「就職活動でのセクハラに、実効性のある対策を」ーー。
「就活セクハラ」をめぐり、学生有志のネットワーク「SAY」が12月2日、厚生労働省や企業、大学に対して具体的な対策を求める記者会見を行った。
厚労省は10月、パワーハラスメント関して事業主が講じるべき指針案を示した。指針案では、就活生に関するハラスメント防止対策は「(行うことが)望ましい」という表現にとどまっており、具体的な対策に踏み込んでいない。
「SAY」は11月18日、この指針案について「抑止力は全くない」として緊急声明を発表していた。
「彼氏つくらないと」 おかしいと思っても反論できない
厚労省で行われた記者会見には、女子学生4人と、東京大学の林香里教授、上智大学の三浦まり教授が出席。
女子学生の1人は、就活でインターンやOB訪問などをしている中で「早めに彼氏つくらないと売れ残っちゃうよ」「すぐに結婚すると困るからやめてよね」など、採用に関係のない質問や発言を何度もされたという。
就活生と入社を希望する会社の社員という関係上、おかしいと思っても「笑ってごまかして、反論できなかった」とし、「こうしたつらい中での就活を後輩に経験させたくない。安心して社会に出てほしい」と話した。
また、「就活生は、社員と出会うすべての場面を就活の一環だと思っている」と指摘。OB・OG訪問など業務外とされる部分での対策の重要性を訴えた。
緊急声明では、就活を取り巻く環境もセクハラを助長していると指摘。
日本では「新卒であること」が重視されるため就活が人生を左右するイベントになっていることや、就活の方法が面接だけでなくインターンシップやOB面接など多様化しているため、社会人と学生が個人で関わる機会が増えていることなどが背景にあるとしている。
「学生が動かないと変わらない」
被害者が周囲に相談できない現状もあるという。
慶応大学大学院2年の對馬尚(つしま・なお)さんは、被害当事者は「隙があるからいけないのでは?」などと言われないか不安に感じる人も多いと指摘。こうした被害者を責めるような風潮があることを踏まえ、「被害者に落ち度はないと国が明確に示していく必要があります」と語った。
「現在大学2年生の学生にも被害が出始めています。友人を守って頂きたいです」と強く訴えたのは、国際基督教大学2年の山下チサトさん。
大学に対し、学生からの報告を待つといった受け身の対応ではなく、ハラスメントについてのアンケートの実施や相談窓口の設置など、学生が声を上げても無駄だと感じることのない対策を求めた。
その上で、「学生にも伝えたいことがあります」と力を込めた。
「就活セクハラについて悩まずに過ごせているとしたら、それは運が良かっただけです。今日や明日、もしかしたらすでに過去に、あなたの友人が被害を受けている可能性もあります。学生自身が動かないと変わりません。当事者意識をもってほしいです」
このほか、身体的性別で就活のマナーが決められていることへの疑問や、企業の採用に関わる社員や学生もハラスメントに関する知識を得ることの大切さも訴えた。