もみ殻を固形燃料に変える装置を製造するトロムソ(広島県尾道市)にアフリカから熱い視線が注がれている。8月に横浜市で開かれたアフリカ開発会議(TICAD)では各国の政府関係者が同社の展示ブースを訪れた。エネルギー供給と環境の保全が両立できる装置への注目度は高く、「最後の巨大市場」とも称されるアフリカで着実に足場を築き始めている。
「マダガスカルの大統領が強い関心を示してくれた。数十台の購入に向けた調整に入れるだろう」
輸出部門担当の上杉正章執行役員が、大口の商談成功に自信をのぞかせる。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の浸透を追い風に、同社の固形燃料製造装置「グラインドミル」への引き合いは年々強まっている。
グラインドミルはもみ殻をすりつぶし、高温で圧着することで固形燃料「モミガライト」をつくる。もみ殻をすり潰す部品には、船舶用エンジンにも使われるタングステンを吹き付けるなど、瀬戸内発の造船技術も利用されている。
アフリカでは経済の発展に伴いエネルギー需要が拡大している。一方で、薪炭の利用拡大で森林が減少しつつあることが課題だ。
モミガライトの発熱量は1キログラムあたり4000キロカロリーと薪炭と同じ水準ながら、燃やしても大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)は出ない。コメの副産物であるもみ殻をエネルギー源として活用するニーズは環境保全の観点からも広がると同社はみている。
トロムソは2007年、船舶の熱交換器を製造するハリソン産業因島(尾道市)創業者で元社長の橋本俊隆氏が発足させた。「海から陸に上がり新しいものづくりがしたい」との思いで、造船業の技術をグラインドミルに生かした。
アフリカに進出したのは12年、国際協力機構(JICA)とタンザニアで市場調査に乗り出したことがきっかけ。政府関係者の視察なども多く入り、18年までにタンザニアやナイジェリアなどに20台超を販売してきた。技術移転による現地での組み立て支援も進め、国内で1台約600万円の価格を現地では半分程度まで抑えた。
グラインドミルの製造や販売だけでなく、固形燃料のモミガライトを応用した浄水器など、新商品の開発にも乗り出している。モミガライトの炭からできる「もみ殻活性炭」をフィルターにした浄水器は、アフリカだけでなく東南アジア向けにも引き合いが強まっている。もみ殻由来のフィルターは微小物質の吸着率が高く、ジュースも透明になって出てくるほどだ。
TICADでは「確かな手応えを感じた」と上杉執行役員。独自の技術力を強みに、アフリカへの展開に弾みをつける考えだ。
(広島支局 田口翔一朗)