(中央社台北)台湾などでスパイ活動に関わったとし、オーストラリアに亡命を求めた中国人男性が、元勤務先の中国系香港企業の幹部から指示を受けたと証言した件について、台湾台北地方検察署(地検)は30日までに、法務部(法務省)と外交部(外務省)を通じ、オーストラリア側に司法共助を要請すると明らかにした。
「王立強」と名乗るこの男性は23日までに、オーストラリアで地元メディアのインタビュー番組に出演。元勤務先の「中国創新投資」は中国人民解放軍の息がかかった会社で、台湾でも一部メディアに資金を提供していたなどと語った。自身のスパイ活動としては、昨年11月に実施された統一地方選に介入したなどと明かした。
これを受けて捜査に乗り出した台湾の調査局は、男性が名指しした幹部夫婦が訪台中で、24日に台湾を離れる予定だと知り、同日、桃園国際空港に出向いた2人に捜査協力を要請。2人は25日、スパイ活動を禁じる「国家安全法」違反の疑いで台北地検に送検され、事情聴取の後に釈放されたが、台湾からの出境は禁じられている。
地検は、オーストラリアへの要請事項について、男性が同国の情報機関に供述した内容の提供、あるいはビデオ通話による本人への事情聴取に同意するよう求めるとしている。
台湾とオーストラリアは刑事司法共助協定を締結していない。法務部によれば、台湾では昨年5月に国際協力を促す「国際刑事司法互助法」が施行されており、捜査当局は同法にのっとって他国に個別案件の協力を求めることができるという。
(林長順/編集:塚越西穂)