第十六話:回復術士は変装する
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鉄猪族の村はもう目の前だ。
上空には赤い飛竜が我が物顔で飛び交っており、鉄猪族たちは首輪を付けられ、奴隷のように働かされていた。
「じゅるり、飛竜、美味しそうなの。竜のお肉食べたいの」
「あれ、うまいことはうまいが、普通の牛とかのがうまくないか?」
「味はそうなの! でも、いっぱいエネルギーが詰まっていてじゅーしーなの」
「そういうものか。これからの展開次第では腹いっぱい食えるかもな」
「楽しみなの、全面戦争を望むの。血を血で洗う殺し合いでお肉たくさんなの!」
「一応言っておくが、それは考えうる最悪だからな」
竜を見て美味しそうなんて思えるのはグレンぐらいだろうな……普通は怯える。
「……なんというか、もう赤竜人族の連中は占領していることを隠す気がないな」
それだけ、現魔王政権が舐められているということ。
実際問題として、現状ではまだまだイヴ政権の地盤は不安定だ。
各地で小規模な反乱や暴動の火種があり、なんとか必死に抑えている状況。
赤竜人族を駆除するために戦力を派遣しようものなら、各地の抑えが効かなくなり、一気に様々な問題が噴出する。
あるいは、魔王城そのものが落とされるかもしれない。
魔王が持つ絶対遵守の命令は非常に強力ではあるが、絶対ではない。
もし、俺が魔族で魔王を殺すとなら視界外から一撃で命を刈り取る攻撃手段を用意する。命令というものは声が届く範囲内でなければ使えないのだから。
(だが、浅知恵だ。……圧倒的に強い個というものを警戒しなさすぎる。そう、俺のような)
勇者、魔王、そういう規格外はただ一人で戦況を変えてしまう。
大規模な戦力の派遣など必要がない。
俺一人で、赤竜人族の占領から鉄猪族を解放してみせよう。
「ご主人さまの姿かっこいいのー」
「そうか?」
俺は今、【
その姿は黒亜竜族。
いわゆる上位種のリザードマンであり、"条件付き"で竜を名乗ることを許されている一族。
赤竜人族にとって黒亜竜族は奉仕種族。いわゆる子分だ。
その特徴は、蜥蜴の尻尾と黒い角。それ以外はほとんど人間と変わらない。
黒亜竜族を選んだ理由は三つ。
一つ、赤竜人族にとって親しみがある種族のこと。
二つ、奉仕種族であるが故に舐めてかかってくれること。
三つ、黒亜竜族のとある風習が、鉄猪族の街を訪れる理由として都合がいいこと。
門の前までやってきた俺とグレンを見て、門番たちが駆け寄ってくる。
赤竜人族の男は全身が赤く硬い鱗に覆われ、顔は竜そのもの。地面につくほど長く、太い尻尾が特徴的だ。
二メートル以上の巨体で横幅も相応。だが、デブというわけじゃなくがっしりとしている。最強の魔族と一角と呼ばれるのも理解できる。
赤い飛竜を乗りこなし、本人も極めて戦闘力が高い。
また、女は違う容姿らしい。……そうであって欲しいところだ。さすがの俺も二足歩行の蜥蜴に欲情はできない。
せっかくの復讐なのに、女を犯せないのでは盛り上がりに欠けてしまう。早く美人揃いという赤竜人族の女に会って安心したいものだ。
「黒亜竜族の若造か、なんのようだ?」
グレンはキツネモードのため、ただのペットとでも思っているのかカウントしない。
そして、黒亜竜族の姿をした俺を見る目には侮蔑があった。それを隠そうともしない。
「はっ、竜の証をいただきに」
「おまえらは大変だな。竜を名乗るにも俺らの許可が必要なんだから」
二人の門番が笑う。
黒亜竜族の風習。それは、赤竜人族に証をもらうこと。
黒亜竜族は蜥蜴だ。竜を名乗ることなどおこがましいと竜族の連中は考えている。
そのため、黒亜竜族は成人すると、その力を赤竜人族に示し、合格すれば竜の証がもらえる。
その証があって初めて竜の戦士を名乗ることができる。
この儀式を竜の儀と呼ぶ。
「偉大な赤竜人族にどうか私の力を見ていただきたいのです」
「なら、フランラッハにいきゃいいだろ。なんで、わざわざこっちまで来たんだ?」
フランラッハは赤竜人族たちの国だ。
黒亜竜族が竜の儀を受ける場合、そちらに行くのが道理であり、わざわざ占領先に訪れるのはおかしい。
その理由も用意してある。
「ヒイセキ将軍に憧れているのです。もし、私が竜の儀を受けるなら、ヒイセキ将軍にと思っておりました。フランラッハに向かったところ、こちらにいらっしゃると伺い、ここまで足を運びました」
「ほう、ヒイセキ将軍に憧れるとは見どころがあるじゃねえか。……だがな、あの方は忙しい、てめえらみたいな劣等種にいちいち付き合ってらんねえんだよ。まあ、心意気は買うぜ。特別に騎士団の奴らに頼んでやるよ」
よし、これですんなりと街に入れる。
最低限の目的は果たした。
だが、あくまでこれは最低限。
俺はがめつく行く。
「お言葉ですが、私はどうしてもヒイセキ将軍にお願いしたいのです」
「わかんねえやつだな。てめえごときと会っている暇はねえって言ってるだろうが」
「ごとき……ではないとしたら。私は腕に自信があります。誰にも負けたことがない」
「蜥蜴どもで一番だからなんだって言うんだ? 俺らは竜だぞ。兵士の俺ですら、蜥蜴の一番より強いぜ」
「なら、あなたより強いと証明すれば、ヒイセキ将軍に合わせてもらえますか?」
門番たちの機嫌を損ねた。
そうだろうな、たかだか蜥蜴と見下している種族が、竜である自分に楯突いているのだから。
「いい加減にしろ。口でわからないのなら、体にわからせてやろうか」
「それで、私の実力を理解してもらえるのなら」
完全に赤竜人族の門番がブチ切れた。
騒ぎを聞きつけて、門の近くに住民たちが集まってきている。
いい感じだ。
「たかが蜥蜴がよく吠えた……ぶっころすっ!」
門番が剣を抜いた。
巨躯に似合う分厚く長い大剣。しかし、ろくに研いですらなく叩き潰すことしかできないもの。
人間なら持ち上げることすらできない、そんな剣を軽々と振ってくる。
それも重力を味方につけた振り下ろしではなく横薙ぎ。凄まじい筋力。
剣速も規格外……だが、モーションが丸見え。
剣が振られる前からこちらは攻撃を予測して動けている。こんなものに当たるほど俺は間抜けじゃない。
ぎりぎりまで腰を低くしての突進。
頭上を超速で剣が通り抜けている。
この状況で、門番は笑っている。鱗が光を放った。
なるほど、赤竜人族の鱗は鋼鉄に勝る硬度がある。それを魔力で強化したのだから鉄壁だと考えているのだろう。一流程度の剣士なら歯が立たない。
それでも俺なら剣に魔力を集めた一閃で断ち切ることができる。
だが、それは美しくない。
「【発勁】」
剣は抜かなかった。踏み込み、腰を入れ、全身の捻りを連動した掌底を放つ。
そして、その衝撃と気を表皮ではなく中に浸透させる。
見た目上、門番にはなんの変化もない。
しかし、この技は内部破壊の技。衝撃と気が内臓を蹂躙する。
「ぐほっ」
門番が悶絶し、膝をついて血の混じったゲロを吐いた。
そして、痙攣して動かなくなる。
「俺は強い。わかってもらえましたか?」
返事はない。
いや、できないのだろう。
それほどまでに、今のダメージは深刻だったようだ。
(手加減してやったんだが、まだ不十分だったか)
もう一人の門番を見るが、パニックになっていて、まともに話せそうにない。
周囲を見ると、どんどん騒ぎが大きくなっていく。
そして、人だかりのなかから騎士鎧を纏った赤竜人族が現れた。
ひと目見てわかる。門番連中とは格が違う。
人間で言えば、三英雄のような独特の空気を纏っている。
「これはいったいどういうことだ? 門番、答えよ」
「はっ、はい、実は……」
もうひとりの門番が一瞬で立ち直る。そうさせるだけの不思議な威圧感が彼にはあった。
門番は今までの経緯を、そのまま話す。
「そういうことか。とんでもない不祥事だ。たかだが、蜥蜴に我ら誇り高き赤竜人族が負けるとは。この汚点、放ってはおけない。そこの蜥蜴、望みを叶えてやる。このヒイセキが相手をしてやろう」
やはり、この男がヒイセキか。
赤竜人族の英雄にして、制圧の指揮を取った将軍。
「ありがとうございますっ!」
「礼だと? 勘違いしないでほしい。君がすべきは命乞いだ。本来、竜の儀は力を試す場だ。我々は遊んでやる、そういうつもりでやっている。だが、貴様は我ら赤竜人族の誇りに泥を塗った。私が行うのは蜥蜴ごときでは竜に敵わないことを見せつけるために行う処刑だ」
「それでも、ありがとうございます。あのヒイセキ様と手合わせができるとは」
ヒイセキが戸惑った表情を作ったあと、それを侮辱だと考えて表情を歪め、その表情すら一瞬で消えた。
なるほど感情の自制ぐらいはできるか。
これで最低限の目標を達成ではなく、目標の完遂にたどり着いた。
今回はただ鉄猪族を解放して終わりではない。
赤竜人族の取り込みが必要だ。
そのためには、赤竜神族の首脳部に近づいて籠絡しないといけない。
この茶番は、そのためにある。
……そうだな竜の誇りとやらを大事にしているようだし、それを逆手にとってやろう。
衆人環視の処刑とやらで、蜥蜴如きに竜の英雄が敗北する……そんな耐え難い屈辱の直前で、負けてやると言えばどんな条件でも呑むだろう。
俺はこういう誇りだと、なんだの言って偉そうにする奴らが大好きだ。自分が負けるはずがないと思いこんでいる世間知らずも。
その誇りとやらを踏みにじったときの反応がとても笑える。
きっと、このヒイセキとやらも俺を最高に楽しませてくれるだろう。
遠慮はしない。俺の友人である鉄猪族たちを苦しめてるのだ、彼らだって苦しみ悶えなければおかしいではないか。
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また、最近なろうでエロに対する扱いがより厳しくなってきたこともあり近日中に削除予定です。
エロを抜いた改稿版を投稿し、定期更新する予定なのでそちらをお待ち下さい!
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