前語り
世界には星の数ほどの武器が存在する。剣や盾などの一般的な近接武器から始まり、弓やクロスボウといった遠距離武器など多岐に渡る。武器は人の手に取られ、共に闘う。あるときは、魔を穿つ一条の銀閃となり、またあるときは主をどのような脅威からも守り抜く鉄壁と化す。使い手と共に成長していくのだ。そして武器の使い手が己の命を懸けて、誉れある偉業をなし遂げたとき、武器は本来の武器の力を超え、超常の力を宿す。その武器はこの世の理を破った武器、掟壊武器【エクスウエポン】と呼ばれ人々はそれを崇め、そして畏れた。
掟壊武器は人に力を与え人類の発展に貢献してきた。敵を打ち払い、乾いた大地を豊穣の地へと塗り替え様々な恵をもたらしたのだ。しかし、その強大すぎる力は新たなる抗争の火種でもあった。掟壊武器は聖剣ではない。選ばれた勇者でなくても大体の唯の人間はその力を使うことができたのだ。人々はその力を手にしたいがため、あらゆる罪を犯した。そして掟壊武器を巡った争いは徐々に勢いを増していき全世界を炎で包み込んだ。正しく使えばあらゆる恵を与える掟壊武器は、争いの道具と成り下がり世界を死の国へと変えていったのだ。世界は怒りと悲しみで満ち、数えきれない命が失われ、それと同時に争いの中で多くの掟壊武器も行方知らずとなっていった。
気が遠くなるような時間を経て、唐突にその争いは終わることとなった。天が裂け、白き光が降り注ぎ人を焼き消したのだ。残された数少ない人類は争いを終わらせ、手を取り合い生きていく道を選択した。掟壊武器の力には頼らず、ありのままの自然を受け入れ生きていく。それが新たな文明を築いた先人たちの答えだった。
しかし、その生き残った者の中に心に闇を巣食わせたものがいることは誰も知らない。そしてその者は作ったのだ。どの古文書や歴史書にも名前のない武器……そう、呪いの武器を。
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