ほかのサイトから無料版の論文を探してくれるブラウザ拡張機能「Unpaywall」

  • 6,283

  • author tmyk
ほかのサイトから無料版の論文を探してくれるブラウザ拡張機能「Unpaywall」

科学論文もフリーな時代に。

おそらく、科学に関して最悪なことは、たいてい論文を読もうとすると購読料が必要になることです。読みたいと思っているのにその論文がオープンアクセスではない場合、PDFファイルのためにお金を支払うか、論文を求めて研究者か誰かにメールを送るか、私のような学者もどきの引用と偏見にまみれた解釈を聞いて我慢する必要があります。

しかし、「Unpaywall」というブラウザの拡張機能(ChromeとFirefoxに対応)によって、他の場所にフリーバージョンの論文がないか簡単に探すことができます。すべてを網羅しているわけではありませんが、オープンアクセスやプレプリントの論文をネットから見つけ出すことで、購読料を必要としないものになりつつあります。

この拡張機能はとてもシンプル。インストールすると、論文にアクセスしたときに、画面右側に小さな鍵マークが表示されるようになります。この鍵マークが灰色のときは、Unpaywallがフリーの論文を見つけられなかったことを示しています。

Unpaywall 1

もし、マークが緑色だったときは、大学のウェブサイト、もしくはプレプリントサーバー(査読前に論文を公開する場所)からフリーの論文が手に入ることを示しています。そのまま鍵マークをクリックすると、フリー版が読めるページにアクセスできます。

Unpaywall 2

また、金色だった場合は、その論文がオープンアクセスであることを意味しています。

もちろんこの拡張機能は、論文に不正にアクセスしているわけではありません。Unpywallは、アルフレッド・P・スローン財団とアメリカ国立科学財団が資金提供している非営利団体 Impactstoryによって作られています。なかにはSci-Hubのような海賊版論文サイトも存在していますが、Unpaywallは著作権法の範囲内でフリーの論文を探します。

UnpaywallのFAQページでは、50〜85%の論文でフルテキストを見つけることができると主張しています。しかし使っている限りでは、それほどの割合でフリーの論文を見つけることはできませんでした。オープンアクセス可能な論文を除いて、私が過去2カ月で論文をもとにして書いた記事を確認したところ、25本中8本(32%)について鍵マークが緑色でした。

ただ最近では、こういった機能だけでなく、科学誌の出版社も論文の無料化に力をいれています。たとえばPLoS OneやPeerjといったオープンアクセス可能な科学誌があります。また、ScienceやNatureといったメジャーなジャーナルの出版社も、それぞれScientific AdvancesやScientific Reportsといったオープンアクセス可能なジャーナルを提供しています。Natureはさらに先進的で、論文の無料版リンクをブログやメールに自由に添付できるSharedItという機能があります。

インターネットによって、新聞の情報が無料で手に入る時代になったように、論文も徐々にネットの影響を受けながら無料化の流れが進んでいます。

すべての科学論文の閲覧が2020年から無料に? EUが基本合意

image: Maxx-Studio / Shutterstock.com, Science | AAAS, Science Translational Medicine
source: Unpaywall 1, 2, Impactstory, SharedIt

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文
(tmyk)