タイトルの通りである。
私は理系大学院の修士過程を卒業し、IT企業(所謂SIer)に勤めて3年、タイトル通りの仕事を続けていたら、鬱病になった。
現在は医師の診断書を会社に提出し、休職期間をいただいている。
そして休む中で気分が上を向いたスキを狙ってこの記事を書いている次第である。
・伝えておきたいこと
就活を控えた大学生や大学院生(特に後者)には注意してほしいことは、「残業時間がヘビーでなくても精神をやられることは有り得る」ということ。
具体的には、残業時間はピークで50時間/月、平常時は10時間/月 未満といった具合であった。
そして、タイトルが「ブラックな働き方で~」とか「上司のパワハラが~」となっていない辺りでお察しかと思うが、弊社は多分ブラック企業ではない(多分というのは1社しか勤めたことがないため)。
となると、やはり、仕事内容が私に合わなかったのだろう。
考えてみれば、本当に心の底から楽しいと思える仕事で残業をし続けても精神は壊さないと思う(勿論限度はあるが)。
仕事による精神的ダメージは「仕事のつまらなさ」に「拘束時間」を乗じたものである。
※ちなみに「Excelにスクリーンショットを貼り付ける仕事」を説明すると、
システムを操作しながらスクリーンショットを撮影し、それをExcelのシートにペーストすることで、エビデンス(証跡)としたり、システムの操作マニュアルを作成したりする……
ことである。
・就活生に向けて
数年前の就活中の自分に声をかけるなら……
「残業時間が少なさをウリにしている会社に釣られるな」
※理由は前述の通り。残業時間だけでは自分がいざ働いたときの辛さははかれない。
「IT企業の「文系でも歓迎」は危ない」
※理系が所謂『文系でもできる仕事』に従事するとロクな感情を抱かない可能性が高い。
「ただし福利厚生は重視しろ」
※弊社は福利厚生だけは充実しているのでなんとか3年勤められた(勤めてしまった、とも言える)。
といったところだろうか。
・病気になるまでの過程
ここまで読んで、内容をご理解いただければ十分である。
以下は、完全に自分語りである。
もし以下を読んでみて、自分と重なるところがあれば、気をつけていただきたい。
大学 学部生時代
数学科に入学。理由は数学が好きだから。子供の頃から算数も数学も得意だった。
ε-δ論法を筆頭に高等数学の厳しさに震えながらも必死に勉強した。
ここで特に興味を惹かれる「数学のある分野」に出会い、そのまま研究室への配属も決定した。
卒論を書いて無事卒業。成績も良好だったので「デキる方」だと自覚していた。
親しい友人もこの4年間でできた。
大学 大学院生時代
数学のとある分野を研究する日々。
博士課程への進学を考えていたが、修士論文を執筆中にふと悟る。
「ああ、俺には研究者としての素質が備わっていない」
今後、研究者として生きていくのであれば、最も喜ぶべき瞬間は「問題(研究対象)を見つけた瞬間」であろう。
自分のように与えられた問題を解いて喜んでいるだけでは、研究者は務まらないと感じた。
所詮、"お勉強"が得意なだけの人間であった。
根本的知的好奇心が欠如していることを悟ってしまい、修士で卒業して就職する道を目指すことに。
社会人 1年目(研修期間)
まずは会社の研修所に配属される。
ここで今までとは異なるストレスに見舞われる。
1つ目は同期を含め、会社内で人種がバラバラであること。生まれが違う、理系じゃない、頭の出来が違う、etc...
そんなわけで、とにかく馴染めない、年齢の近い同期(正確にはほぼ2歳下だったが)と話が合わない状況が続く。
2つ目はビジネスマナーや社会人力研修などという唾棄すべきもの。これらを受講していたら……研修中にぶっ倒れてしまった。過剰なストレスによる過呼吸である。
しかし、一応、IT企業とは名ばかりではなかったようで、みっちりとプログラミングの講習も受けた。数学科出身なのでCやJavaの経験はあったが、実際にWebシステムを開発するのはこれが初めてだった。
研修最後の講評では全体の中でも最優秀との評価をいただき、「ああ、この先の人生、プログラミングで食っていくのかなぁ」となんとなく感じた。
社会人 1年目(配属後)
この辺りから暗雲が見えてくる。
いざ配属された部署が……この記事タイトルの通りの仕事をする箇所であった。
・お客さまと会議を繰り返し要件を固める(要件定義フェーズ)
・それをExcelの設計書に落とし込む(基本設計・詳細設計フェーズ)
・出来合いのソフトのパラメータを弄り、Excelにスクリーンショットを貼り付ける(製造)
・ソフトを手順に従って操作し、Excelにスクリーンショットを貼り付けてエビデンスとする(単体・結合・総合テスト)
といった具合である。
つまり、高等数学も、必死に勉強したプログラミングも、一切使わない、そんな仕事だ。
次第に、「果たしてこれは私がやるべき仕事なのだろうか?」「大学院修士まで卒業してコレか?」「というかバカな文系にやらせればよいのでは?」といった負の感情が渦巻くように。
そんな仕事の合間合間にやってくる飲み会では、同い年の先輩(先輩は学部卒のため)に幹事の仕方、酒の注ぎ方で注意される日々……。
些細なことで気分が物凄く落ち込むようになり、会社のトイレでずっと泣き続けることもあった。
それでも「これは自分の精神が軟弱だからだ」と決めつけていた。
社会人 2年目
1年目と仕事内容は変わらず。
しかし仕事量は増えていき、ピーク時は毎晩22時まで残業もザラに。
この辺りで、職場に居るときに頭痛や吐き気、目眩を感じるように。急に泣き出してしまうこともしばしば。
流石に何かがおかしいと思い、内科を受診。頭痛薬などを処方してもらうがあまり効かず。
両親に相談すると、精神科(心療内科)に行くべきだと助言を受ける。
幸い、近所に精神科があったので受診をしようと思ったものの、なかなか足が動かず。予約の電話も気が進まず、受診を思い立って2ヶ月後にようやく電話予約。
いざ診断を受けてみると……「不安障害」とのこと。
薬の処方と併せて、診断書をしたためてもらい、会社に提出。
薬を飲みながら、業務時間を軽減する方針となる。
実際、ピークを過ぎてしまえば残業は10時間/月に届くか届かないか程度であった。
社会人 3年目
「不安障害」との診断を受け、会社に診断書を提出し長時間残業が禁止され、業務ピークは過ぎて早く帰れる毎日が続いても、仕事の辛さは軽減されず。
仕事がつまらん。
より正確には、「自分の能力を必要とされていない」と感じた。
だって、Excelにスクリーンショットを貼り付けるのって、両手さえあればできるからね。
Alt + PrintScrn、Ctrl + V、Alt + PrintScrn、Ctrl + V、……
そんな中、仕事の第二次ピークがやってくる。
しかし長時間残業が禁止されているため残業もできない、だから仕事は終わらない。
仕事が終わらないけど早く帰る、早く帰るから時間が余る、余った時間でゲームをやる。
つまらないのは仕事だけでいいのに、普段プレイしているゲームもつまらなく感じてくる。
そしてつい先日、症状が更に悪化する。具体的には
・強烈な頭痛と胃痛が慢性化(頭を締め付けられるような、胃を握りつぶされるような痛み)
・ご飯が食べれない(食べると気持ち悪くなる)
・趣味に打ち込めない(そもそもやる気力がわかない)
・お風呂に入れない(そもそも風呂場まで行けない)
・部屋の掃除ができない(物を片付けられない、ゴミを捨てに行けない)
・眠れない(夜中に1時間ごとに目が覚める)
・とにかく気分が憂鬱で頭が重い(頭が重すぎて布団から起き上がることが困難に)
といった症状が現れた。
トイレと布団を往復するだけの生活。
流石にやばいと感じ、病院まで這って行く。
症状を医師に伝えると、「鬱病」との診断が。
その後は診断書を会社に提出、今はすこしだけお休みを戴いている。
・結局どうすれば良かったのか
もっと早めに精神科・心療内科を受診すべきだったとは思う。
そうすれば、各種症状に対して「これは自分の精神が軟弱だからだ」ではなく、ちゃんとした病気として向き合えたと思う。
というか、研修中にストレスでぶっ倒れるヤツなんて私以外に居なかった、おかしいと思え。
そもそも就職先を間違えたとも思う。
しかし今考えても「数学科(修士)が優遇される就職先」がまるで浮かばない。
もしご存じの方がここを読んでいたら、是非とも教えていただきたい。
いや、更にそもそも、数学科に進学したのが間違いなのかもしれない。
必死こいて勉強して、研究したところで、結局世間には必要とされていなかった。
それでも、なまじ大学での成績や研究実績があるばかりにプライドばかりが高くなってしまった。
つまらない仕事を、自分の人生の着地点なのだと諦めることができなかった。
・ここまで読んだ人へ
ありがとうございます。
有益な情報がない無価値な自分語りですが、どこかでご自身と通ずる箇所があれば、気をつけてください。
鬱は"心の風邪"ではありません、風邪とは比較にならないぐらい内科的症状が苦しいです。勿論、精神的にも参っているため、日常生活がままならなくなります。病院へ行って、適切な処置を受けてください。
また、会社で人事権を持っている方々へ、不適材を不適所に配属すると使い物にすらならなくなることがあります。ご注意ください。