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 地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が来年動きだすのを前に、脱炭素の機運を高める舞台にしなければならない。あすから始まる25回目の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)である。

 議長国チリが反政府デモで開催を断念し、スペインが代替地に手をあげた。協定の円滑な運用に向け、ルールにほころびがないよう話し合ってほしい。

 パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度までに抑えることをめざしている。だが、いまの時点で1度も上昇しており、各国が温室効果ガス削減の国別目標を達成できても今世紀末の気温上昇は3度に達する。

 すでに、異常気象自然災害など気候変動の影響が目に見えるようになってきた。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「気温上昇が2度未満でも深刻な被害がある」と警鐘を鳴らしたため、「1・5度未満をめざすべきだ」という声が強まっている。

 そのためには各国が取り組みを強め、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにしないといけない。9月の国連気候行動サミットでは、削減目標の引き上げを表明する国が相次いだ。その多くは小さな島国や途上国だが、国際社会の機運が高まる兆しともいえる。

 「1・5度未満」へのうねりを大きくできるかどうかは、排出量の多い国々の行動にかかっている。しかし、世界最大の排出国である中国や3位のインドの動きは鈍く、2位の米国にいたっては先日、トランプ政権が来年11月の協定離脱に向けて手続きを始めてしまった。

 これらの大国は、自分たちを含む主要20カ国・地域(G20)が全世界の排出量の約8割を占めている事実から、目を背けてはならない。率先して取り組みを強める責務があるはずだ。

 5位の日本も責任は重い。

 脱炭素をめざす自治体や企業は増えているが、「今世紀後半のできるだけ早期に排出を実質ゼロにする」という政府の目標は踏み込みが足りない。小泉環境相がCOP25でいかに言葉を尽くそうと、本当に危機感を共有しているのか疑われよう。

 いま野心的な数字を示せないなら、近い将来、必ず目標を引き上げるという意思だけでも明らかにするべきだ。

 とりわけ重要なのは石炭火力との決別である。脱石炭をめざす国が増えているいま、主要7カ国(G7)で日本だけが石炭火力の新設を続けている。石炭に依存しながら排出ゼロへの決意を示しても、むなしく響く。本気で脱炭素をめざすには、脱石炭にかじを切るしかない。

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