2016年11月20日
大きな背中
大旦那様より、お許しを得て燕尾に袖を通したあの日。
鏡に映った自分の姿。
歪に結われたリボンが滑稽極まりない。
これではお嬢様に笑われてしまうと、解いては結び直す私を案じて、
杉村がリボンを結んでくれたこともございましたね。
「二人で一緒に、立派な使用人になれるよう頑張ろうね」と、
共に紅茶の勉強やお給仕の作法を学び、高め合った仲。
今思い起こせば、彼と一緒だったから、
不安と期待に満ちた険しい道のりを、乗り越えられたのかもしれませんね。
いつしか、二人の歩幅は重なることもなくなり、
それぞれが想う道へと、歩を進めるようになりました。
そして、私の道の先には、優雅に舞う大きな燕達。
追いつこうとしても縮まらぬ、遠い遠い存在。
自分より高く飛べることに羨望を抱きながら、
羽をバタバタとはためかせるも届かず、もがき続ける日々。
目に見えない鎖に繋がれているのかと疑うほどに。
そんな私を見捨てるでもなく、一羽の大きな燕が私の元に降り立ちて、
「早く上がってこい」と言わんばかりの情けと期待をはらんだ眼差しで、私を見守ってくれている。
あなたの目に映る景色はどんなに美しいのでしょうか。そして、共に見る景色は如何に・・・
現実に目を背け、理想の世界に浸ってばかりではいられませんね。
次々と、自分を追い抜く者が現れるやもしれません。
そんなことを、必死に研鑽に臨む新たな燕達を眺めながら、
ふと物思いに耽っておりました。
初心忘るるべからず。
高く高く飛び、立派な背中を見せる為にも、
腐心を惜しまぬ決意を新たに、明日もお給仕に勤しむといたしましょう。
あの日、杉村と交わした言葉を思い出しながら。
黒崎
鏡に映った自分の姿。
歪に結われたリボンが滑稽極まりない。
これではお嬢様に笑われてしまうと、解いては結び直す私を案じて、
杉村がリボンを結んでくれたこともございましたね。
「二人で一緒に、立派な使用人になれるよう頑張ろうね」と、
共に紅茶の勉強やお給仕の作法を学び、高め合った仲。
今思い起こせば、彼と一緒だったから、
不安と期待に満ちた険しい道のりを、乗り越えられたのかもしれませんね。
いつしか、二人の歩幅は重なることもなくなり、
それぞれが想う道へと、歩を進めるようになりました。
そして、私の道の先には、優雅に舞う大きな燕達。
追いつこうとしても縮まらぬ、遠い遠い存在。
自分より高く飛べることに羨望を抱きながら、
羽をバタバタとはためかせるも届かず、もがき続ける日々。
目に見えない鎖に繋がれているのかと疑うほどに。
そんな私を見捨てるでもなく、一羽の大きな燕が私の元に降り立ちて、
「早く上がってこい」と言わんばかりの情けと期待をはらんだ眼差しで、私を見守ってくれている。
あなたの目に映る景色はどんなに美しいのでしょうか。そして、共に見る景色は如何に・・・
現実に目を背け、理想の世界に浸ってばかりではいられませんね。
次々と、自分を追い抜く者が現れるやもしれません。
そんなことを、必死に研鑽に臨む新たな燕達を眺めながら、
ふと物思いに耽っておりました。
初心忘るるべからず。
高く高く飛び、立派な背中を見せる為にも、
腐心を惜しまぬ決意を新たに、明日もお給仕に勤しむといたしましょう。
あの日、杉村と交わした言葉を思い出しながら。
黒崎
Filed under: 黒崎 — 21:00