トヨタは、ダイハツの子会社化をはじめとして、スバルやマツダ、スズキ、さらにはBMWなど、国内外の自動車メーカーとさまざまな提携関係を結び、これまで86&BRZ、スープラ&Z4などのコラボレーションモデルを生み出してきた。
直近では2019年9月27日にスバルと資本提携を強化することを発表し、「最高に気持ちのよいAWDモデルを共同開発」という計画が明らかになり、クルマ好きからの期待を一身に集めている。
さて、今後トヨタは提携先の自動車メーカーとコラボして、どんな新型車を生み出すのか? ベストカースクープ班がアンテナを張りめぐらせて集めた渾身のスクープ情報をお届けしよう。
文/ベストカー編集部
写真・CGイラスト/ベストカー編集部
初出/ベストカー2019年12月10日号
【画像ギャラリー】トヨタとスバルがコラボして生まれるWRCマシンとは?
トヨタはどこへ向かうのか?
トヨタを中心とした国内メーカーの業務提携、技術提携、さらには資本提携が活発だ。トヨタは国内メーカーにとどまることなく、BMWとの業務提携によってスープラを復活させることにも成功した。
トヨタは巨大企業だ。グローバルで見ても生産台数、販売台数はトップクラスだし、売上金も30兆円を超え、2兆4000億円を超える営業利益を上げている。売上高では国内2位のホンダの約2倍、営業利益では約3倍という規模。2018年度のグローバル販売台数は897万7000台で、日産やホンダを350万台以上上回り、今年度は年間1000万台を見込む。
こんな巨大にして優良企業のトヨタがダイハツを完全子会社とする以外にもスバル、マツダと資本提携の関係にあり、さらにスズキに対しても資本提携を結ぶなど、国内自動車メーカーとの資本関係を強化している。
……と、この構図だけを見ると巨大企業のトヨタが次々と弱小メーカーを手に入れて勢力を拡大しているかのように思う人もいるかもしれないが、実情はさにあらずだ。
トヨタは常に危機感を抱いている。トップである豊田章男社長はことあるごとに、企業は常に変わっていかなくてはならないという趣旨の発言をしている。
現状に満足し、現状の体制を続けていたのではあっという間に時代の変化に取り残され、巨大で無敵だと思われるトヨタでさえ、いつ経営危機に陥るかわからないということだ。この考えは首脳陣だけではなく、トヨタの社内には広く浸透しており、トヨタの誰と話をしても危機意識を持っていることがわかる。
実際、マツダとの業務提携へと推し進んだひとつの要因として、トヨタのハイブリッドシステムを提供して誕生した先代アクセラハイブリッドの回生協調ブレーキのチューニングレベルの高さに驚いた豊田章男社長が、マツダのモノ作りに対する意識の高さ、技術の高さを痛感し、こうした企業風土をトヨタにも取り入れたいという思いがあったという。
スバル、マツダ、スズキなどにしてみれば、トヨタからの資本を受け入れることで自社の研究開発費など資金調達面でのメリットが大きい一方で、トヨタ側にしても各メーカーの持つ「得意分野」を取り込むという大きなメリットがある。
自動車を取り巻く環境が大変革のさなかにある今、いわゆるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への速やかな対応が求められるわけだが、トヨタは自動車メーカーだけではなくソフトバンクやモネ・テクノロジーズ、ウーバー・テクノロジーズなどといったIT系企業との資本、技術提携もしており、こうした『巻き込み』=『仲間作り』で相互ウィン・ウィンの関係性を作り上げていこうとしているのだ。
ちなみに現況、トヨタはダイハツに対して100%子会社としているほか、スバルに16・82%出資、日野自動車に対して50.2%出資、ヤマハ発動機に対して3.6%出資をしている。
2019年8月28日に発表されたように、今後スズキに対し960億円相当、4.94%の出資(スズキは480億円相当のトヨタ株式を取得)予定。
また、2019年9月27日に発表されたようにスバルに対する出資比率を20%以上に引き上げる(スバルは800億円程度のトヨタ株式を取得)予定で、ますます協力関係は強化されていく。
トヨタを取り巻く提携で生まれるクルマ
■次期86&BRZはトヨタ、スバルの共同開発で進行中
既報のように2019年9月27日のトヨタ&スバル提携強化発表のなかで、86/BRZ次期型の共同開発と「最高に気持ちの良いAWDモデルを共同で開発」、スバル車へのTHS搭載拡大、コネクティッド領域での協調、自動運転分野での技術連携などが正式に表明されている。
すでに次期型86/BRZは開発が進行中で、現行型のボディを纏ったテスト車両がニュルを走る姿が目撃されている。
基本的なパッケージングの考え方は現行型同様で、プラットフォームのベースは当然スバルの最新SGP(スバル・グルーバル・プラットフォーム)を採用し、水平対向4気筒エンジンを搭載するFR。プラットフォームを一新することで、さらに高いシャシー性能を手に入れることになる。
■今後のEV開発にトヨタ&マツダの協業がどのように生かされるのか?
さらに興味深いのがマツダとの協業だ。EVの共同開発は提携合意内容で最初から明らかにされていた。このひとつの回答が今回の東京モーターショーでワールドプレミアされたマツダMX-30ということになるのだろう。
■直6エンジン、FRのマツダ大型サルーンが2022年に登場!
また、マツダが開発を明らかにしている直6エンジン(ガソリン&ディーゼルターボ)、FRプラットフォームをトヨタとの協業で活かしていくという情報だ。
確かに現実的に、160万台程度というマツダのグローバル生産規模で新規Dセグプラットフォームと新規エンジンの開発は、単独では困難であることは明らかだ。
この背景にはトヨタとの協業があり、次世代クラウンや、2019年12月をもって廃止されるマークXの後継モデル、さらにはレクサスGS、IS、クーペモデルなどに展開されていく前提があれば巨大な投資に対する意味に納得ができる。
■次世代クラウン、マークXクラスへの展開も視野に入れたトヨタ&マツダの共同開発
スズキに関してはどうなるのか!?
■スズキはトヨタとの提携でワゴンRをフルハイブリッドを搭載へ
トヨタ側のメリットはスズキの軽自動車作りの知見、つまり小さなクルマ作りのノウハウの吸収だ。
いわゆる『ラストワンマイルモビリティ』と呼ばれる超小型EV開発にスズキのノウハウが活かされる。
一方、スズキはトヨタの電動化をはじめとしたCASE技術を吸収することだ。ハイブリッドシステムにしてもTHSを軽自動車向けにしたものを次世代ワゴンRに搭載するなど進めていくことになろう。
トヨタの資本力を中軸とした巨大提携関係で時代にマッチしたクルマが登場することで、日本の自動車メーカーが世界での競争力を高めていくことが最大の狙いだ。