---------------------------

----S----055---------------
----c-----------------------------
----a-----------------------
----r-l-e-r-t--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------


（喜美子）１　２　３　４　５　６　７　８。
２　２　３　４　５　６　７　８。
深野先生たちは　信楽を去っていきました。
丸熊陶業の絵付係は　喜美子一人のまま寂しい秋を迎えました。
これが…　うちの絵付け火鉢…。
（照子）ええ感じやん。ありがとう。
すりすりしよ。
あ…　ご苦労さまでございますぅ。（一徹）おっ　ご苦労さんです。絵付け火鉢出来たん？はい。
（秋安）おめでとうございます。ありがとうございます。
十代田さん　いはります？見たい言うてはったんで。
いてるけど…まあ　今日の仕事は終わったさかいええけど…　なっ？何や　やってますわ。
（一徹）集中してるからな静か～に入った方がええで。あっ　はい。
（粘土をたたく音）
陶芸に取り組む八郎を見たのはこの時が初めてでした。
♪～
♪「涙が降れば　きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火　どうかここにいて」
♪「私を創る　出会いもサヨナラも」
♪～
♪「日々　恋をして　胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら　笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も　涙に負けるもんか」
♪～
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
（八郎）はあ…。
ああ！
いつから　そこに…？
声かけたら邪魔かな思て…。いや　全く気ぃ付かんで…。
アホちゃうんか。　すいませんでした。いえ　すいません。
何か？あ…　ああ！えっ？
これです　これ！えっ？　えっ　えっ　ちょっと…。
前に　試作品完成したら見たい言うてはったじゃないですか？
これ　持ってきたんです。川原さんの絵付け火鉢？はい！
うわあ…。アハハハハ…。
これですか…！はい！
うわ～　深野先生が見たら何て言いはったやろ…。
そら　きっと…。きっと？
（２人）ええよぉ。アッハッハッハ…。
うわ～　どんな人が買うてくれるんやろ…。
うれしいですね？
いとおしいですねえ？
うち　前に新聞で紹介されたやないですか信楽初の女性絵付け師いうて。
マスコットガール　ミッコー。アッハハ。
おかげで　この絵付け火鉢の注文は順調に入ってきてるんです。
まあ　言うても　えらい数やのうてうち一人でも　なんとかやれるくらい。
あの…。はい。話　してたいんやけど土が固うなってしまうんで。
ああ　すみません。ああ　いや…。
仕事終わった聞いてたんで…すいません　邪魔して。
仕事ちゃいますよ？えっ？
仕事やのうて　これは…。
あの…　やりながら話　してもいいですか？
もちろんです。　ええです　ええです。すいません。
電気窯が入ったんで…。
分かります？　そこの　それ　電気窯珍しいでしょう。
へえ～　これが電気窯…。
若社長にお願いしたんです。
自分の作品を作りたいから使わせてもらわれへんか。
自分の作品？ええ。
そしたら仕事さえ　しっかりやってくれたら仕事が始まる前と終わったあと朝夕２時間ほど　自由に使てかめへんよて。お許し頂きました。
朝夕２時間…。ありがたいことです。
これで　やっと…ここに来てから　やっと自分の作品作りができるようになりました。
ほんで　これは？何を作ってはるんです？
大鉢です。　うどん皿や。
ああ。　注文受けて？誰かに作ってほしい言われて？
アハハ…　そやったら　うれしいなあ。
欲しい言われて　その人のために作って。
ほんで　僕の作った器でおいしそうに食べてもらえたら…。
頼まれたんちゃうんか…。いや　今は　まだ　そんなん…。
僕は　陶芸家やないんで。陶芸家を目指してはるん？
なりたいなあ思てます。
ほやけど　十代田さん学校出はったでしょう？
そら　基本は学びましたけど…。
川原さん。はい。学校出たからいうてはい　今日から陶芸家ですぅなんてわけにいきますか？
いきませんか？いきません。
自分の作品を世に認めてもらってう～ん…　そやなあ…独り立ちして食べていけるようになるんは４年　５年…　いや　もっと何年かかるか分からへん。
このろくろもほんまに使えるようになるんは２年　３年かかるいわれてます。
へえ～！
すいません。すいません。
そうかあ…　そうなんや…。
十代田さんは　陶芸家として食べていけるようになるのんを目指してはるんですね…。
いつか…　僕の祖父が　深野先生の絵を大事に大事に飾っていたように誰かにとって大事な大事な宝物になるような…そういう作品を作るのが僕の夢です。
夢　その１です。
１？フフフ…。
えっ　ほな　その２もあるってこと？
その３もあります。３も！　欲張りやなあ。
何ですぅ？よう言わん。
ええ！　何で？言わん　言わん。
このまま見ててもええですか？
うち　よう考えたら　こうやって間近でじっくり見たことないんです。
子どもの頃　慶乃川さんいう陶工さんと仲ようさせてもろてほんのちょっと陶芸のことを聞いたくらいで。
よしのがわさん…。今は　信楽には　いはりません。
陶芸家は　お金にならん言うてました。（苦笑）
うち　中学出て　大阪に働きに出たんです。
そうなんですか。
戻ってきてから絵付けを始めました。
始めてからは　もう絵付けに必死で。
絵付け以外のことは目に入っても　心に留まらんかった。
ほな　陶芸をやったことは…。ないです　一度も。
土を練ったこともない。そうなんや…。
ほやから見てたい。　ずっと見てたい。
そんなん…改めて言われたら恥ずかしいな…。
えっ　何　今更？
いや…　何や　見られてることを急に意識してしまうさかい…。
いやいや　いやいや　何　今更？いや　ほんまに。
ええ？　ほな…こんな目ぇして見ときましょか。それ　やらしいんちゃう？
ええ？　ほな　閉じましょか？見えへんやん！
何　言うてんねん。ほな…　あっこの戸の向こうに隠れて…。うん？
見えへんやん！何やってんねん。
ほな　ほな…　あっこういう感じで　おるかおらんか分からへんような感じで見てます…。
いや　おるやん。気のせい。気のせいちゃう。　おるやん。
おらん。あら　ほんまやおらんな。　って　おるやん！
（笑い声）もう　やめえ　やめえ。
恥ずかしい言うから。もう　分かった。えっ？
分かりました。ほな　ええ？　ここにいても　ええですか？
しゃあないなあ…座って見ときな。はい。
フフフフ…。えっ？
フフフフ…。ええ　何？　怖い怖い　何？
（笑い声）えっ　何　何？　怖い怖い　何や？
さっきの…　もうええです。ええことないよ　何です？
（笑い声）
違う　思い出して…。ああ　思い出し笑いか。
こんな顔してたで。してへんよ！
真面目にやりぃ。どっちがや！
（笑い声）しっかり見させてもらうで！
はい　見とって下さい。はい　ちゃんと見ときます。
（常治）お見合い大作戦？
（信作）おじさんがおふくろに頼んだて聞きました。
おう　おう　喜美子の見合い相手や！
あいつ　帰ってきてる思て寄ったんですけど…。
（百合子）いつもならこの時間いるんやけどな。
（マツ）せやな　今日は遅いなあ。
かまへん　かまへん　今…　今　話せ。何やて？
伊賀の親戚にも声かけたり　役場の人にもいい人いんか聞いたんですよ。
そしたら話　広がって　何や　盛り上がって。あっ　知ってます？　集団見合いいうの。
集団見合い？はい。どういうこと？
ともちゃんが言うてた大勢で　いっぺんにお見合いするやつや！
そや！　百合ちゃん　それや。　東京でもえらい盛り上がったらしいですわ。
ほう～。そういうのを信楽でもやろういう話になって名付けて「お見合い　大　作　戦」！　バ～ン！
喜美子にも参加してもらいます。
はあ～。おう　おう　おう　おう…！お～！（信作）ええでしょ？ええな　これ。
聞いてもええ？うん。
十代田さんは　何で　この道を選んだん？う～ん…。
ご実家に　絵ぇ飾ってあった言うてたやないですか　フカ先生の。
うん。　絵ぇ描くんも好きやで。絵描きになろうか思たこともあります。
へえ～　そうなん？中学　高校　美術部やった。
へえ～。せやけど　僕くらいの絵は誰でも描ける。
あ～　下手やったんか。（苦笑）
端的に言うとな。（笑い声）
絵ぇ描くことより好きなこと見つけたんです。
それが陶芸？うん。きっかけは　何？
美術部の先生がやってて面白そうやから　やらしてもらって…あの…　つまらん話や…運命的な出会いをしたわけでも劇的な瞬間があったわけでも何でもない。
気ぃ付いたら　自然と好きになってた。
つまらん話やないわ　ええ話や。
♪～
♪～