創造的!「空き家」巡る奇想天外ビジネスの実態

ゴミ屋敷や廃墟から限界集落の戸建てまで

不動産会社リライトの店頭に貼られていた1円別荘の広告。日本のみならず、海外のテレビにも取り上げられた(筆者撮影)

空き家元年といわれた2015年から丸5年。この間、関連する法整備、活用の多様化など空き家をめぐってはさまざまな変化があった。ただただ混乱していた当時からすると第2フェーズに入ったともいえる。空き家を処分あるいは活用するビジネスも多数生まれている。空き家を処分したい人、空き家を使いたい人双方に向け、空き家ビジネスの最前線を紹介しよう。

ゴミ屋敷でも、廃墟でも売れる

処分したい人にも、使いたい人にも役立つサイトのうち、もっとも知られているのが、売りたい人、買いたい人が直接やりとりをする掲示板「家いちば」だろう。2015年10月にスタートし、2017年12月以降はメディアにも頻出。一般の不動産会社が扱わないゴミ屋敷や、廃墟となった病院、工場、旅館など面白い物件も扱っていることに加え、「タダでもいい」「お金を出してでももらってほしい」という物件があることなどで話題になった。

この4年間で掲載された物件は800件を超え、問い合わせは累計で1万件超。平均すると6件に1件が売れており、掲載物件は離島も含め、ほぼ日本全国に及ぶ。特に最近は「これ、売れるの?」と首をかしげるような物件が早く売れるという。

「廃墟のガソリンスタンドをバイク仲間の拠点にしたい、古民家を秘密基地にしたい、家を買えば人生が変わるかもしれないので買ってみるなど、不動産のプロの先入観を覆すような理由で買う人が少なくありません」と、家いちば代表の藤木哲也氏は話す。「そもそも、プロの値付けが空き家流通を阻んできた側面もあります」。

「車のように何度も売り買いする商品は消費者が経験を積み、学ぶチャンスがある。不動産にはそれまでそうした機会がなかったが、これからは家いちばがその場になると思う」と藤木氏(中央)。2019年に増資し、服部慶氏(右)、長田昌之氏とともにさらなる成長を目指す(筆者撮影)

従来の住宅流通では不動産会社が価格を査定し、その額で売ろうとしてきた。売れ行きを見て価格を下げることはあっても、手数料収入を考えると一定以下になることはなく、特に300万円以下では査定に固執するケースも多い。本当の意味での価格調整は行われてこなかった。ところが売り手、買い手が相対して正直にすり合わせていくことで価格は互いが納得いくところに落ち着いていく。だから売れるのだと藤木氏は言う。

また、これまでの不動産会社は客を神格化し、手取り足取りのサービスを行ってきた。だが、家いちばでは、客が自らできることはやってもらう。始めたときには直接取引で、かつ自分でやってくださいというやり方に心配もあったというが、これまでトラブルはない。

逆に「気持ちよく取引できました」と感謝する人が多いという。「メルカリやコンビニのコーヒーなどを通じ、自分でやることに慣れた層が増えているからかもしれません、ごく普通の人たちが売り買いをしています」。

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  • phj by PC0dff3981b61a
    欧米に比べて日本は「豊かではない」とされる要素の一つが「フローの経済ばかりでストックが無いこと」だとされる

    新築を作り続けることはフローの経済だが、空き家を上手く利用できれば日本式のストック経済が育つかもしれない。

    欧州のストックは建物そのものが何百年も使える、という長い耐久性に対する信頼から生まれているが、いままで日本の住宅はそれほど持たない、とされてきた

    たしかに何百年は持たないだろうが、しかし木造家屋でも手入れをきちんとすれば減価償却の2倍程度は持つものもたくさんあるだろう

    特にS56年以降の耐震住宅は基礎や構造が頑丈に出来ている

    人口減少を逆手に取り、若い世代がフランスのように「都市の自宅と、田舎の別荘」のような豊かな生活ができるようになればよいだろうし、政策として後押ししてもよいのではないだろうか。
    up6
    down0
    2019/12/5 08:45
  • といざヤす9fb97ee2a27b
    記事にある

    >また、これまでの不動産会社は客を神格化し、手取り足取りのサービスを行ってきた。

    が、そもそも虚構でしょう。
    適切な情報提供をしない(もしくはできない?)人間が不動産屋さんには結構います。質問しても答えず(答えられない?)
    「勢いですよ」
    「思い切って行きましょう」
    それしか言わない人もいますよね。

    売っちまえばそれまでで、知らんぷりという人も多いですし。

    記事で紹介されている不動産屋にも、そんな匂いがします。
    up8
    down7
    2019/12/5 06:24
  • D.Kbd5d9735991d
    企業でもタダでも売りたい不動産は幾らでもある。
    それは保持するコストがかかるからである。
    税金に加えて、近隣に配慮して雑草の駆除、放っておけば不法占拠されないための巡回等々の費用。
    建物なら朽廃減価と補修、さらには将来の撤去整地費用。
    リゾートマンションは管理費が馬鹿高い。
    中には自治会との付き合いという厄介なものまである。
    飛びつく人は目先の安さに騙されず、隠れた費用に十分目を向けて欲しい。


    up1
    down1
    2019/12/5 09:29
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