以前更新していたlivedoorブログの「粕本集呆の辛口一献」ですが、とある事情により—悪ふざけが過ぎて強制的にアダルトカテゴリに移行された—、場をはてなブログに移し、「粕本集呆の辛口一献」の方はすべて削除することにしたのですが、タイムリーな記事でないゲーム(主に昔のPCゲーム)のレビューについては、こちらに移植することにしました。それに伴い一部手直し、加筆している部分もあります。
このブログ、主に競馬ファンが見てくださっているのですが、謙遜なしに競馬ブログとしてなら、このブログより優れたブログはそれこそゴマンと存在する。それに競馬以外の記事に興味ない方には悪いのですが、「縛り」がない方が私も気楽にブログが続けられる。気の向くまま、音楽やゲーム、歴史の話も記していこうかと思います。
以前このブログで、「PRIME GIRL」というエロゲをプレイしたいけれど、OSがWINDOWS2000までしか対応していないのでできない…と嘆いていたのですが、2000のノートPCをジャンクで購入。起動しなかったので、自分で中を開けて、ネットで色々調べながら修理して起動させました。競馬ブログをやりながらも、馬券を当てるための地道な研究はろくすっぽやらず、毎度毎度の場当たり的な予想。一方でエロのためなら何でもやってしまう自分に半ば呆れ、半ば感心。いずれはエロゲ(ただし、今のパッパラパーなエロゲではなく、ちゃんとした内容のあるエロゲ)なんかも、はてなブログの規約に引っ掛からない程度に紹介したいのですが、まずはこのゲーム。
「RELICS(レリクス)」。1986年―今から30年前、パソコンで発売されたゲームで、作ったのはボーステック。前年日本ファルコムが出したRPG「ザナドゥ」、ゲームアーツが出したシューティングゲーム「テグザー」と並ぶパソコンゲームの革命児的存在。
ゲームを始めると、建物の入口付近で黒い影のようなものがフワフワ漂っている。これが主人公。それだけ。前置きも何もなし。マニュアルにも、さすがに操作方法は記されているのですが、背景も目的も記されていない。いかつい要塞の外観と、そこを根城にしているであろう、異形の者たちのイラストが描かれているだけ。上の写真の左下、心臓らしきものを含めて何のパラメーターを表しているのかもわからない。
とりあえず前に進むと、ウサギの化け物みたいなのがピョンピョン飛び跳ねている。もうちょっと先に進むと門番らしい剣を持った兵士がウロウロしている。主人公の影が、このどちらかに接すると、触れられた方は倒れ、また起き上がる。そしてそのキャラクターを操作することができるわけです。つまりは乗り移る。最初にウサギか兵士かどちらか選択しろということなのですが、普通は兵士に乗り移るし、敢えて茨の道を進む気がないならそちらが正解。「セム」というウサギを選択すると、要塞の中でも常に兵士に追いかけられる。それに対してネコパンチならぬ必殺ウサパンチで応酬するわけです。見ていて面白いけれどやっぱり弱い。
兵士「アーミー」を選択した場合、要塞内部の別の兵士は、同僚と思い込んで攻撃を仕掛けない。上官に出会うと「TURN BACK TO YOUR POSITION!!」と叱責されますが、それでもなお進もうとすると攻撃してくる。そしてその上官を倒して乗り移ると、軍隊だけに兵士たちは敬礼してきて、戦闘を避けることができる。このゲーム、敵を倒しても経験値も金も入らない(そもそも物を買う店が存在しない)し、体力回復の手段が乏しいので、戦闘は極力避けるのが利口なのです。そして様々な罠を掻い潜りながら要塞の奥に進むと、やがてひとりの男に出会う。この男を「ヘブン」といい、主人公に真の目的を告げる。ちなみにゲーム中のテキストは英語ですが、高校英語で充分理解できる程度のもの。
要塞の中には、兵士たちだけでなく、「ビースト」というキモいクリーチャーたちも多く存在します。これらも倒して乗り移ることができる。中には動きがなかなかユーモラスで笑わせてくれるものもいますが、要塞最下層にいるあるビーストが、物語の分岐点となる。この最強のビースト「ドラゴン」を倒すに至るまでに主人公が行ってきた行動で、倒した後、その「ドラゴン」に乗り移るか、それとも乗り移らないかが決まるのです。
そして最後、「ヘル」を倒し、「輝きの王女」(ファミコン版ではそう称されているが、PC版は「GIRL」だったか、明確な呼称がない)を要塞の外(スタート地点)まで導くのですが、動画を視るに、これが結構大変な仕事っぽい。自分ひとりでとっとと行ってはダメで、ちゃんと根気強く誘導していかないといけない。この娘がおバカなのではなく、ここが当時のPCの能力の限界といったところか。「動画を視るに」と述べたのは、私はPC版は結局そこまで辿り着けなかったからなのです。このゲーム、セーブができず、死んだら最初から。攻略ルートさえわかればアクションゲームとして極端に難しいわけでもなく(当時はアクションゲームもキーボード)、死んだ地点まで繰り返すこと自体、それほど時間は要しなかったのですが、今のようにわからなければネットで即「攻略Wiki」なんて便利な時代にあらず。ファミコンゲームと違って攻略本もなかったので、ルートを確立することが至難だったのです。
当時としてはキャラクターの動きが実に滑らかで、グラフィックも、30年前のゲームであることを考えれば美麗…というより、リアルで不気味。そんな不気味な要塞の中を、目的もわからないまま他人(クリーチャー)の身体を次々と乗っ取りながら進んでいく、先の読めない展開が、当時のゲーマーたちを魅了したのです。
でも、最初は謎に包まれたストーリーも、とりわけ複雑なものではなく、途方もなく続く光と闇との戦いの中、実は自分は肉体が封印されていた光の戦士で、「ヘブン」と対立する「ヘル」を倒し、「輝きの王女」(PCでは同胞の女戦士?)を救出するという筋書き。とはいえ、他のゲームと異なっていたのは、そこに至る過程で、主人公が何をやったが問われること。ゲーム途中、主人公に助けを求める瀕死の兵士(同胞?)がいますが、そいつを無視することはおろか、とどめをさすこともできる。それに敵に属するからといって、片っ端からジェノサイドすればいいわけではない。気をつけないといけないのは、先述したようにこのゲーム、経験値は存在しないし、敵を倒したところで金品は手に入らない(一部重要なアイテムを持つ者はいますが)こと。先述した「ドラゴン」に乗り移るかどうかは、どれだけ手が血で塗れたかによって決まるのです。そして「ドラゴン」に乗り移れば、真のエンディングは得られない。
有名な話ですが、オープニングとエンディングは<クリスタルキング>。「レリクス」のために作られたそうですが、ボーカルが入ったオープニングテーマ「Woman」とエンディングテーマ「Smile Again」がアルバム「MOON」に収録されています。ただ、「MOON」は、ゲーム「レリクス」の前年に発売されている。「レリクス」は幾度か発売が延期されたそうで、その結果テーマ曲の方が先に世に出る形になってしまったのか。「Woman」の歌詞はゲームとはまったく関係ないのですが、「あなたは愛するふりして、他のひとを見てる 私の体借りて」というフレーズは、女が男の体を、他の愛する男の体に見立てて抱かれているといった描写で、ゲームの「体を借りる」=乗り移るとは意味が異なるのですが、ちょっとゲームを意識したようなところがある。
この「レリクス」を、「乗り移る」というシステムだけ採用して(乗り移れる相手はヒューマノイドに限られているが)単純なアクションゲームにしたのが、ファミコン版ディスクシステムの「レリクス暗黒要塞」。「セム」や「ドラゴン」はいませんが、代わりにファミコンならではの様々な戦士やモンスターがいる。こちらはひたすら相手を倒して先に進んで行けばいいので、クリアしました。PC版と比較しなければ、「え?これで終わり?」なエンディングを除けば、酷評するようなゲームではない。ただ、この「暗黒要塞」が所謂「クソゲー」扱いされる最大の要因は、当時プレイした人はわかると思いますが、異常なローディングの回数と長さ。友人がゲームのローディングが長いとは文句たれると、「お前はレリクス暗黒要塞をやったことがないから…」云々。すると「お前の言っていることは、年寄りの『ワシが若かった頃は…』と同じだ」と返される。ちなみにローディングの長さが異常だった記憶があるのがもうひとつ、PC8801の「マイトアンドマジック」。
ちなみにPC版レリクスのストーリー性をもっと明確に文章で表現したのが、関島りょう子という人が記したゲームブック「レリクス―闇からの侵略者―」。表紙はグロテスクですが、読み物としてもしっかりしているし、ファミコン版で「アーマー」や「ガンナー」と呼称された戦士たちやモンスターたちも登場している(というかPC版は、戦士やモンスターの名称がはっきりしていないものが多い)。それなりにプレミアついちゃっているけれど、気が向いたらもう一度買ってもいいかな、と。
「レリクス」はWINDOWS時代に入ってから、1999年、「RELICS ‐The recur of "ORIGIN"」と2001年にその続編「RELICS -The 2nd BIRTH-」をリリース。物語性が大幅に増したのですが、最初からレリクスを世界観、システムから作り直したという感じで、別物のゲームと捉えた方が良さそうか。私はWINDOWS95~98の時代、パソコンから疎遠になっていたのでこの2作をプレイする機会がなかった。
ちょっと話は逸れるけれど、WINDOWS95登場までは、私はMS-DOSを駆使し、N-88BASICも組める、かなりサイバーな不良高校生だったのです。高校のパソコンの授業では、先生をナメきって指図に従わず、勝手なことばかりやって睨まれていました。ところがWINDOWS95登場という「革命」の場に立ち会わなかったことで、一気に竜宮城から帰った浦島太郎と化し、PCを購入後、友人に教えを乞う始末。こういったものは絶えず触れていないとあっという間に取り残されてしまいます。
その後日本ファルコム開発、ソフトバンクBBが販売という形で2005年「RINNE」というゲームがリリースされ、正式ではないのですが、事実上、新生「レリクス」シリーズの3作目と捉えられていて、ファルコムの方も肯定はしていませんが否定もしていないようです(一部、前年に出された名作RPG「英雄伝説・空の軌跡」で使う予定だった曲がこのゲームで使われているらしい)。
オリジナルの世界の方は、実はXBOXで大幅にリメイク(上の写真がゲーム画面)してリリースされる予定だったのですが、頓挫してしまった。開発、発売したボーステックは他にも「銀河英雄伝説」シリーズ(田中芳樹氏の傑作SF小説のSLG化)、「タクティクスオウガ」(当時はクエストというメーカーと合併していた)など、名作を出したりもしましたが現在は存在せず、ボーステックの権利は「D4エンタープライズ」が取得したようです。ただ、「レリクス」がそこに含まれているのかはわからない。
オリジナルから30年経過した今リリースしたところで、次世代機のユーザーを惹きつけるような新鮮な要素はなく、私たちオッサンのノスタルジーを満たす程度のものになってしまいそう。元々このゲームの最大の売りが「リアルなキャラクターの動き」という当時の技術的側面で、それを「何をすればいいのかわからない」という奇を衒った世界観が引き立てていた。「レリクス」と名のついたゲームが新しく世に出ることはもうないかもしれません。
ちなみに冒頭の写真の「レリクス・アンソロジー」はx68000版を除いた全機種のオリジナルと、「レリクス暗黒要塞」が収録されいている(PCだからあの苦行的ローディング地獄はない)。それに当時の広告や、設定画、「RELICS ‐The recur of "ORIGIN"」や「RELICS -The 2nd BIRTH-」の主題歌、OP映像、そして幻に終わったXBOX版のデモムービーも収録されています。極めつけは当時の広告でも使用された「アーミー(ファミコン版ではブレードアーミーという)」のフィギュア。これがよく出来ている。オリジナルと、後のWINDOWS時代の2作で、ほぼ姿が共通しているのがこの「アーミー」だったりします。amazonで見たところ、これもプレミアついてしまっていますが、中古価格なら、特別このゲームに思い入れがあり、当時買いそびれた人にはそんなにべらぼうに高くないだけのボリュームはあると思います。
余談ですが、「RELICS -The 2nd BIRTH-」の主題歌を使い、ニコマス(ニコニコ動画上でのアイドルマスターの二次創作動画)PVを制作、UPすることを考えたことがありました。アイマスと「レリクス」のコラボで、主演は千早。「レリクス」シリーズの動画や画像をふんだんに織り込んだ、ネタ一切なしの真面目なPVを構想。千早のダンスPV(アイドルマスター2)を録画し、素材も用意していたのですが、頓挫…というより「ニコマス」PVが完全に下火と化してしまい、発表する機を逸してしまいました。
(「粕本集呆の辛口一献」2016年6月11日のエントリーを一部加筆、修正して移植しました)