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【社会】給特法成立 「現場無視」教員怒り 見かけの残業時間減へ見切り発車公立学校の教員の勤務時間を年単位で調整する変形労働時間制の導入を盛り込んだ改正教職員給与特別措置法(給特法)が四日、成立した。教員からは「さらなる長時間労働につながるのではないか」と怒りや不安の声があがる。 「なぜ現場の声を聞いてくれないのか」。東京都内の中学校に勤務する五十嵐夕介さん(36)は憤る。法成立が職員室に伝わると「子育てできなくなる」と嘆く同僚もいたという。 「毎日残業してさらに定時が延びたら、もっと働け、働けと言われるよう」。そのつらさを趣味のマラソンに例えて「一年間、同じペースで進みたいのに、途中でダッシュしろと言われるようなもの。疲れてゴールまでたどり着けない」と語った。 首都圏の小学校教諭の四十代女性は「考え方がおかしい。夏休みはふだんできないことをやったり、良い授業をするために勉強する時間で暇ではない」と話す。授業はなくても各種書類づくり、秋の運動会や遠足の準備といった仕事がある。床のワックスがけ、カーテン洗い、エアコンのフィルター清掃も「予算がなくて教員がやらなきゃいけない」。 ふだんから人手が全く足りない。小学校は全科目を担任が教えるため授業とその準備で時間がつぶれる。最近は産休に入った教員に代わる臨時採用教員が見つからず、みんなで穴埋めする状態も増えている。「疲れてしまってしっかり準備できず授業に臨む日もある。いじめ問題があっても一人一人に向き合う時間がなく、きめ細かに見られないのが本当につらい。子どもたちに行き届いた教育をするために、まず定数の改善をしてほしい」と訴えた。 中学教員だった夫が過労死し、法案審議では参考人として国会に出席した工藤祥子さんは「重大な働き方の変更があっけなく決まってしまい、残念です。過労で倒れる人が増えることが一番心配。せめて残業時間の上限を超えないなど付帯決議でついた条件を守り、タイムカードを押した後も働かせることが現場で起きないよう文部科学省に望みたい」と指摘した。 <解説> どのような効果があるか不明確で、導入する根拠も希薄なまま、公立学校の教員に一年単位の変形労働時間制の導入を可能にする給特法が成立した。 繁忙期に長く働き、その分を児童生徒が夏休み中の八月などにまとめて休む変形労働時間制は、「夏休みは閑散期」という前提がないと成り立たない。しかし、文部科学省は年間を通した教員の勤務時間を把握していない。内田良名古屋大准教授の調査では、八月も各地で残業をしている。 それでも文科省が導入を急ぐ理由は、見かけ上の残業時間を減らすためだ。同法によって現状では教員に残業代は出ないが、もし払えば年間約九千億円の財源が必要になると試算した。 残業時間を減らせば将来的に残業代を出せる制度改革につながるとの考え方も省内にはあるが、実態が見えなくなり議論がしぼむ危険がある。先に教員の定数改善による人手不足解消や業務削減を進めて減らすのが本来のやり方だ。 この制度を導入するか決めるのは地方自治体だ。学校現場とよく話し合う必要がある。「働き方改革」をうたう新制度により過労で倒れる人を増やしてはならない。 (柏崎智子) PR情報
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