その日、アルシェ・イーブ・リイル・フルトはいつも通りに不幸だった。
帝国に数多存在するワーカーチームの中で、“フォーサイト”のメンバーである彼女は割りのいい仕事を受けるはずだったが、実際に聞いてみるとその内容があまりよくなく、仕方なしにモンスター退治を一つだけ受けていた所だった
今回の依頼は付近の森に生息するモンスターの中でも比較的容易に討伐出来るモノであった為、フォーサイトの他のメンバーとは別に一人で依頼を受けていた。彼女はこうして、チーム内で認められた時は一人で依頼を受けることもあった。
彼女はとある理由によってどうしても金が必要だったのだ。未来有望であった魔法学院を自主退学してまでワーカーという仕事についているのは、彼女にとって大切なモノを護る為。人間の清濁を常に見せつけられる仕事ではあるが、彼女はそれでもたまに大きな稼ぎを得られるこの仕事に満足していた。
そんな彼女は、依頼されたモンスターの討伐を終えて帰路につく途中に少し欲が出た。
少しでも多く金が欲しい彼女は、依頼内容とは別に小遣い程度にでもなるモンスターを狩ろうとしたのだ。
モンスターは部位によっては高く買い取ってくれるモノもある。このあたりのモンスターは危険度が低く、魔法詠唱者である彼女は〈フライ/飛行〉の魔法も使える。命の危険は限りなく少ないからこそ、今回の依頼を一人で受けている。
さらに言えば、彼女自身は大きな金を手に入れる為に今以上に強くなりたいとも思っており、こうして個人的な実践経験を積むことも必要だとは常に思っていた。
ワーカーのチームとして連携を鍛えるのはいいことだ。だがしかし、己自身の実力は上げておいて損はない。むしろ得しかない。彼女としてはずっとフォーサイトとして活動していければいいと思っているが、ワーカーという仕事上、いつ何があってもおかしくないと考えている。だからこそ、こうした一人での仕事もたまに受けているのだ。
彼女が一人で仕事を熟すことに抵抗がないのは、彼女の持つ、とある一つの能力も関係している。
アルシェには“タレント”と呼ばれる、生まれた時から持っている特殊能力があるのだ。稀にタレントを持っている人間が生まれるこの世界で、彼女の能力はかなり有用なモノである。
彼女の目は、相対するモノの魔法的強さを見極めることが出来る。相手の身体にオーラのようなモノが見えて、それで第何位階までの魔法を使えるか分かるのだ。
例えば魔法を一切使ってこないと思われる敵が急に魔法を発してきたなら、それは脅威になりえるだろう。しかしアルシェが居ればそれは起きない。なにせ相手がどの程度の魔法を使えるか分かるのだから。
彼女自身、魔法学院に通っていた経験から魔法的強さをよく知っているので、自分が扱える第三位階未満を使用する魔物としか戦うことはない。接敵の時点で圧倒的なアドバンテージを持てる彼女は、こうした野良の魔物狩りや盗賊狩りなどには重宝する存在であると言えよう。
だがそれも……彼女の理解の範疇を出ない相手としか遭遇しない……そんな状況であればこそ。
声が聞こえたのだ。モンスター狩りの為に神経を研ぎ澄ましていたからだろう。彼女は森の中で、声を聞いてしまった。
ワーカーになって現実的なことを考えるようになった彼女といえど、まだ人としての善性を無くしてはいない。故に彼女は、無意識のうちに声のする方へと向かってしまった。
――もし……森で迷ってしまった不幸な人がいるのなら……
もしかしたら罠かもしれない。もしかしたら悪人かもしれない。
だが……もしかしたら、不幸な人かもしれない。
彼女はまだ若く、そして優しい。
アルシェ自身を不幸足らしめている存在のことさえ、未だに切り捨てられないくらいに“優しい”のだ。
優しい彼女は、僅かに声が聞こえたその場所に向かってしまった。そして――
「……ぅ……っ……」
後悔すると同時に、必死に手で口に蓋をした。
アルシェは自分のタレントを呪った。他者の力量を見れるこの能力を生まれて初めて呪った。益しか齎さなかったこの能力が、如何に役立たずであるかを知り、それによって自分が危機にさらされている現実を呪った。
見えなければよかった。見えなければ……彼女はこの、胃の底から逆流してくるモノを押さえつけなくてもよいのだ。
彼女の目の前には、禍々しく、悪辣で、破滅的な魔力の奔流が溢れていた。
人の声がしたはずなのに、そこには見たこともない異形が……本能的に拒否してしまうような魔力を揺蕩わせてそこに居るのだ。
咄嗟に口を蓋しなければ、すぐにでも吐瀉物をまき散らしていたであろう程に、彼女の目の前にいる存在の魔力は異常だった。
学院の時のアルシェの師は、この世界でも最強と呼ばれる魔法詠唱者。だからこそ、彼女はこれまでどんな敵であっても魔法力の上限を見極めることが出来たのだ。
しかしそれを軽く凌駕するこの存在はなんだ。師の魔力が虫けらにも思わせるほどのこの存在は……
――逃げ、なきゃ……はやく……速く……っ
戦慄し、恐怖し、焦燥し、困惑した思考をどうにか回す。
今にも吐瀉物をまき散らしてしまいそうになる胃を叱咤しつつ、彼女は呼吸を殺して動こうとした。
しかし……彼女はやはり不幸だった。
偶々、大きめの枯れ葉が下にあった。
偶々、彼女の足がそれを踏んづけた。
偶々、今日という日はからりと晴れていた。
だから偶々……アルシェにとっては最悪のタイミングで……カサリ、と音が鳴った。
身体が凍り付く。一歩も動くことが出来ない。恐怖から文字通りに戦慄し、彼女はその存在に目を向ける、向けてしまった。
近づいてきたソレは、もう目の前に居た。
そして彼女は……もはや心の底から込み上げる恐怖と、腹の奥底から込み上げる不快感に抗うことなど出来ず――
「おげぇぇぇぇぇぇ!」
盛大に吐いた。
†
目の前には胃の中のモノを吐き出した少女がいた。嘔吐したからか、はたまた別の理由か、少女は目に涙を浮かべて震えていた。
胃液特有の酸っぱい匂いが立ち込める中、ウルベルトは普通にショックを受けていた。
――顔見ただけで吐くとか失礼過ぎない……?
苛立ちはない。怒りはない。ただショックだった。初対面の相手に対して、話しかける前に吐かれたのだ。彼のショックは計り知れない。
普通に考えてほしい。何処かに旅行に出かけた時に、街行く人に道を聞こうとしたら目の前で嘔吐される……通常の感覚を持つ人ならば誰であってもショックを受けるだろう。
混乱の極みにいたウルベルトだが、目の前で嘔吐されるという異質な事態に落ち着きを取り戻してしまった。目の前の少女にどう接するべきかと考え、無意識のうちに己の“山羊の頭”をぽりぽりとかいて……自分の身体が変わっていることに気づくほどに。
――ゲームの感覚じゃねぇ。俺の頭が確かに此処にあるし温度も感じる。何よりも表情が動いてるし、匂いも味もある。
金色の瞳を細めて思考に潜りながら、彼は一つ、一つと確認していく。
――それに吐くなんて動作はAIになかったはずだ。見たところ装備も貧弱だし、なんとなくだけど強さを全く感じない……クソ企業の話の通りならギルド拠点も持ってない初心者は被害にあってもないはずだ。
それならこいつはNPCか? もしくは雑魚敵? ギルド新規参加の初心者? 分からないことだらけだ。とりあえずなんか話してみて反応が返ってくるか確認を……
心は決まった、とばかりにうんうんと頷き、ウルベルトは山羊頭ながらも柔和と思える笑みを浮かべた。
「すみませんがお嬢さん、質問よろしいですか?」
出来るだけ丁寧に。紳士とはこういうモノではないかという思い込みだけで言葉を流す。
彼は悪魔だ。だが悪魔としてのロールプレイでは、彼は上品な仕草や言葉遣いに拘っていた。
ウルベルトの創り上げた一体のNPCは、言葉遣いも仕草も気品に溢れている。自分自身の最高傑作であるそのNPCは、自分の理想を詰め込んだモノなのだ。故に悪魔ロールをする時の彼は、彼自身もそうあれと心がけていた。
対して、少女はビクリと身体を跳ねさせただけで顔を上げることはなく、返事もない。また僅かにショックを受けたウルベルトは小さくため息を吐きつつ己の顎鬚を触った。
そこで彼は、初めて自分の感覚がズレていることに気づく。
――あ、そうか。この子は人間だけど……今の俺、悪魔じゃん。
五感がある。ユグドラシルでも知らない場所にわけのわからん状況。今の現状は二つに一つ……とりあえずやってみたいことが一つ。
この五感があるという事態がウルベルトの考えている通りなら、異形種というだけで恐れられることになる。そう考えた彼は少し切り口を変えてみることにした。
沈黙は幾瞬。その間に自らの状態を確認し、少女に聞こえないように、口の中だけでぽつりとある一つの言葉を呟いた。
「〈センス・エネミー/敵感知〉」
淡く、彼の身体が光る。
自分の予測が正しいことを確認し、彼は口を歪めて微笑んだ。
「……お答え頂けない。それならこちらにも……いや、俺にも考えがあるが」
瞬間、少女は顔を上げる。砕けた口調で話す彼に目を向け、再び恐怖によるものか込み上げるナニカをこらえるように口に手を当てていた。
懇願するような目。恐怖に支配されている目。溢れる涙は彼女の絶望をこれでもかと表し……ウルベルトは心の底が歓喜に疼いた。
予測を試すならば今しかない。ウルベルトは今から自分が行うことを考えても、なんら忌避感を持っていないことに驚きつつ、自身の歓喜を抑えながら唱えた。
「……〈ドミネート/支配〉」
ウルベルトの呟きが木々の間に消える。
目の前の少女の瞳から光が消えうせた。絶望の中にも生きようという意思がそこにあったはずなのに、今の彼女にはそれはない。
表情すら無表情に変わり、すっと、口を抑えていた手を下ろす。
成功したことにほっと安堵したウルベルトは胸をなで下ろす。とりあえず時間は出来た。せっかくに情報源を逃すことこそ愚かだと彼は判断した。だからこそ、彼は一つの魔法を選んだ。
彼が唱えた魔法は他者を支配する魔法。対策をしていれば、というかユグドラシルのプレイヤーならほぼ百パーセント対策をしているはずの魔法である。それが効いたということは、彼女がプレイヤーである可能性は極めて薄い。あとはウルベルトが質問していけばいいだけ。
「さて、俺の質問には全て答えて貰う」
「……はい」
生気のない声と表情。人形のような少女を見てもウルベルトはなんら心が痛まなかった。
普通ならば罪悪感などが湧き出るはずの自分に違和感を覚えたが、今は考える時ではないと切って捨てる。
「此処はどこだ?」
「……バハルス帝国南西の森です」
何処だよ、と心の中で毒づくも顔には出さない。
「お前の名前は?」
「アルシェ・イーブ・リイル・フルトです」
「お前の他に誰かこの森に来ているか?」
「いえ、私だけです」
「お前の強さは?」
「第三位階の魔法を使える魔法詠唱者です」
その程度か、と呟いて彼は考える。
――こいつは脅威にはなりえない。色々と聞きたいことはあるが、魔法の効果時間がどれだけか分からない以上、早めに重要なことを聞いておくか。
「此処は……ユグドラシルの何処だ?」
「……ユグドラシル、というモノが何かわかりません」
「なんだと?」
全く予想外の答えに彼の思考は真っ白になった。
「他のユグドラシルプレイヤーはどうした? 俺以外にもログインした人間はいるはずだ。そいつらは……」
「ユグドラシルプレイヤー、というものを存じ上げておりません」
感情の籠っていない無機質な返答に、ウルベルトはギシリと歯を噛み鳴らす。
――つまりなんだ? 此処はユグドラシルの中じゃなくて、全くの別世界ってことか? なんだそりゃ……どんなライトノベル展開だよ……
異世界に転移したという予測に至り、彼の目的であるモモンガの捜索は大きく難しくなったと見ていい。
この少女は知らなくとも、他にユグドラシルプレイヤーが来ている可能性はあるのだ。
ゲームのアバターが現実になったということは、彼は、ウルベルト・アレイン・オードルは、そしてアインズ・ウール・ゴウンは……他のプレイヤーから恐れられる可能性がある。
そこまで考えて舌打ちを一つ。
「……ああ、めんどくせぇ。異世界転移とかペロロンチーノさんにやらせてやれ……俺の柄じゃねぇ。
とりあえず聞ける限り聞いていくか」
今はもう会うこともなくなった友人ならば、嬉々として今の状態を楽しんだのではなかろうかと一人ごちる。
現状の把握と状況の打開。一つ一つ熟して、少しずつでもいいから手がかりを集めることが、何より優先であろう。
「……モモンガさんを探すには……拠点の確保と情報網が必要だわな。このガキにちょっと世話になることにするか」
盛大にため息を吐き出して、彼は再び思考を巡らせる。
大災厄の受難はこうして始まった。
†
夜の帳が落ちた頃、肌寒い空気を感じてアルシェは目を覚ました。バッと起き上がって自分が気を失っていたことに初めて気づく。
「うそ……生きて、る……」
意識を失う前に居た異形の化け物はどこにもいない。自分のタレントで見た、禍々しい魔力の奔流もどこにもなかった。
疲れて幻覚を見ていたのではないか。そうだ、きっとそうに違いない。
アルシェはほっと安堵のため息を吐き出して項垂れた。しかし――
「よぉ……アルシェ・イーブ・リイル・フルト。お目覚めかよ」
「ひっ」
背後からかかった声に振り向くと……幻覚だと思っていた存在が其処にいた。
ただ、先ほど感じた魔力を今は感じず、もう込み上げる吐き気に苛まれることはない。それならと、彼女の瞳に敵意が溢れる。
「またゲロ吐かれたら困るから認識阻害の指輪付けてるだけだぞ。俺はお前みたいな人間なんざ一発で吹き飛ばせる存在ってことを理解しろ」
思考を先読みされたことに目を見開いた彼女は、目の前の山羊頭の怪物が手に持っているモノに驚く。
「弱い杖だ。こんなビギナーでも使いそうにない杖でよく戦ってられるな?」
くつくつと喉を鳴らす怪物は、黄金の瞳を細めて笑う。
会話が出来る。それだけが彼女にとって唯一の生きる道。意識を失う前に見た魔力が怪物の実力ならば、到底彼女が敵うモノではない。
警戒する彼女に対して、怪物は杖を弄びながら穏やかに声を流した。
「寝てる間にお前の心の中を覗かせて貰った、アルシェ・イーブ・リイル・フルト」
「……どういうこと」
「そのまんまさ。鮮血帝によって没落させられた貴族、妹が二人、両親はクズでお前が家族を養う為にワーカーとして働いている。
借金はいくら返しても減ることはなく、せめて妹二人だけでも連れて逃げ出したい。今はその為の資金繰り中。お前は妹たちが助かるなら自分はどうなってもいいと考えるようなお人よし、しかし両親を殺すことすら出来ない臆病者、だろ?」
ゾクリと、彼女の背筋が凍り付く。
彼女の現状を言い当てられて、この怪物に全ての弱みを握られたことを理解した。
言葉も出ない。最悪の状況だ。彼女は正しく、絶望に落ちる。
しかし目の前の怪物は口を歪めながら、驚くべきことを口にした。
「俺と契約しろ、アルシェ・イーブ・リイル・フルト。俺ならお前の望みを叶えてやれるぞ」
「え……」
黄金の瞳が怪しく輝いていた。
「両親を殺すことも、莫大な金銭を手に入れることも、今以上の力を手に入れることも、妹二人に幸せな人生をくれてやることも……俺なら出来る。
お前が望むなら両親を殺さずに無力化することもしよう。お前が望むなら国一つだって落としてやろう。お前が望むならこの世界で最強の魔法詠唱者にしてやろう。お前が望むなら妹達が何不自由なく暮らし幸せを掴み取れる人生ってやつを創り上げてやろう」
甘い甘い誘惑の言葉。
怪物の言葉は荒唐無稽であろう。それは成された時にこそ分かるモノなのだから、何も起こっていない今この時に理解できるモノではない。
「ただ、契約しないってんならそれでもいい。その代わり、この俺の存在を知っちまったんだ……お前には消えて貰うだけだ」
ざわざわと森が騒めく。生ぬるい空気がアルシェの肌に纏わりつく。そうして見回して……彼女はその言葉の意味を理解し恐怖した。
森の木々の隙間を所狭しと異形が埋め尽くしてこちらを見ていた。
彼女はその存在を文献だけでしか知らない。埋め尽くすほどの異形、その全てが……悪魔だった。それも彼女のタレントで読み取れるのは……世界最強であるはずの師と同等かそれ以上の存在ばかり。
「な……なんで……私なの……」
危険だ、と思った。目の前の存在はこの世界にとってあまりに危険だった。
どうにか絞り出したのは疑問。自分が選ばれる意味が純粋に分からなかった。
「別にお前じゃなくたっていいんだ。誰でもいい。ただお前が都合よく此処にいて、俺と出会った。ただそれだけのこと」
なんでもない一言に彼女の息が詰まる。その黄金の瞳は、彼女のことを道端のゴミでも見るように見ていた。間違いなくアルシェのことなどどうでもいいと思っているに違いなかった。
「勘違いするなよ? 俺は別にこの世界を支配したいわけじゃない。世界を支配する魔王なんてのは俺には似合わない。俺はただ、会いたい人がいるだけだ。その為に俺はお前というこの世界での協力者が必要なだけ」
クルクルと杖を回して楽しそうに話す怪物は、アルシェの瞳を覗き込む。
「お前の最大の不幸は俺という大災厄に出会ったことであり……お前の最大の幸運は俺という大災厄に選ばれたことだ。
選べよ、アルシェ・イーブ・リイル・フルト。悪魔の手を取り魔女となって幸福を掴むか、ニンゲンとしての誇りを優先して大切な宝物を壊すか。お前はどちらがいい?」
悪辣な笑みは愉悦に溢れていた。まるで彼女の苦悩を餌としているように。
もはや彼女の命は目の前の悪魔の掌の上。彼女にとって……選択肢は一つしか残されていなかった。
差し出された掌に、彼女はそっと己の掌を乗せる。
「私は……ここで死ねない」
力強い光りを携えて、彼女の瞳は悪魔の黄金を穿ち抜く。きっと悪魔にとって彼女の存在など虫けら以下なのだろう。それでも彼女にはその悪魔の言葉を信じるしか生きる道はない。心だけは奪われないとでもいうように、彼女は悪魔を睨みつけた。
「契約成立、だな?
喜べ、アルシェ・イーブ・リイル・フルト。この大災厄の魔……“ウル”が、世界に奪われたお前の幸福というモノを奪い返してやろう」
誰も知らぬ森の中。一人の少女は大災厄と出会い、災厄の魔女となった。
この世界にとって最悪の存在と契約した少女は、己の不幸を唯々呪った。
空に輝く半月は、嗤っているように見えた。
中途半端だったのでウルベルトさんの話の続き。
上品で紳士な悪魔ロールをするつもりだったのにアルシェちゃんが吐きそうだったから断念したウルベルトさん。
今度こそモモンガ様の話を。