インターナショナルスクールに通う、新移民の女子生徒の例も紹介したい。彼女の両親は大陸出身者で、彼女はインターナショナルスクールにしか通った経験がなく、英語と普通話しか話すことができない。去年までは学内の香港人に距離を感じていた。しかし、彼女が抗議活動の話をするようになると広東語を話す他の香港人の学生は彼女が自分たちと似たような思想を持っていることに気づき始め、彼女を「香港人」として見るようになったという。その学校で自分の出身地に関する文化イベントの企画をしていた時、昨年まではチーム編成上で自身が大陸人として扱われていたのに今年になって香港人として扱われるようになったという。
これらは「青」と「黄」のラベリングの分断による「排除」の例とは反対に、抗議活動を通して自分たちと同じサイドにいる人々を「包摂」していこうという動きの例である。例えば上の2つの例では「香港人」というラベリングが再定義され、彼らは香港人というラベリングに「包摂」されるようになっている。
分断による排除と融和による包摂:香港の抗議活動が行き着くところ
香港の抗議活動は従来あり得なかったことを起こし、これまで交わらなかった様々な人に語りとコミュニケーションの機会を与えてきた。私自身、抗議活動がなければ異なる意見を持つこれだけ多くの人と香港の未来について語ることはなかっただろう。そしてその新しい交流の機会によってお互いへの理解が深まれば関係性やアイデンティティーも再編成されていく。一方で先述の通り、香港の抗議活動にはコミュニケーションを奪っている側面もある。
二面性を持つ香港の抗議活動。こうした社会運動は、人間関係を流動化させる。これまであった人間関係が分断される一方で、これまでになかった関係性が築かれ、時にこれまで対立していたものが融和していく。こうして人々は自他の立ち位置を見直し、時にその立ち位置を大きく動かしていく。それらを象徴しているのが「黄」や「青」、そして「香港人」といったラベルなのだろう。
分断による排除と融和による包摂が繰り返される中、区議会議員選挙後の香港はどんな未来を描いていくのだろうか。
コメント8件
z
>>議席数ほどの圧倒的な差があったわけではない。
香港には大量の大陸人が送り込まれて、従来の香港人を圧倒する数になりつつあるという説明をどこかで見た記憶があります。この説明自体が正しくない可能性もありますし、正しかったとしても「送り込まれた
大陸人」に選挙権があるのかはよくわかりません。...続きを読むこれだけ小さな地域ですと、意図的に人を送り込めばあっという間に「ホニャララ派」を多数派にできてしまう、というのは忘れてはいけないと思うのです。
GK2
一般
バックに中国を擁する青組がじわじわと押していくのでしょうが、対する黄組は香港の一角を占拠して立てこもり建物を要塞化、その中で一つの完結した都市や自治体が形成されると共に、青組の中の同情的・融和的な人々と細々と交流や物流を保ちながら安定化。後
にその地域は「新九龍城砦」と呼ばれるように……
...続きを読む※とんでもない誤りがありましたので、訂正再投稿です……
昔の日経が好きさん、ご指摘ありがとうございました(汗
春秋
民主化デモと中国共産党の支配への反発をしている香港の人たちはこれまで新疆ウイグルやチベットの人たちに心を寄せたことがあるのだろうか。
ヨンクス
『分断による排除と融和による包摂』とありますが、記事を読む限り、「分断による排除と包摂」としか思えない。分断が進んで青=黄の色分けが広範囲に広がっているという記事ですよね。
ワタリガラス
カウンセラー
小選挙区制にありがちな死票の問題はありますね。投票数以上の大きな議席差が生じることはよくあることだと思います。
この選挙を契機として、香港の抗議活動の行方が気になります。また、中国共産党の出方がどうなるのかも。
また、香港のエスニックマイノ
リティーの問題は、漢民族主体の中国本土との関係を複雑にするのではないでしょうか。
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