愛子さまの「慈愛に満ちた素顔」 優しい気配りのなかに、皇族としての「強い自覚」



何度かブログに書いてきたが私はかつて男系男子による皇位継承が当然であると思っていた。が、10年ほど前から徐々に女性天皇・女系天皇を容認してもよいと思うようになった。このように思い至った理由について述べていきたい。

パトスとロゴス

小説家であり政治活動家でもあった三島由紀夫は、東大全共闘との討論で「なぜ自身が天皇陛下を尊崇するのか?」その理由を次のように述べている。

ぼくらはつまり戦争中に生まれた人間でね、こういうとこに陛下が立ってて、まあ座っておられたが三時間全然微動もしない姿をみて、とにかく三時間全然木像のごとく微動もしない。卒業式で。その天皇から私は時計をもらった。そういうね、個人的な恩顧があるんだな。こんなこと言いたくないよ俺は。言いたくないけれどもだね、人間の一人の個人的な歴史の中でそういうことはあるんだ。そしてね、それはどうしても否定できないんだ俺の中でね。それはとても立派だった。

1969年5月13日 東大全共闘との討論

このような経験は誰にでもあるだろう。

たとえば政治家はたえず老人ホームなど公共施設に赴いて地元民と交流を深めている理由は、このような「一個人の原体験」を通して支持を集めるためだ。たとえその政治家の思想信念を悉知していなくても、このような原体験があればその政治家を応援してに投票してしまうものだ。 時としてパトス(感情)は、ロゴス(論理)に勝る。

距離感の大切さ

いみじくも三島由紀夫が「否定できない」と告白したように、 皇族方のもつオーラというのは凄まじいものがある。テレビなどで「雅子さまー!」「紀子さまー!」などの歓声がよく流れるが、実際にお会いしたり見かけたりした方なら解るだろう、皇族方に笑顔で応えていただけるというのは本当に感動して尊崇の念がこみ上げるものだ。まさに「カリスマ」だ。

逆に宮内庁に務めていると、皇族方と距離が近すぎて「人間」としての側面が色々見えてしまい、尊崇の念が冷めてしまうこともある。私は上皇ご夫妻の近辺にお仕えする時間が長く、天皇皇后両陛下のそばにお仕えする機会は少なかった。そのことが逆に作用して、天皇家や愛子さまへの尊崇の念を高まらせている可能性があることは否めない。

現皇室は「開かれた皇室」を目指し、国民に寄り添おうと努力されているが、あまりにも開かれすぎるとイギリス王室のように陥ってしまうのではないかと心配してしまう。眞子さまと小室圭さんの結婚延期騒動はこの象徴だろう。

このままでは日本の皇室報道は、海外のタブロイド紙のようになっていくのかもしれない。だが、まだまだ皇室は厚いベールに包まれた世界だ。

愛子さまの思い出

このような適度が距離感が、私に愛子さまへの尊崇の念を生ませのかもしれない。最後に、私にとって「否定できない」原体験を一つ紹介したい。

いまから10年前の冬のことだ。東宮御所で立食パーティーがあり、私も駆り出された。皇太子家の食事の準備は大膳課が担当するか、人手が足りない場合も多く大抵は総力戦になる。配膳も同様だ。私は料理はできないので、配膳のほうを手伝うことになった。

が、生来の不器用さゆえに、お盆にのせた料理を床に落としてまった。大変な失態であり慌てて落ちた食材を拾い床を拭いた。が、なんとその時、愛子さまがハンカチを取り出し膝をつかれて、落ちた食材を拾ってお手伝い頂けていたのだ(変な敬語で申し訳ない)。

本来ならば、愛子さまのお手を煩わせるなどあり得ないことで、その場で「大丈夫でございます」などと言ってお断りするべきなのだろう。しかし私は目先の掃除に気を取られていて、愛子さまだと気が付くのがだいぶ遅れてしまった。まさか愛子さまがお手を汚してまで手伝い頂けていたとは、正直、大変驚いて衝撃を受けた。本当に何一つ曇りのない笑顔でお手伝い頂いた。そのお姿はまさに「皇族」の鑑であると思ったし、愛子さまはお名前の通り「慈愛」に満ちた方だと確信した。

このようなことをしていただいたのは、宮内庁生活を通し愛子さまだけでる。人によっては愛子さまの行動は「皇族として軽率」だと思うかもしれない。だが私にとってはまさに「否定できない」原体験なのであり、笑われてしまうかもしれないが、廊下に下がった後、あまりのありがたさに涙が出た。さりげなく食材を拾われた愛子さまのあのお姿は本当に立派であり、生涯忘れることはできないだろう。このような原体験があるからこそ、私は愛子さまに天皇に即位いただきたいと願ってしまうのだ。



3 件のコメント

  • 泣きました~!
    やっぱり愛子さまですね。そうだと思います。そんなお方だと思っていました。
    秋篠宮さまか紀子さまだったら叱責されていたでしょうね。
    素敵なお話、ありがとうございます。

  • 小内様

    決して表には出ることのない、貴重な心温まるお話をありがとうございます。
    小内様の感動が伝わってくるようでした。

    愛子様は将来どんな道を歩まれたとしても、立派に生きて行かれる方だと改めて思いました。
    ありがとうございます。

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