- 日曜日発行/20~24ページ
- 月ぎめ967円(税込み)
2017年1月8日付
2017年は天皇陛下の退位や憲法改正など、国の「根幹」を巡るテーマが政治の中心になる。日本と結びつきが強い米国では、既存の「秩序」に距離を置くトランプ氏が新大統領に就任するなど、国の内外で日本の「在り方」が問われる1年になりそうだ。
天皇陛下は昨年8月、退位の意向を強くにじませるお気持ちを表明。政府は有識者会議を設置し、今の天皇陛下に限って退位を可能とする特例法の制定を軸に検討している。18年の退位を想定し、今年の通常国会に法案を提出する方針だ。憲法2条では皇位継承は皇室典範で定めると規定しているため、特例法での対応には専門家の間でも意見が分かれる。とりまとめに時間がかかる可能性もある。
昨年7月の参議院選挙を受け、憲法を改正すべきだと考える「改憲勢力」が、衆参両院とも改憲に必要な3分の2を占める状況が生じた。憲法改正はこれまで一度も行われていないが、安倍晋三首相は「任期中に果たしたい」と、積極姿勢を示している。衆参両院の憲法審査会で審議し、早ければ17年中にも改憲項目の絞り込みなど具体的な作業に入る構えだ。
衆議院議員の任期が折り返しである2年を超え、自民党内には「早期解散論」が浮上している。夏には、自民党と連立を組む公明党が重視する東京都議会議員選挙がある。安倍首相はこうした政治スケジュールを見据え、解散のタイミングを探ることになりそうだ。
海外でも大きな出来事が続き、日本の外交にも大きな影響がありそうだ。
20日に米国の次期大統領に「米国第一主義」を唱えるトランプ氏が就任する。日本が成長戦略の柱と位置付けてきた環太平洋経済連携協定(TPP)について、トランプ氏は離脱を表明。日本政府は通商戦略の再考が必要となる。選挙戦で、トランプ氏は米軍駐留経費を日本政府が100%負担しない場合の米軍撤退も示唆するなど、安全保障面でも不透明さが漂う。
韓国では昨年12月、国会が朴槿恵大統領に対する弾劾訴追を可決。大統領の権限が停止された。朴氏を罷免するかどうか、憲法裁判所が最長180日間をかけて審理するが、即時辞任を求める声も強い。昨年末に日本で開催予定だった日本、中国、韓国の首脳会談は延期に。慰安婦問題での日韓合意など、朴政権で進んだ日韓関係の改善を危ぶむ声も出ている。
ロシアのプーチン大統領と安倍首相は昨年末に日本で会談。北方四島での「共同経済活動」に向けた協議入りで合意したが、北方領土問題の主権を巡る双方の主張は溝が残ったままだ。
昨年、英国が欧州連合(EU)離脱を決定。今年のフランス大統領選挙などでも、反EUを唱える政党に支持が集まる可能性がある。世界的な「内向き」志向の中、世界の中の日本を見据えた姿勢が問われそうだ。
どちらも(C)朝日新聞社
会談で笑顔を見せるロシアのプーチン大統領(左)と安倍晋三首相=2016年12月15日、山口県長門市
解説者
岩尾真宏
朝日新聞政治部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。