋戦での優勝となります。これも史上最年少記録です。

 朝日杯にも優勝すると、規定により、六段昇段が決まります。こちらは加藤現九段の記録(16歳3か月)を抜いて、史上最年少記録となります。

「朝日杯では非常に素晴らしい機会を得ることができたので、自分の力を出し切って、準決勝に臨みたいと思っています」

 順位戦が終わった後、藤井五段は、そう語っていました。

 藤井五段には、その他にも、数々の記録更新が期待されています。以下は順位戦を中心とした記録を確認しておきましょう。

 藤井五段は、この後、3月におこなわれるC級2組最終10回戦(三枚堂達也六段戦)に、仮に敗れても昇級できます。しかし、順位戦の連勝記録を伸ばせるかどうかにも、期待がかかります。

 デビュー以来の順位戦連勝記録は、中原誠16世名人がC級2組からC級1組までに達成した18連勝。

 一般的な順位戦連勝記録は、森内俊之現九段が、C級2組からB級2組までに達成した26連勝。

 いずれも、そう簡単には破られそうもない、大記録です。

 現行の奨励会三段リーグ(半年1期)と、C級2組(1年1期)、いずれも1期で抜けるのは、大変なことです。それを同時に達成したのは、屋敷伸之現九段以来、藤井五段が史上2人目です。

 C級2組からC級1組、B級2組、B級1組、そしてA級と、ノンストップで連続昇級を果たしたのは、過去には加藤一二三九段と、中原誠16世名人の、わずかに2人。加藤九段は1958年、中原16世は1970年にA級に昇級しました。その後はずいぶんと間が空いていることからもわかる通り、こちらも至難の業です。

 史上最年少のA級昇級は、加藤九段の18歳3か月。藤井五段をもってしても、現行制度上、その記録を抜くことはできません。しかし、加藤九段の20歳での名人挑戦、谷川浩司九段の21歳での名人位獲得の記録は、最短19歳で抜ける可能性があります。

 これらはいずれも、夢のような話ではあります。しかし、藤井五段ならば、あるいはもしかしたら……。今後も変わらず、藤井五段のさらなる活躍に期待しましょう。