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(喜美子)これ 今度 直してもええですか?気になる~。(信作)分かる~。
(八郎)すみません。すんません。
絵付係にいますんで 来て下さい 是非。
丸熊陶業に新しい社員さんがやって来ました。
回想 鳥が飛んでます。山があって 水辺があって…こっちの方から日の光が…。鳥は 2羽飛んでました。
回想 大事に飾ってあった先生の絵を売って白いお米と 卵3個に換えてうちのもん みんなで食べました。
♪~
想像して描いた絵です。
八郎に渡すつもりはありません。
渡すつもりは…。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
(八重子)はい どうぞ。ありがとうございます。
丸熊陶業では新しい若い人たちが来たのを機に簡単な朝ごはんも出すようになりました。
(深野)おはようさん。(八重子)あ~ おはようさんです。
ええ? 朝ごはんですか 珍しい。
いや~ お茶だけでええわ。ゆうべ 社長さんと飲んでな…。
アッハハッ あらあら…まあ 座っとって下さい。
持ってきます。すまんな 頼むわ。はいはい。
おはようございます。ああ…。
なに 立ってんの?あ…。
座って座って。はい。
えっと…。十代田です 八郎です。
うん 八郎さんな。君が ここで朝ごはん食べてる思てな会いに来たんや。えっ?
これ 渡そ思てな。
君が言うてた おじいさんの絵ぇ…そんな感じやなかったかいなあ?
違うた?
はい どうぞ。 いやあ! これ フカ先生がお描きにならはったん? さすがやわ。
まあ ささっと描いてみた。
気に入ってくれたらちゃんとした画材で描き直すわ。
とんでもない!とんでもないです…。
こんなん描いて頂いて…。えっ? 頂いてもよろしいんですか?
おお… ええよぉ。ええ!
ありがとうございます!もう… 肌身離さず! 大事に大事に!
肌身離さず持たんでええよ。飾っといてくれたら…。
はい! 大事に大事に 持ち帰って飾らせて頂きます。
(深野)ありがたいな。(八重子)ええ よかったな! アッハハ…。
(八郎)失礼します。はい。
おはようございます。おはようございます。 えっ!?
ここでいいですか?はい。 えっ 何で?
ああ 食堂におったんで。 ついでです。失礼します。
あ…。 あ… あの…。
(池ノ内)おはようさん。(磯貝)おはようさん。
(喜美子 八郎)おはようございます。今日も暑なりそうですね。
あ…。元気ええなあ。あ… あの ちょっとええですか?
掃除終わりましたんで。ああ ええよ。
すいません すぐ戻ります。うん。
あっ!ああ。 鍵が…鍵が…。鍵…? 預かってるんですか?
僕が一番下なんで…。
あ…。えっ?ないんや…。
まだ ここ 鍵なかったです。
(笑い声)
ほやけど鍵は掛けといた方がええんちゃいます?
まだ 大したもんないですからねえ。あっ 見ます?
ええんですか? 商品開発室…。はい。
(戸が開く音)
どうぞ。
ほんまやわ。
ここで 何してはるんですか?
名前のとおり 新しい陶器の開発です。
今は 津山さんが主導していろいろと考えてるとこです。
新しい陶器…。はい。
僕の担当は その試作品を作ることです。まだ その準備中いうとこです。
ふ~ん。
あっ 何か?ああ…。
あっ あの お礼を! 言いそびれたんで。
やかん持ってきて頂いてすみませんでした。
わざわざ そんな…。ありがとうございました。
ついでや ついで。ほやけど もうしんといて下さい。
えっ?うちの仕事です。
ついでや言われたらつい甘えてしまいます。
また 明日も持ってきてくれへんやろかほな あさっても…。
どんどん甘えが入ってきます。
仕事いうのは 甘えが入ってはあきません。
うちは まだ 下っ端なんで。自分の仕事は 自分で。
すみません ご厚意でして下さったのに。いえ そのとおりやと思います。
余計なことしてしまいました。いえ すみません。
いや… すいません。
あっ ほやけど十代田さんも一番下なんやったらここのお茶の用意せなあかんのちゃいます?
あっ! ほんまや!
今日は うちが。いや。 自分の仕事は 自分で。 フフフ。
あの もう一つ… ええですか?
はい。
あ… その…。
あっ これ? 助かってます。
そやのうて あの… 深野先生の絵の話…。ああ。
描いてみました。
十代田さんが言うてた絵です。見て下さい これ。
あ… くしゃくしゃやん。
これ 山があって 水辺があって鳥が飛んでて ほんで 光がさし込んでる。
鳥は 2羽や言うてましたよね?仲よう並んで 飛んでるところをこんな感じかなあて想像して描いてみました。
どうです?
うれしいです。
あの…。何か うち よう考えたら差し出がましいこと…。
ほんまに うれしいです。
もろてもいいんですか?
もろてくれるん?もちろん。
こんなんでよかったら…。
ほな 遠慮のう。
ありがとうございます。
はあ… 絵ぇ上手なんですね。はい!
「はい!」って…。(笑い声)
好きなんです 描くの。
分かります。
ほやけど… こんなふうに描いたん初めてかもしれへん…。
十代田さんの話を聞いて描かずにはいられませんでした。
大事にします。 ありがとう。
もろてくれて うちもうれしいです。ありがとう。
あの…マスコットガール ミッコーとか…何やいろいろ突っかかるような言い方してほんまに すいませんでした。ほんまやで…。
すいません。ハハハ… ほな うち 戻りますね。
はい。 あっ 僕も やかん!
食堂行きます。
(加山)川原さん!おう…!
ちょうどええわ。川原さん 絵付係に言うてきて下さい。
今日は 休みにさしてもらいます。えっ?
緊急事態や。 社長が倒れました病院に運ばれはったんです。
(西牟田)加山さん!
亡くなられたそうです。
社長さんが!社長さんが亡くならはりました。
(大野)えっ 亡くなった!?
(陽子)誰?葬儀は?
えっ? ほやけど 丸熊陶業やで?(信作)ただいま。
丸熊陶業の社長の突然の死に皆 大騒ぎとなりましたが…。
(常治)身内だけで見送りたい?何や 社葬ちゃうんか?
本人の希望やそうです。本人て もう亡くなっとるがな これ…。
何や 先代の時に言うてたらしいです。
自分の時は 静かに見送れ金はかけるな 無駄や言うて。
(マツ)そんなこと言うてはったん…。いや… ほな みんな どないすんのん。
尊重しよう言うてますけど…。
まあ そうは言うても全く何もせんわけにいかんやろう言うてみんな あかまつ集まってます。おやじも向かいました。
おう。 行ってくるわ ちょっと…。
あっ なんぼ包むとか言うてへんかったか?
そういうことも含めて相談しよう言うてました。
よっしゃ。うちも行く。
何でや?丸熊陶業で働いてるし 照子かて心配やん。
あっ 照子は 心配せんといて言うて…。あのな 子どもは引っ込んどけ。
子どもて…。俺も 電話番しとけ言われた。
信作は まだええねんてうちのは お前 マスコットガールや。
何で知ってんの!?お母ちゃん! 新聞見せたん!?
(常治)どうでもええねん。あっ ほな 行ってくるわ。
気ぃ付けてな? あんまり飲まんように。
あのなあこんな時 飲まんでおられるか もう。
こんな時 飲んだら 底なしなるやん。マスコットガールは黙っとけ もう!
心配なんよ! ひと事やないやんか。
(百合子)そうや。丸熊陶業の社長さんいうたらお父ちゃんと 年 一緒くらいやひと事やないよ。 飲まんといて?
大丈夫や もう。
伊賀のばあちゃんも5分前まで大丈夫やった!
いきなり倒れて そのままです。俺が見つけました。
出かけようとしてたんやろな…ちょうど こんな辺で… 倒れてました…。
人ってこんな簡単に亡くなるんや思いました。
気ぃ付けてな?気ぃ付けてな?
気ぃ付けてな?気ぃ付けてな?
♪~
照子に会えたのはそれから しばらくしてのことです。
(戸が開く音)
丸熊陶業の社長が亡くなったことは喜美子にも大きな変化をもたらすのでした。