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日本、PISA読解力ランキング「過去最低」これだけ改革して、なぜ…?

「読書離れ」は止まったはずなのに

読解力「15位」の衝撃

2019年12月3日に、2018年に実施されたPISAの最新結果が発表され、参加した79の国・地域の中で日本は「読解力」で15位、「数学リテラシー」で6位、「科学リテラシー」で5位となり、いずれも前回の2015年調査よりも順位・スコアが後退した。

PISAとは、OECD(経済協力開発機構)が義務教育修了段階の15歳を対象に行う国際学力調査である。その狙いは、実生活で直面する課題に知識や技能をどの程度活用できるかを評価する点にある。

PISAは日本の教育政策に影響を与え、記述式の導入や英語でスピーキング能力をも求めるがゆえに起こっている昨今の大学入試改革の混乱にも関係している。また、国語教育や読書推進政策、学校図書館のありようにも変化をもたらし、それは少子化に抗うように底堅い子どもの本市場の形成にも寄与してきた。

PISA2018の結果がどんな影響を及ぼすかを見通すために、日本の子どもの「読解力」をめぐって過去どんなことが行われてきたのかを振り返ってみよう。

 

「読書量」の少なさが原因という議論

2000年に初めて行われたPISA調査の結果、読解力ランキングで日本は参加32国中8位だった。この結果は、フィンランドや韓国の後塵を拝するものと受けとめられ、「ゆとり教育」路線から「確かな学力」向上路線への転換に一役買うことになった。

PISA2000の結果は2001年12月に公表されたが、その後の新聞や雑誌の記事を引こう。

〈読解力の総合得点では、日本はフィンランドに次いで2位グループ(順位は8位だが、2位のカナダと統計的な差はない)につけた。ただ、問題の中に、「落書き」について賛否両論の意見文を読ませ、その内容について論述形式で答えさせるものがあった。参加国全体の平均正答率は53%。これに対し、日本は42%と11ポイントも低かった。しかも、回答欄に何も書けない「無答率」が29%にものぼり、米(4%)、英(7%)、仏(9%)などと、大きな差がついてしまった。

国立教育政策研究所の有元秀文・総括研究官は、「ものを考えない、表現できない」傾向の表れだと分析し、参加国中で最低だった「読書量」の少なさが背景にある、と見る。

この調査で、日本の子どもは、55%が「趣味で読書することはない」と答えていた。高校生の二人に一人は、自ら望んで本を手に取ろうとしない。これは、参加国の平均32%を大きく上回る〉(読売新聞、2002年10月11日東京朝刊「[読書していますか](1)文章書けない学生」)

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〈読書量と国語学力には明らかな相関がある。OECDの読解力調査でも、日本の場合「趣味で読書することはない」と答えた生徒の平均得点は514点だが、「毎日1時間から2時間読書する」生徒の平均得点は、541点で、27点高い。ところが、フィンランドの「毎日1時間から2時間読書する」生徒の平均得点は577点で日本より36点も高い。つまり、フィンランドではよく読書する生徒が高い得点を取るような教育が行われているのであろう。(中略)

学力が低下するのではないかという心配を心から解消するためには、親や教師が一丸となって読書教育を推進する必要があると思う。なぜなら、読解力はすべての学力の基礎だからである〉(有元秀文[国立教育政策研究所総括研究官・当時]「読書教育の曙光」、「図書館雑誌」Vol.97, No.6(2003年6月号)、377,378ページ)

このように、PISAのスコアがトップであるフィンランドと日本の子どもを、読解力と読書量から比較し、「日本の子どもは読書量が足りないから読解力が低く、記述式の問題が書けないのだ」と結びつけている。