結婚相談所に男性がいない理由がわかった🍑

結婚相談所のブログが大ヒットしたのをきっかけに結婚相談所と婚活界隈の話題をいろいろ見てみたらモテ地獄に通じるものがあって暗澹たる気持ちになった。

 

2015年にモテブログ界隈とモテ本を追いかけてモテってなに?と考えたことがあったが、モテとパートナーシップは別物らしいというのがそのとき出た結論だった。モテは地獄だから適正がある人以外にはキツい。アスリートの適正がない人が千本ノックとかしたらぜったい身体壊す。きらびやかに見えるけどおすすめしない。

 

でもパートナーシップはいいよ!個人的に超おすすめだよ!と言うことで話は終わった。しかしパートナーシップを求める人達を繋ぐ仕事として知られる結婚相談所、婚活界隈って、なんかすごくモテ地獄みがある。なんで。プロと称する第三者の指導が入る分、なんならモテ地獄よりキツい。

 

 

ここ福岡は全国でも有数の独身女性多き街である。父が言うには「福岡でモテない男はどこへ行ってもモテない」。地元の女性も「男性はちょっとした社会人サークルに入ればすぐ彼女は出来る。出来ないなら何か深刻な問題がある」とのことだった。

 

東京からこちらに来てたくさんの若くてかわいい女の子たちと知り合った。誇張ではなく、本当に若くてかわいくまともな仕事に就いている性格のいいお嬢さんたちだ。彼女たちの多くは真剣に結婚を考えている。県内に居住する独身男性が少ないせいか遠距離恋愛も多く、彼氏が県外在住で彼の福岡出張でデート、会いに行くときは有休をとるというケースはめずらしくない。また彼女たちは低身長、薄毛、年の差におおらかである。加えて彼女たちの多くは九州男児に育てられているので交際の仕方にもいろいろとおおらかである。彼氏の親と同居して稼業を手伝うことにも割り合い抵抗がない。

 

それでも結婚にいたる人は少ない。

もちろん結婚相談所に入っている人もいる。マッチングアプリも利用する。紹介も頼む。こうして積極的に動くので交際までは結構こぎつける。でもなかなか結婚にいたらない。

 

こうした立場の弱さゆえか福岡の女の子に尽くされる気持ちよさに味をしめて出張中に遊べる彼女を探す悪質な男も多い。ここまで身を委ねてくれるとは真剣に将来を考えてくれているのだと欺かれ、心身ともに深い傷を負った人もみた。

 

全国的に婚活市場は女余りだと聞くが、婚活しぐさのいろはを見るに福岡女子はかなり好成績を残せそうな子たちが多い。いったい何かアカンのか。

 

だいたい福岡へ来るまでわたしの周りは結婚できない男たちの方が多かった。阿部寛とは似ても似つかないけれども年がら年中彼女がほしいと恨み言を言っているようなおっさんが履いて捨てるほどいた。ああいう人たちと懐深い彼女らは上手いことマッチングせんのやろか。

 

ほいで、あるとき結婚相談所の入会条件みて思ったんですよ。これは結婚相談所、男の人たち不利だわ。結婚相談所は入会時点から弱者男性を切り捨てているんだもの。

 

全国一大きな会員データベースを持っているというIBJは会員を学歴で足切りしているという。そのものズバリの表書きはないが、最低学歴は大卒、あるいは高専、専門学校卒というのが実態らしい。

 

一方大卒者の割合が50%を超えたのは2000年代に入ってからである。

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大学進学率をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース

つまり2000年代以前に成人した人のおよそ二人に一人はIBJに登録できない。

 

入会条件には経済状況もある。これも最低年収や貯蓄額は表書きされていないが、登録条件には定収入があることとある。現在就業者全体における非正規職員の割合はおよそ2割らしい。感覚的には正社員が8割もいるとはちょっと信じられないが、フリーランスや自営業者は枠外ということなのかな。

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正規・非正規就業者数の詳細をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース

 

全体の半分を占める高卒以下の学歴保持者がまず足切りされ、就業者のおよそ2割を占める非正規職員が足切りされると仮定する。これで全体のおよそ6割が婚活市場から排除される。残りの4割には既婚者も含まれるので独身かつ結婚願望がある人はもう少し少なくなる。内閣府による年齢別(5歳階級)別未婚率の推移のグラフは以下の通り。ざっくり二十代の3割、三十代前半で5割強、後半で7割が既婚者である。ということで、ざっくり3割が独身、かつ入会条件を満たしていると仮定する。

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未婚化の進行: 子ども・子育て本部 - 内閣府

さらにこの3割のうち婚活にかかる数万から数十万の入会金と成婚費用を用意できる人が結婚相談所に登録することができる。年齢別の貯蓄割合はいいデータがなかったのでわからないけど、入会金、成婚費と交際費、結婚費用の用意でまず三桁はいく。

 

晴れて入会にこぎつけても親と同居して稼業を手伝っていたり、地方在住で地元を離れられない事情があったり、持病があったり、奨学金などの借金、地方暮らしに欠かせない車のローンがある場合は個別に断られる可能性もある。 

 

これは難関だ。結婚相談所に入ればなんて安易に勧められない。思い切って勇気を振り絞って何も知らずに門を叩いて入会断られてダメージ受ける可能性だってある。


血統書つきの犬をブリーダーから買うように結婚相談所に安全安心を求める人の期待に応える点でこうした選別は合理的な面もある。しかし忘れてはならないのはこうした社会的背景による条件は当人の人柄とまったく関係ないということだ。

 

知り合いの美容師は全国展開している有名店のトップスタイリストを辞して店を出したが、不動産屋に紹介された賃貸住宅の大家は美容師には部屋を貸さないといったそうだ。村上春樹は作家だからと家のローンを組ませてくれなかった銀行のことを後生怨んでいる。はあちゅうによると夫のしみけんはAV男優であるあいだ賃貸住宅を借りられないという。壇蜜と結婚した清野とおるは高卒で漫画家だが、IBJがこの条件で入会を受け付けるかどうか怪しい。

 

では村上春樹やしみけんや清野とおるは結婚に不向きかといえばそうではない。ただ婚活市場の価値で測るとに大きな店には並べられないということである。

 

もちろん商売だから保管料が払えないとか、置いても在庫になるような商品は置きたくないという気持ちはわかる。相談所の自慢になるような経歴の持ち主を厳選したくもなるだろう。しかしこうした条件は良好なパートナーシップを生む可能性とはぜんぜん関係ないと言うことを忘れてはいけないし、これで自分や他人の価値を測ると少な目に見積もって世の中の7割の人が欠陥品に見えてくることになる。

 

結婚相談所界隈のこうした社会的背景にまつわる条件の厳しさは特に男性に向けられているようだ。

 

つまり女性は若くて健康なら低学歴、低収入、家柄によっては家事手伝いでも店に置いてもらえる可能性はある。一方男性は若くて健康で気のいいあんちゃんでも高卒で自活して親の借金を返しながら兄弟に仕送りしていれば門前払いにされる可能性が高い。たとえばプロボクサーとしてファイトマネーの不足を土方で補い、弟妹の学費と親の生活費をせっせと補填していたもちおは婚活市場では無価値ということである。

 

晴れて婚活市場に参戦できた3割のうち男性は仕事で結果を出して貯蓄が増えれば年齢が上がっても機会が開けることがある。しかし女性が同じように学業、仕事と励んで一段落したところで入会金、成婚料、結婚資金を貯めて婚活市場に出てくると初手から形勢不利になり、職種によっては長く続けられる仕事があることそのものがネックになることすらある。

 

地獄〜。なんか無駄に挫折感味わわされることの連続で地獄〜。そら心折れるわ〜。

 

常々婚活界隈のモテ仕草指南には一理はあるけど二理はないと思ってきた。しかしこうして入口から数々の選抜をくぐり抜けた人たちによって形成されたコロニーだと思うと納得がいく。自分を叱咤激励しながら次々に繰り出される数々の条件、不条理な課題をいかにパスできるか。それが有料物件としての資格なのだろう。

 

こうやって考えてみると「仲人の言うことを聞け」とは「先生の言うことを聞け」にも似ていて、件の仲人さんが学生時代優秀な成績を納めていたという話ともリンクする。たぶんTさんは塾の指導員としても素晴らしい成果を発揮しただろう。実際婚活本は受験対策本にとてもよく似ており、傾向と対策に満ちている。Tさんのテキストは楽しい。楽しいがお受験本である。受験は合格するためのものであって、学ぶことを楽しむためのものではない。婚活とは入籍という国家資格を手にするための試験なんじゃないかと思えてくる。そうか、婚活ブログでしばしば目にする学歴比較をするように互いを値踏みし合うスタイル、あの山のようなプライドの高さは選抜を勝ち抜いたという自負から来るのか。

 

先日出雲大社へいったとき、この夏結婚したという台湾人のレズビアンカップルと出会った。「日本人はいい縁が欲しくて出雲大社へいくんでしょ?それなのにどうしてみんな同じ髪型、同じ服装なの?」と彼女はいった。「これじゃ神様は誰とくっつけても同じだと思うんじゃない?」

 

 

青果市場にハネモモと呼ばれる桃がある。傷がついて市場に出せない桃、売出しラインからハネられた桃のことで、これをとても安く売っているのだ。

 

言うまでもなく味は遜色ない。もともとはうやうやしく箱に詰めして出す高級な桃だからそれはそれは美味しい。山梨にいたとき、このハネモモを買うのが楽しみだった。親族にもいくらか送ったが、いまだにあんなに美味しい桃は食べたことがないといわれる。しかしブランドイメージを守るためか、桃はデリケートで傷がついたまま流通させられないせいか、市場には出回らない。

 

婚活市場からハネられた6割の中にも美味なハネモモのようなひとがたくさんいるだろう。ハネモモ同士が「この傷があってよかった、おかげで手が届いた」と喜びあえる世界であってほしい。

 

傷があるからダメだとか、傷物で妥協したくないとか、市場にも出せないような代物だとか、そういうまやかしに引っかからないで桃は美味しいと感じられる世の中になってほしい。青果市場はどこにあるのかという問題もあるけど、まずは桃の木を探すことではないかな。まだ熟してないかもしれないしね。