普段は、某大学病院の内分泌内科に通院している方と、偶然お話する機会がありました。初対面のかたでした。
内分泌外来とは、甲状腺疾患、糖尿病などをメインにしている診療科です。
その患者さんがいうには、
内分泌内科の担当医に「最近物忘れがひどいので認知症の検査をしたいのだが、どうしたらいいか」と毎回聞いているが、忙しさもあってか毎回スルーされていますと。
あれは何なんでしょうか?と聞かれました。
その担当医の先生も、ひとこと隣りの脳神経内科を受診してくださいと言ってくれれば話は簡単なのですが、大学病院という組織が抱える問題点がこのエピソード現れているなあと思い、今回の話題にしてみました。
大学病院は基本的にどの外来も混んでいます。
今回のケースでは、内分泌内科の担当医が同じ院内の脳神経内科へ紹介すれば済む話です。
同じ病院内だから、各診療科が連携しているはずだ、と思っている人多いですよね?
これが大きな誤解です。
形式上は紹介が可能ですが、連携は皆無に等しい世界です。
大学病院はそもそも「効率の良い」診療が提供される場所ではありません。
大学病院の使命は、診療・教育・研究です。
診療とは、当然患者さんの診療のことですが、
大学病院にしかない機器などを使用した治療を必要とする患者さんにとって存在しているのが大学病院の診療部門、と言い換えても過言ではありません。
そんな特殊な治療を必要とするのは、世の中のほんの一部の疾患だけです。
8割の一般的な治療は、一般病院の方が上です。
(少なくともよく知っている循環器分野では)
ここにも大きな誤解があります。
次に教育ですが、主には医療の新人教育です。
研修医の先生方は、いまでも多くの人が研修病院として大学を選択します。
研修医に限らず、看護師、薬剤師なども一緒で、大学病院はこれらの新人を素人から一人前にする、という役割を期待されているのです。
大学病院の外来で、何分待たせるんだ!と抗議されている方がたまにいらっしゃいますが、時間がかかってあたりまえなのです。
新人がトレーニングを受ける場所なのですから。効率よく診療なんてできるわけがないのです。
これは他の仕事でも同じですよね。仕方ないと割り切って大学病院には受診すべきです。
最後に研究は、大学病院にしかない機器を使用した治療、というものと表裏一体で、最先端の治療を提供するので、そのデータを取らせてください、ということと理解していただいて良いと思います。
最先端の治療がどういう結果になるのか、研究をしっかりして、その情報を医療の進歩に役立ててまた患者さんに還元するということが大学病院には求められています。
以上のように、一般病院は診療だけで良いですが、大学は診療・教育・研修という三つの義務を課されながら日々動いているため、非常に多忙になるのが一般的です。
(正確には、一般病院でも大学以上に研究をしっかりして社会に貢献しようという高い理念を持った病院はたくさんありますので、念のため記しておきます)
ですので、診療科どうしが連携をとりたくても、連携を深めようとか話し合っている時間も余裕もない、というのが正直なところかと思います。
今回のケースでは、大学病院の内分泌内科でその分野の治療を受けていらっしゃる方のお話でしたが、たぶん正解は、認知症の評価・治療を専門にしている「脳神経内科」のクリニックもしくは一般病院を自分で調べて、受診する。です。
自分なら、おそらくそうします。
大学の新患外来(初めて受診するひとが行く外来)は新人が担当することがほとんどです。
大学の新患外来は、一般のクリニックにいる専門家がある程度診断をして、そこからの紹介を受ける場所、というのがたぶん正解だと思います。
おそらくもともとはそういう外来だったのが、徐々に変化していったのではないかと思います。
まあ、大学病院によっても例外はあるでしょうけど、今回は一般論を書いてみました。
もちろん、今回の話に科学的根拠はありません笑